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対処3
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ナレシムトは商会を経営しており、ミリンティーから伝手は期待できなくとも、表には出ずに、仕事を手伝ってもらう分にはクロンデール王国の侯爵令嬢というのは、息子に爵位を譲る際に悪くないと思った。
息子も16歳で、本来ならミリンティーと年が近いのだが、問題があっても、利用が出来るなら良いのではないかと、理解を示している。
そして、第三王子殿下との話も、互いに知っている状況である。
「ナレシムト・オルツアでございます」
「ミリンティー・オイエンでございます」
選べる立場にないはずのミリンティーが、明らかに落胆したことにナレシムトは気付いた。
見た目で好意を抱かれるとは思っていなかったが、クロンデール王国の侯爵令嬢ともあろう者が、察されてしまうのは問題だろう。
言動に問題があったと聞いていたが、ミリンティーの方も見た目にも問題があると感じた。ガリガリに痩せた令嬢が好まれないのと同時に、あまりに太った令嬢も、イルヤ王国でも好まれない。
貴族夫人ともなれば、人柄でカバー出来ればいいが、どうにもならない顔の造りの話ではなく、それ以外の見た目も大事になる。
せめて感じの良い令嬢であればいいとは思っていたが、あまり期待出来そうにはない。どうしても結びたい縁談ではないので、ナレシムトの方も熱心にアピールする気もなかった。
ミリンティーも積極的に話すこともなく、ほとんどがブレオンとの会話になってしまい、顔合わせは終わった。ローティーは邪魔してはならないと、相槌を打つだけで話すこともなかった。
オルツア伯爵家を後にして、ホテルに戻ったミリンティーは両親に打ち明けた。他国で知り合いもいない中で、やっていけないと判断した。
「望んでいただいたのに、大変失礼ですが、あの方と結婚することが、想像が出来ません。ですから、お断りしてもらえませんか」
「望まれたわけではない」
「え?」
「当たり前だろう。こちらが縁談を持ち掛けて、受けてもいいと言ったのが、お二人だけだったのだ」
「そんな…」
「では、妃になるのか?」
望まれた縁談だと勝手に思い込んで、ショックを受けているミリンティーは言葉が出なかった。
「では修道院でいいな?」
「そ、それは…」
「どうするんだ?」
覚悟をして来たのではないのか、現実を見て、尻込みしたということか。
「明日、お時間が合えば、王子殿下に会ってもらえることになっている。それで、妃にならないのならば、戻って修道院だ。これは変わらない。もう休みなさい」
「…はい」
ミリンティーは渋々寝室に行き、望まれたものではないとしても、自分が断ったと思っているが、帰り掛けにブレオンだけにナレシムトは、話はおそらく、なかったことにした方がいいでしょうと話をされて、ブレオンも既に了承していた。
だが、翌日、カイサー第三王子に会うことが出来た。すると、ミリンティーは体を震わせて、見目に釘付けになった。
カイサーの母親は、王女のいない王家に、王女の誕生を望まれて、側妃となった大変美しい子爵令嬢であった。その顔をカイサーは引き継いでおり、令嬢にも負けない美しい顔をしていた。
その顔に令嬢たちは惹かれはするが、性格は誰よりも現実的な考えを持ち、効率が良いことを好む。しかも正妃や側妃は娶らないと発表している。
ただ効率重視なのに、問題のある令嬢の受け入れをしているのは、回りまわって小国でも、何か生まれるかもしれないと期待しているからである。
「私は兄上たちを支える立場だ。効率を重視し、妃と言っても、愛し合うような関係ではない」
「皆様ですか?」
「ああ、そうだ。自分だけが特別だと、寵愛を欲しがるような者は、出て行ってもらう。それでどうする?私はどちらでもいい」
息子も16歳で、本来ならミリンティーと年が近いのだが、問題があっても、利用が出来るなら良いのではないかと、理解を示している。
そして、第三王子殿下との話も、互いに知っている状況である。
「ナレシムト・オルツアでございます」
「ミリンティー・オイエンでございます」
選べる立場にないはずのミリンティーが、明らかに落胆したことにナレシムトは気付いた。
見た目で好意を抱かれるとは思っていなかったが、クロンデール王国の侯爵令嬢ともあろう者が、察されてしまうのは問題だろう。
言動に問題があったと聞いていたが、ミリンティーの方も見た目にも問題があると感じた。ガリガリに痩せた令嬢が好まれないのと同時に、あまりに太った令嬢も、イルヤ王国でも好まれない。
貴族夫人ともなれば、人柄でカバー出来ればいいが、どうにもならない顔の造りの話ではなく、それ以外の見た目も大事になる。
せめて感じの良い令嬢であればいいとは思っていたが、あまり期待出来そうにはない。どうしても結びたい縁談ではないので、ナレシムトの方も熱心にアピールする気もなかった。
ミリンティーも積極的に話すこともなく、ほとんどがブレオンとの会話になってしまい、顔合わせは終わった。ローティーは邪魔してはならないと、相槌を打つだけで話すこともなかった。
オルツア伯爵家を後にして、ホテルに戻ったミリンティーは両親に打ち明けた。他国で知り合いもいない中で、やっていけないと判断した。
「望んでいただいたのに、大変失礼ですが、あの方と結婚することが、想像が出来ません。ですから、お断りしてもらえませんか」
「望まれたわけではない」
「え?」
「当たり前だろう。こちらが縁談を持ち掛けて、受けてもいいと言ったのが、お二人だけだったのだ」
「そんな…」
「では、妃になるのか?」
望まれた縁談だと勝手に思い込んで、ショックを受けているミリンティーは言葉が出なかった。
「では修道院でいいな?」
「そ、それは…」
「どうするんだ?」
覚悟をして来たのではないのか、現実を見て、尻込みしたということか。
「明日、お時間が合えば、王子殿下に会ってもらえることになっている。それで、妃にならないのならば、戻って修道院だ。これは変わらない。もう休みなさい」
「…はい」
ミリンティーは渋々寝室に行き、望まれたものではないとしても、自分が断ったと思っているが、帰り掛けにブレオンだけにナレシムトは、話はおそらく、なかったことにした方がいいでしょうと話をされて、ブレオンも既に了承していた。
だが、翌日、カイサー第三王子に会うことが出来た。すると、ミリンティーは体を震わせて、見目に釘付けになった。
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その顔に令嬢たちは惹かれはするが、性格は誰よりも現実的な考えを持ち、効率が良いことを好む。しかも正妃や側妃は娶らないと発表している。
ただ効率重視なのに、問題のある令嬢の受け入れをしているのは、回りまわって小国でも、何か生まれるかもしれないと期待しているからである。
「私は兄上たちを支える立場だ。効率を重視し、妃と言っても、愛し合うような関係ではない」
「皆様ですか?」
「ああ、そうだ。自分だけが特別だと、寵愛を欲しがるような者は、出て行ってもらう。それでどうする?私はどちらでもいい」
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