私のバラ色ではない人生

野村にれ

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吉報4

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 バーセム公爵邸ではアリルとルーファが、今日のことを報告していた。

「ケイト殿下にむにむにしていただきました」
「むにむに?」
「頬をむにむにとしていただいたのです」

 ルーファは思い出しながら、嬉しそうに、にこにこと笑っていた。

「変な声を出しながらね」
「へへ」
「グリグリじゃなかったのね?良かったじゃない」
「お義母様、ご存知でしたか」
「ええ、ソアリスが指令を出して、サイラス様にやったそうよ」
「ロアンスラー公爵に?」

 指令を出して出来ることにも驚きだが、まさか兄とはいえロアンスラー公爵に行っていたなんて、聞いていない。

「そんなこと言ってなかったわ…」
「アリルに怒られるから黙っていたんでしょうね、でもあの兄に結局、復讐をしていなかったから、雪辱を果たしたと言っていたわ」
「それなら、いいのかしら」

 アリルは納得していいのかとは思ったが、行ってしまっているので、仕方ない。

「ケイトは母によって、暴君と呼ばれておりました」
「まあ!何をしたの」
「おやつを強請るそうです」
「よく食べるものね」

 リズもケイトの食欲は良く知っている。

「それがミオスのおやつをですよ?指差して、いいでしょうって顔をするんですって…一応、叔母なのに」
「あらら…それはソアリスに怒られるわね」
「頬を引っ張って怒られておりました。ミオスも慣れているのか、泣きはしないのですけど。母が振り回されていて、面白かったですわ」
「それは私も思ったわ」

 世話される側だったカイルスの成長とは違い、ソアリスが振り回される側というのは、皆、面白いと感じてしまう。

 ルーファは話を聞いていたが、あることを思い出した。

「そうだ!王妃陛下が、父上が祖父で羨ましいとおっしゃってましたよ」
「おお、そうか!それは光栄だな」

 少し照れていて、ルーファによく似ている。

 ミオトじいさまは、無事に生まれた時に呼んでみようと思っているので、まだ言わないことにした。

「本物の高い高いが出来るとおっしゃってました」
「本物って…ソアリスはあなたの評価が高すぎるのよね」
「そうか?」
「そうよ」
「ご迷惑をお掛けしております」

 アリルは関係のない人の話ならいいが、実母である。

「もう20年以上だから慣れっこよ、アリルの母の前に私の友人なんだから」
「学生の頃からですか?」
「そうよ、素敵な方と婚約されたのねって、珍しく言うものだから。そこで初めて、あの子の好みを知ったのよ。でも、辺境のパトラーとセラの夫にも同じことを言っていたけどね」

 辺境伯である二人の夫もおそらく、ガタイのいい筋肉質で、良い身体付きをしているのだろうと想像が出来た。

「逞しい身体が好きですからね。ミコロンの夫であるソルド・マッドリー様もお気に入りです」

 ミコロンも無事、ソルドと結婚をして、マッドリー次期侯爵夫人となった。

「ああ…気に入りそうね」
「コロンちゃんとソルちゃんって、まるで犬の様に呼ぶんですよ…失礼だと思ったのですが、マッドリー様もミコロンと同じ顔をして喜んでいまして…」
「本人が良いならいいわよ」
「そうなんですよね…」

 ミコロンは元々呼ばれていたが、ソアリスが『コロンちゃんだから、ソルド様はソルちゃんね』と言うと、二人で目を合わせて感激していた。

 すっかりソアリスの犬のようになってしまっているが、アリルでは止められない。

 後日、王宮でソアリスに会ったミオトは、『ミオトじいさま』と呼ばれて、あははうふふと、嬉しそうにする二人の様子が見られた。

 ルーファは早く呼んでおくべきだった。

 ミオトはミオトで、まさかソアリスに孫は、どうかあなたに似ていますようにと願われていることを知らない。

 一方、ララシャの友人である、ローティー・オイエン侯爵夫人は、離縁が発表されてから困惑していた。
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