199 / 348
お忍び
しおりを挟む
エクルが嫁ぐまでに、喋り始めるかと思っていたケイトだったが、一歳になっても、まだ言葉と言えるものは喋っていない。
ミオトは『おかあ』『おとう』と言い始め、今では『おとうちゃま』『おかあちゃま』と、話せる言葉も日に日に増えている。エマリーも「かあ」「とお」と、赤ちゃんらしく、喋り始めていた。
両親たちはただただ、成長に感動していた。
ケイトは普通なら言葉が遅いのねというところだが、ソアリスと同じなら言葉を溜め込んでいると聞いていたので、そうではないと皆も思っていた。
お忍びで、グレイ殿下がミフルに会いに来た。
ソアリスもララシャがきっかけとなっているので、改めて謝罪を行った。
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」
「王妃様が謝ることは、何一つありません」
心からそう思っており、エスザール王国ではソアリスは生まれた場所を誤ったのだと認識されており、誰もソアリスに蟠りを感じてはいない。
「不愉快な思いをさせたことに変わりはありません」
「では、受け取らせていただきます」
「ありがとうございます」
「可愛い末っ子様に、会わせては貰えませんか」
グレイはまだ一度もケイトに会っておらず、ソアリスも謝罪しようと同席したので、ケイトは連れて来ていなかった。
「破天荒な娘でして…」
「はい、いつもミフルの手紙に笑わせて貰っています」
「お母様、大丈夫よ。グレイ様も分かってらっしゃるから」
「えええ…頬や首や、肩や、顎にくれぐれも注意してくださいね。護衛の方も、目に余るようなら、とっ捕まえてくださいませ」
グレイの護衛は目を見開き、返事をしていいものか困惑していた。
ソアリスはケイトを呼びに出て行き、ミフルとグレイは待つことになった。
「まだ言葉は喋らないのだよな?」
「でもこちらが言うことは、おそらく分かっている様子ですから」
「楽しみだなぁ」
そして、現れたソアリスとケイトだったが、肩車なのか?という、定番となっているソアリスの肩に乗り、顎を持っているスタイルで登場した。
ソアリスは止めさせようかとも思ったが、最初に見て置けば、どうなるか想定が出来るだろうと、そのままで突撃することになった。
「ばぁ~」
「ケイト、この方はミフルお姉様の婚約者で、エスザール王国のグレイ・ファルリット王子殿下よ。失礼がないようにね」
「うぃ~」
とんでもないご様子ではあるが、グレイは立ち上がってソアリスの側に?ケイトに向かった。
「ケイト王女殿下、グレイと申します」
「うぉ~」
「ミフルに似ているね、だがソアリス様にも似ている。本当に可愛いなぁ」
グレイが笑顔を向けると、ケイトもにこっと笑った。
「ミフルの言う通りだね、言っていることが分かっているよ」
「そうでしょう?」
「ケイト、降りて、ご挨拶なさい」
ソアリスが絡まっていたケイトを降ろし、ぬいぐるみを渡した。
「あっ、そのぬいぐるみは…」
「持ち方が独特で、申し訳ありません」
ケイトはグレイから貰った犬のぬいぐるみの首を絞めるような形で、抱えていた。
「それでも大事にしているのよね?」
「えい」
「気に入ってくれ良かった。実はそのシリーズの新しい物が出てね。プレゼントに持って来たんだ」
どうかなと渡したのは黒い犬で、今持っているのは茶色であった。ミオスとエマリーにも、別のぬいぐるみを持って来ていた。
「きゃ」
「ありがとうございます」
ケイトは両腕に、犬を首絞めスタイルで抱えており、嬉しそうである。
「喜んでくれて良かった、食べ物がいいかとも思ったのですが、ミフルから止められまして」
「ええ、申し訳ありません」
ケイトはミフルに、一つ貸してあげて、二人で遊んでいる。そこへメイドが何か摘まめるような物をと、運んで来た。
「ぺっ、ぺっ」
ケイトが急に声を上げ、アンセムに言っていた、あの言葉だと思った。
ミオトは『おかあ』『おとう』と言い始め、今では『おとうちゃま』『おかあちゃま』と、話せる言葉も日に日に増えている。エマリーも「かあ」「とお」と、赤ちゃんらしく、喋り始めていた。
両親たちはただただ、成長に感動していた。
ケイトは普通なら言葉が遅いのねというところだが、ソアリスと同じなら言葉を溜め込んでいると聞いていたので、そうではないと皆も思っていた。
お忍びで、グレイ殿下がミフルに会いに来た。
ソアリスもララシャがきっかけとなっているので、改めて謝罪を行った。
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」
「王妃様が謝ることは、何一つありません」
心からそう思っており、エスザール王国ではソアリスは生まれた場所を誤ったのだと認識されており、誰もソアリスに蟠りを感じてはいない。
「不愉快な思いをさせたことに変わりはありません」
「では、受け取らせていただきます」
「ありがとうございます」
「可愛い末っ子様に、会わせては貰えませんか」
グレイはまだ一度もケイトに会っておらず、ソアリスも謝罪しようと同席したので、ケイトは連れて来ていなかった。
「破天荒な娘でして…」
「はい、いつもミフルの手紙に笑わせて貰っています」
「お母様、大丈夫よ。グレイ様も分かってらっしゃるから」
「えええ…頬や首や、肩や、顎にくれぐれも注意してくださいね。護衛の方も、目に余るようなら、とっ捕まえてくださいませ」
グレイの護衛は目を見開き、返事をしていいものか困惑していた。
ソアリスはケイトを呼びに出て行き、ミフルとグレイは待つことになった。
「まだ言葉は喋らないのだよな?」
「でもこちらが言うことは、おそらく分かっている様子ですから」
「楽しみだなぁ」
そして、現れたソアリスとケイトだったが、肩車なのか?という、定番となっているソアリスの肩に乗り、顎を持っているスタイルで登場した。
ソアリスは止めさせようかとも思ったが、最初に見て置けば、どうなるか想定が出来るだろうと、そのままで突撃することになった。
「ばぁ~」
「ケイト、この方はミフルお姉様の婚約者で、エスザール王国のグレイ・ファルリット王子殿下よ。失礼がないようにね」
「うぃ~」
とんでもないご様子ではあるが、グレイは立ち上がってソアリスの側に?ケイトに向かった。
「ケイト王女殿下、グレイと申します」
「うぉ~」
「ミフルに似ているね、だがソアリス様にも似ている。本当に可愛いなぁ」
グレイが笑顔を向けると、ケイトもにこっと笑った。
「ミフルの言う通りだね、言っていることが分かっているよ」
「そうでしょう?」
「ケイト、降りて、ご挨拶なさい」
ソアリスが絡まっていたケイトを降ろし、ぬいぐるみを渡した。
「あっ、そのぬいぐるみは…」
「持ち方が独特で、申し訳ありません」
ケイトはグレイから貰った犬のぬいぐるみの首を絞めるような形で、抱えていた。
「それでも大事にしているのよね?」
「えい」
「気に入ってくれ良かった。実はそのシリーズの新しい物が出てね。プレゼントに持って来たんだ」
どうかなと渡したのは黒い犬で、今持っているのは茶色であった。ミオスとエマリーにも、別のぬいぐるみを持って来ていた。
「きゃ」
「ありがとうございます」
ケイトは両腕に、犬を首絞めスタイルで抱えており、嬉しそうである。
「喜んでくれて良かった、食べ物がいいかとも思ったのですが、ミフルから止められまして」
「ええ、申し訳ありません」
ケイトはミフルに、一つ貸してあげて、二人で遊んでいる。そこへメイドが何か摘まめるような物をと、運んで来た。
「ぺっ、ぺっ」
ケイトが急に声を上げ、アンセムに言っていた、あの言葉だと思った。
3,558
お気に入りに追加
7,625
あなたにおすすめの小説
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
婚約者の断罪
玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。
見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。
しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。
親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
【完結】無能に何か用ですか?
凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」
とある日のパーティーにて……
セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。
隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。
だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。
ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ……
主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる