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アリルの出産2
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「まだですわ」
「そうか、間に合ったか。ソアリス様、ようこそいらっしゃいました」
「お邪魔しております」
邸にいるソアリスは馴染み過ぎており、陣痛が始まって、ソアリスが来るだろうと、作られていたレモンのマドレーヌを食べていた。
「今日はケイト殿下は、陛下のところですか?」
「ええ、おやつはまだか、夕飯はまだか、足りない、もっと食べられる、ちょっと分けてくれてもいいと、言われているはずよ」
「全部、食べること…」
「喋り出してから、毎日、毎日…」
そう言いながらも、レモンのマドレーヌはソアリスに吸い込まれている。
「こちらに連れてきたら、絶対、何かあげたくなるでしょう?」
ケイトがいくらソアリスの口調であっても、愛らしい姿で、お腹が減った、何か食べたい言えば抗える自信が誰もなかった。
デレデレした顔で、何か用意しようと言ってしまうだろう。
「それで私が悪者になるの。酷いでしょう?きっと、今頃、陛下が私には内緒だと何があげているわ…それで食べていないと言い張るの。孫じゃねぇんだぞ?娘なら怒りなさいよ!まったくもう」
話を聞きながらも、どんどんレモンのマドレーヌは減っている。
「そう言うソアリスも食べ過ぎじゃない?」
友人であるリズしか、ここで言えない言葉だろう。
「まあ!私、食べてた?消えたんじゃなくて?」
「そっくりじゃない!」
「ううう…」
「間違いなく、あなたの娘よ!後はお土産にしてあげるから、持って帰りなさい」
「…はい」
そんな話をしていると、ルーファが飛び込んで来た。
「生まれました!元気な男の子です!」
「そうか!」
「まあまあ」
「甥っ子だわ」
「おめでとうございます。ルーファ父様、ミオトじいさま、リズばあさま、リファラ叔母様」
「ソアリスばあさまも」
ソアリスはその様子に、本当にアリルは幸せ者だと実感した。
「ありがとうございます!おそらく、父上に似てます…」
「おっ、そうか」
ミオトは照れており、リズとリファラはソアリスの念が伝わったのではないかと思い、ソアリスをじっと見つめたが、ソアリスは嬉々とした表情をしている。
「やった!やった!よくやったわ!この世の宝っ!」
ソアリスはクルクルっと回って、両手を広げた。その様子に驚いたのはミオトだけで、恐縮しながらも、さらに照れている。
アリルと赤子の元に通されて、皆がねぎらいの言葉を掛ける中、ソアリスだけはわが娘、よくやったわと両手をぶんぶん振って、満足そうに帰っていった。
アリルとルーファと息子は、オルファーと名付けられ、祖母・ソアリスにいい顔をしているわと、異常に褒められることになる。
王宮に戻ったソアリスは、アンセムに報告に向かった。
「男の子が生まれましたわ」
「もう生まれたのか?」
ソアリスは公務を終えてから向かっているので、既に半日は経っていたが、ソアリスが行ってから2時間で生まれている。
「もうって、半日以上は経っています」
「そうだな…男の子か」
「はい!バーセム公爵に似ておりますのよ!確実に将来有望!小躍りしそうになりましたわ」
クルクル回ったのだから、付き添っていた護衛は、小躍りしたと言っていいのではないだろうかと思っていた。
「そうか、立派な子になるんじゃないか」
「ええ!後は体格も似れば、最強ですわ」
「あっ、ああ…」
アンセムもバーセム公爵は立派な方で、ソアリスが評価していることは知っているので、否定する気はない。
「私たちもますます立派な祖父母を目指し、ケイトにも食べ物ではなく、さらに立派な叔母貴になって貰わないと」
「1歳だぞ…」
これでソアリスとアンセムも3人の孫の祖父母となり、ケイトは1歳にして、3人の甥と姪持ちとなっている。
「どうせ、お母様には内緒だぞって、おやつをあげたのでしょう?」
「あっ、それはだな…」
ケイトは夕食を前にした時間にも関わらず、ソファで気持ち良さそうに眠っているのが、何か食べた証拠である。
「そうか、間に合ったか。ソアリス様、ようこそいらっしゃいました」
「お邪魔しております」
邸にいるソアリスは馴染み過ぎており、陣痛が始まって、ソアリスが来るだろうと、作られていたレモンのマドレーヌを食べていた。
「今日はケイト殿下は、陛下のところですか?」
「ええ、おやつはまだか、夕飯はまだか、足りない、もっと食べられる、ちょっと分けてくれてもいいと、言われているはずよ」
「全部、食べること…」
「喋り出してから、毎日、毎日…」
そう言いながらも、レモンのマドレーヌはソアリスに吸い込まれている。
「こちらに連れてきたら、絶対、何かあげたくなるでしょう?」
ケイトがいくらソアリスの口調であっても、愛らしい姿で、お腹が減った、何か食べたい言えば抗える自信が誰もなかった。
デレデレした顔で、何か用意しようと言ってしまうだろう。
「それで私が悪者になるの。酷いでしょう?きっと、今頃、陛下が私には内緒だと何があげているわ…それで食べていないと言い張るの。孫じゃねぇんだぞ?娘なら怒りなさいよ!まったくもう」
話を聞きながらも、どんどんレモンのマドレーヌは減っている。
「そう言うソアリスも食べ過ぎじゃない?」
友人であるリズしか、ここで言えない言葉だろう。
「まあ!私、食べてた?消えたんじゃなくて?」
「そっくりじゃない!」
「ううう…」
「間違いなく、あなたの娘よ!後はお土産にしてあげるから、持って帰りなさい」
「…はい」
そんな話をしていると、ルーファが飛び込んで来た。
「生まれました!元気な男の子です!」
「そうか!」
「まあまあ」
「甥っ子だわ」
「おめでとうございます。ルーファ父様、ミオトじいさま、リズばあさま、リファラ叔母様」
「ソアリスばあさまも」
ソアリスはその様子に、本当にアリルは幸せ者だと実感した。
「ありがとうございます!おそらく、父上に似てます…」
「おっ、そうか」
ミオトは照れており、リズとリファラはソアリスの念が伝わったのではないかと思い、ソアリスをじっと見つめたが、ソアリスは嬉々とした表情をしている。
「やった!やった!よくやったわ!この世の宝っ!」
ソアリスはクルクルっと回って、両手を広げた。その様子に驚いたのはミオトだけで、恐縮しながらも、さらに照れている。
アリルと赤子の元に通されて、皆がねぎらいの言葉を掛ける中、ソアリスだけはわが娘、よくやったわと両手をぶんぶん振って、満足そうに帰っていった。
アリルとルーファと息子は、オルファーと名付けられ、祖母・ソアリスにいい顔をしているわと、異常に褒められることになる。
王宮に戻ったソアリスは、アンセムに報告に向かった。
「男の子が生まれましたわ」
「もう生まれたのか?」
ソアリスは公務を終えてから向かっているので、既に半日は経っていたが、ソアリスが行ってから2時間で生まれている。
「もうって、半日以上は経っています」
「そうだな…男の子か」
「はい!バーセム公爵に似ておりますのよ!確実に将来有望!小躍りしそうになりましたわ」
クルクル回ったのだから、付き添っていた護衛は、小躍りしたと言っていいのではないだろうかと思っていた。
「そうか、立派な子になるんじゃないか」
「ええ!後は体格も似れば、最強ですわ」
「あっ、ああ…」
アンセムもバーセム公爵は立派な方で、ソアリスが評価していることは知っているので、否定する気はない。
「私たちもますます立派な祖父母を目指し、ケイトにも食べ物ではなく、さらに立派な叔母貴になって貰わないと」
「1歳だぞ…」
これでソアリスとアンセムも3人の孫の祖父母となり、ケイトは1歳にして、3人の甥と姪持ちとなっている。
「どうせ、お母様には内緒だぞって、おやつをあげたのでしょう?」
「あっ、それはだな…」
ケイトは夕食を前にした時間にも関わらず、ソファで気持ち良さそうに眠っているのが、何か食べた証拠である。
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