185 / 360
吉報4
しおりを挟む
バーセム公爵邸ではアリルとルーファが、今日のことを報告していた。
「ケイト殿下にむにむにしていただきました」
「むにむに?」
「頬をむにむにとしていただいたのです」
ルーファは思い出しながら、嬉しそうに、にこにこと笑っていた。
「変な声を出しながらね」
「へへ」
「グリグリじゃなかったのね?良かったじゃない」
「お義母様、ご存知でしたか」
「ええ、ソアリスが指令を出して、サイラス様にやったそうよ」
「ロアンスラー公爵に?」
指令を出して出来ることにも驚きだが、まさか兄とはいえロアンスラー公爵に行っていたなんて、聞いていない。
「そんなこと言ってなかったわ…」
「アリルに怒られるから黙っていたんでしょうね、でもあの兄に結局、復讐をしていなかったから、雪辱を果たしたと言っていたわ」
「それなら、いいのかしら」
アリルは納得していいのかとは思ったが、行ってしまっているので、仕方ない。
「ケイトは母によって、暴君と呼ばれておりました」
「まあ!何をしたの」
「おやつを強請るそうです」
「よく食べるものね」
リズもケイトの食欲は良く知っている。
「それがミオスのおやつをですよ?指差して、いいでしょうって顔をするんですって…一応、叔母なのに」
「あらら…それはソアリスに怒られるわね」
「頬を引っ張って怒られておりました。ミオスも慣れているのか、泣きはしないのですけど。母が振り回されていて、面白かったですわ」
「それは私も思ったわ」
世話される側だったカイルスの成長とは違い、ソアリスが振り回される側というのは、皆、面白いと感じてしまう。
ルーファは話を聞いていたが、あることを思い出した。
「そうだ!王妃陛下が、父上が祖父で羨ましいとおっしゃってましたよ」
「おお、そうか!それは光栄だな」
少し照れていて、ルーファによく似ている。
ミオトじいさまは、無事に生まれた時に呼んでみようと思っているので、まだ言わないことにした。
「本物の高い高いが出来るとおっしゃってました」
「本物って…ソアリスはあなたの評価が高すぎるのよね」
「そうか?」
「そうよ」
「ご迷惑をお掛けしております」
アリルは関係のない人の話ならいいが、実母である。
「もう20年以上だから慣れっこよ、アリルの母の前に私の友人なんだから」
「学生の頃からですか?」
「そうよ、素敵な方と婚約されたのねって、珍しく言うものだから。そこで初めて、あの子の好みを知ったのよ。でも、辺境のパトラーとセラの夫にも同じことを言っていたけどね」
辺境伯である二人の夫もおそらく、ガタイのいい筋肉質で、良い身体付きをしているのだろうと想像が出来た。
「逞しい身体が好きですからね。ミコロンの夫であるソルド・マッドリー様もお気に入りです」
ミコロンも無事、ソルドと結婚をして、マッドリー次期侯爵夫人となった。
「ああ…気に入りそうね」
「コロンちゃんとソルちゃんって、まるで犬の様に呼ぶんですよ…失礼だと思ったのですが、マッドリー様もミコロンと同じ顔をして喜んでいまして…」
「本人が良いならいいわよ」
「そうなんですよね…」
ミコロンは元々呼ばれていたが、ソアリスが『コロンちゃんだから、ソルド様はソルちゃんね』と言うと、二人で目を合わせて感激していた。
すっかりソアリスの犬のようになってしまっているが、アリルでは止められない。
後日、王宮でソアリスに会ったミオトは、『ミオトじいさま』と呼ばれて、あははうふふと、嬉しそうにする二人の様子が見られた。
ルーファは早く呼んでおくべきだった。
ミオトはミオトで、まさかソアリスに孫は、どうかあなたに似ていますようにと願われていることを知らない。
一方、ララシャの友人である、ローティー・オイエン侯爵夫人は、離縁が発表されてから困惑していた。
「ケイト殿下にむにむにしていただきました」
「むにむに?」
「頬をむにむにとしていただいたのです」
ルーファは思い出しながら、嬉しそうに、にこにこと笑っていた。
「変な声を出しながらね」
「へへ」
「グリグリじゃなかったのね?良かったじゃない」
「お義母様、ご存知でしたか」
「ええ、ソアリスが指令を出して、サイラス様にやったそうよ」
「ロアンスラー公爵に?」
指令を出して出来ることにも驚きだが、まさか兄とはいえロアンスラー公爵に行っていたなんて、聞いていない。
「そんなこと言ってなかったわ…」
「アリルに怒られるから黙っていたんでしょうね、でもあの兄に結局、復讐をしていなかったから、雪辱を果たしたと言っていたわ」
「それなら、いいのかしら」
アリルは納得していいのかとは思ったが、行ってしまっているので、仕方ない。
「ケイトは母によって、暴君と呼ばれておりました」
「まあ!何をしたの」
「おやつを強請るそうです」
「よく食べるものね」
リズもケイトの食欲は良く知っている。
「それがミオスのおやつをですよ?指差して、いいでしょうって顔をするんですって…一応、叔母なのに」
「あらら…それはソアリスに怒られるわね」
「頬を引っ張って怒られておりました。ミオスも慣れているのか、泣きはしないのですけど。母が振り回されていて、面白かったですわ」
「それは私も思ったわ」
世話される側だったカイルスの成長とは違い、ソアリスが振り回される側というのは、皆、面白いと感じてしまう。
ルーファは話を聞いていたが、あることを思い出した。
「そうだ!王妃陛下が、父上が祖父で羨ましいとおっしゃってましたよ」
「おお、そうか!それは光栄だな」
少し照れていて、ルーファによく似ている。
ミオトじいさまは、無事に生まれた時に呼んでみようと思っているので、まだ言わないことにした。
「本物の高い高いが出来るとおっしゃってました」
「本物って…ソアリスはあなたの評価が高すぎるのよね」
「そうか?」
「そうよ」
「ご迷惑をお掛けしております」
アリルは関係のない人の話ならいいが、実母である。
「もう20年以上だから慣れっこよ、アリルの母の前に私の友人なんだから」
「学生の頃からですか?」
「そうよ、素敵な方と婚約されたのねって、珍しく言うものだから。そこで初めて、あの子の好みを知ったのよ。でも、辺境のパトラーとセラの夫にも同じことを言っていたけどね」
辺境伯である二人の夫もおそらく、ガタイのいい筋肉質で、良い身体付きをしているのだろうと想像が出来た。
「逞しい身体が好きですからね。ミコロンの夫であるソルド・マッドリー様もお気に入りです」
ミコロンも無事、ソルドと結婚をして、マッドリー次期侯爵夫人となった。
「ああ…気に入りそうね」
「コロンちゃんとソルちゃんって、まるで犬の様に呼ぶんですよ…失礼だと思ったのですが、マッドリー様もミコロンと同じ顔をして喜んでいまして…」
「本人が良いならいいわよ」
「そうなんですよね…」
ミコロンは元々呼ばれていたが、ソアリスが『コロンちゃんだから、ソルド様はソルちゃんね』と言うと、二人で目を合わせて感激していた。
すっかりソアリスの犬のようになってしまっているが、アリルでは止められない。
後日、王宮でソアリスに会ったミオトは、『ミオトじいさま』と呼ばれて、あははうふふと、嬉しそうにする二人の様子が見られた。
ルーファは早く呼んでおくべきだった。
ミオトはミオトで、まさかソアリスに孫は、どうかあなたに似ていますようにと願われていることを知らない。
一方、ララシャの友人である、ローティー・オイエン侯爵夫人は、離縁が発表されてから困惑していた。
3,773
お気に入りに追加
7,635
あなたにおすすめの小説
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!
しずもり
恋愛
ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。
お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?
突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。
そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。
よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。
*なんちゃって異世界モノの緩い設定です。
*登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。
*ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。
旦那様、離縁の申し出承りますわ
ブラウン
恋愛
「すまない、私はクララと生涯を共に生きていきたい。離縁してくれ」
大富豪 伯爵令嬢のケイトリン。
領地が災害に遭い、若くして侯爵当主なったロイドを幼少の頃より思いを寄せていたケイトリン。ロイド様を助けるため、性急な結婚を敢行。その為、旦那様は平民の女性に癒しを求めてしまった。この国はルメニエール信仰。一夫一妻。婚姻前の男女の行為禁止、婚姻中の不貞行為禁止の厳しい規律がある。旦那様は平民の女性と結婚したいがため、ケイトリンンに離縁を申し出てきた。
旦那様を愛しているがため、旦那様の領地のために、身を粉にして働いてきたケイトリン。
その後、階段から足を踏み外し、前世の記憶を思い出した私。
離縁に応じましょう!未練なし!どうぞ愛する方と結婚し末永くお幸せに!
*女性軽視の言葉が一部あります(すみません)
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
王女殿下を優先する婚約者に愛想が尽きました もう貴方に未練はありません!
灰銀猫
恋愛
6歳で幼馴染の侯爵家の次男と婚約したヴィオラ。
互いにいい関係を築いていると思っていたが、1年前に婚約者が王女の護衛に抜擢されてから雲行きが怪しくなった。儚げで可憐な王女殿下と、穏やかで見目麗しい近衛騎士が恋仲で、婚約者のヴィオラは二人の仲を邪魔するとの噂が流れていたのだ。
その噂を肯定するように、この一年、婚約者からの手紙は途絶え、この半年ほどは完全に絶縁状態だった。
それでも婚約者の両親とその兄はヴィオラの味方をしてくれ、いい関係を続けていた。
しかし17歳の誕生パーティーの日、婚約者は必ず出席するようにと言われていたパーティーを欠席し、王女の隣国訪問に護衛としてついて行ってしまった。
さすがに両親も婚約者の両親も激怒し、ヴィオラももう無理だと婚約解消を望み、程なくして婚約者有責での破棄となった。
そんな彼女に親友が、紹介したい男性がいると持ち掛けてきて…
3/23 HOTランキング女性向けで1位になれました。皆様のお陰です。ありがとうございます。
24.3.28 書籍化に伴い番外編をアップしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる