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けーき2
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まだフォークは使えないので、ケイトはカイルスに切って貰って、一口ずつ食べさせてもらうことになった。
幼子用のケーキをもぐもぐと頬張り、満面の笑みを披露した。
「おいし!」
「それは良かったね、歌まで作ったんだものね」
「もっと!」
「ゆっくり食べないと、すぐになくなってしまうよ?」
「ちょんな~」
その言葉にきょうだいたちはカイルスの幼い頃を思い出し、微笑ましい気持ちになった。言っていたのはソアリスへであったが、ケイトは食べ物へである。
ミオスは頑張ってフォークを使って食べており、エマリーはエクシアーヌに食べさせてもらっている。
「名前、既に覚えていたなんて思わなかった」
「多分、お母様の影響だと思いますわ」
「どういうことだい?」
ミオスも覚えている者も多くなってきたが、ケイトは完璧で、ユリウスはソアリスとおかげだと言ったミフルに尋ねた。
「赤ちゃんだろうが、お母様はきちんと紹介をするでしょう?この方はって、名前を言うの。分かっていないとしてもね、それで覚えていったのだと思うわ」
「ああ…確かに母上はそうだったな」
子どもたち皆に、同じように接しているソアリスは、自分の時は覚えていなくても、下の子への様子で見た光景であった。
「ああ~もうちょっとちかないよ?」
「そうだな、ケイトが食べてしまったからね。お腹に入ったでしょう?」
「はいってない」
スンとした顔で、お腹に手を当てている。
「もう!入っているよ?」
「ううん、はいってない」
ケーキがあと僅かになって、ケイトとカイルスが揉めている。
その姿に山盛りだったはずの揚げ芋が、私、こんなに食べたかしら?消えたんじゃない?と言っているソアリスの顔が浮かんだ。
その後、ソアリスは今でも縄跳び、素振り、走り込みを行っている。
「食べると、ケイトの栄養になるんだよ」
「けいと、もっとたべれるのよ?」
「食べ過ぎると、夕食が減らされてしまうよ?」
「ちょんな~」
「大事に食べようね、ちょっとジュースを飲もうか」
「うん!」
カイルスはジュースを飲ませながら、チラッとミオスとエマリーを見ると、まだ半分以上残っており、食べ終えると強請りに行くのではないかと、危惧して、時間を稼ごうとしていた。
「ケイトはお喋りが上手だね」
「ん?」
「言葉、分かる?話していること、上手だね」
「おかあしゃま」
「お母様?」
カイルスはどうして、ソアリスが出て来たのかと思った。
「おかあしゃま、いっちょ。じゅっと、こえきこえてた、じゅっと」
「生まれる前からってこと?」
「うん!」
「ケイト、お母様の声がお腹にいる頃から聞こえていたのか?」
アンセムはさすがに驚いて、ケイトに問い掛けた。
「おなか?けいとのおなかは、けーき、はいってない」
まだ頑なに食べていないと、言い張っている。
「うーん、そうではなくて、お母様から生まれる前から声が聞こえていたのか?それを覚えているのか?」
「うん」
胎児に聞こえているとは言われていたが、覚えていることは少ない。
「何と聞こえていたんだい?」
「いも~いも~わたしのあげいも~」
皆が一斉にえ?っと声を上げ、ソアリスがいたら、見つめられていたことだろう。
「それで、歌を…」
「お母様、そんな歌を歌っていたの?知らなかったわ」
「もしかしたら、一人の時に歌っていたんじゃないか…?」
もしかしたら、知られてはならない秘密だったのではないかと考え、気まずい空気が流れた。
「聞かなかったことにしよう」
「それが良いですね、何で知っているのよ!って、怒られるのはきっと我々です」
「ああ、皆、今の歌は聞かなかったことに」
皆、アンセムの言葉に力強く頷いた。
そんな話をしている間にケイトは食べ終えて、ミオスとエマリーの間に入り込んで、首を左右に動かして、アンセムとカイルスに駄目だよと注意されていた。
幼子用のケーキをもぐもぐと頬張り、満面の笑みを披露した。
「おいし!」
「それは良かったね、歌まで作ったんだものね」
「もっと!」
「ゆっくり食べないと、すぐになくなってしまうよ?」
「ちょんな~」
その言葉にきょうだいたちはカイルスの幼い頃を思い出し、微笑ましい気持ちになった。言っていたのはソアリスへであったが、ケイトは食べ物へである。
ミオスは頑張ってフォークを使って食べており、エマリーはエクシアーヌに食べさせてもらっている。
「名前、既に覚えていたなんて思わなかった」
「多分、お母様の影響だと思いますわ」
「どういうことだい?」
ミオスも覚えている者も多くなってきたが、ケイトは完璧で、ユリウスはソアリスとおかげだと言ったミフルに尋ねた。
「赤ちゃんだろうが、お母様はきちんと紹介をするでしょう?この方はって、名前を言うの。分かっていないとしてもね、それで覚えていったのだと思うわ」
「ああ…確かに母上はそうだったな」
子どもたち皆に、同じように接しているソアリスは、自分の時は覚えていなくても、下の子への様子で見た光景であった。
「ああ~もうちょっとちかないよ?」
「そうだな、ケイトが食べてしまったからね。お腹に入ったでしょう?」
「はいってない」
スンとした顔で、お腹に手を当てている。
「もう!入っているよ?」
「ううん、はいってない」
ケーキがあと僅かになって、ケイトとカイルスが揉めている。
その姿に山盛りだったはずの揚げ芋が、私、こんなに食べたかしら?消えたんじゃない?と言っているソアリスの顔が浮かんだ。
その後、ソアリスは今でも縄跳び、素振り、走り込みを行っている。
「食べると、ケイトの栄養になるんだよ」
「けいと、もっとたべれるのよ?」
「食べ過ぎると、夕食が減らされてしまうよ?」
「ちょんな~」
「大事に食べようね、ちょっとジュースを飲もうか」
「うん!」
カイルスはジュースを飲ませながら、チラッとミオスとエマリーを見ると、まだ半分以上残っており、食べ終えると強請りに行くのではないかと、危惧して、時間を稼ごうとしていた。
「ケイトはお喋りが上手だね」
「ん?」
「言葉、分かる?話していること、上手だね」
「おかあしゃま」
「お母様?」
カイルスはどうして、ソアリスが出て来たのかと思った。
「おかあしゃま、いっちょ。じゅっと、こえきこえてた、じゅっと」
「生まれる前からってこと?」
「うん!」
「ケイト、お母様の声がお腹にいる頃から聞こえていたのか?」
アンセムはさすがに驚いて、ケイトに問い掛けた。
「おなか?けいとのおなかは、けーき、はいってない」
まだ頑なに食べていないと、言い張っている。
「うーん、そうではなくて、お母様から生まれる前から声が聞こえていたのか?それを覚えているのか?」
「うん」
胎児に聞こえているとは言われていたが、覚えていることは少ない。
「何と聞こえていたんだい?」
「いも~いも~わたしのあげいも~」
皆が一斉にえ?っと声を上げ、ソアリスがいたら、見つめられていたことだろう。
「それで、歌を…」
「お母様、そんな歌を歌っていたの?知らなかったわ」
「もしかしたら、一人の時に歌っていたんじゃないか…?」
もしかしたら、知られてはならない秘密だったのではないかと考え、気まずい空気が流れた。
「聞かなかったことにしよう」
「それが良いですね、何で知っているのよ!って、怒られるのはきっと我々です」
「ああ、皆、今の歌は聞かなかったことに」
皆、アンセムの言葉に力強く頷いた。
そんな話をしている間にケイトは食べ終えて、ミオスとエマリーの間に入り込んで、首を左右に動かして、アンセムとカイルスに駄目だよと注意されていた。
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