私のバラ色ではない人生

決定５

「じゃあ私はどうなるの？」
「ロアンスラー公爵の離縁されて戻って来た、中年の恥ずかしい妹だろうな」
「中年って、私は違うわ！」
「中年は中年だろう！」
「私はソアリスと違って、孫もいないわ！中年なんかじゃない」

　ララシャは孫がいないから、まだ若いと思っている。

「ソアリスの姉だなどと絶対に口にするなよ、した時点で修道院に直行させる」
「っな、姉なのは事実でしょう」
「お前にはそれしか価値はないだろうが、王妃陛下に迷惑を掛けたのだから、言う資格などない」
「はあ？いくらお兄様でも言っていいことと悪いことがありますわ」
「何の努力もして来なかった自分の責任だろう。早くサインしなさい」
「努力したわ」
「どうでもいい。成果が出てない以上、聞く価値もない」

　サイラスは元々そう言った人間だ、ララシャもサイラスに優しくされた記憶はないので、縋り付いても難しいことは身に染みている。

　なかなかサインをしないララシャを、リベルとサイラスはどうしようかと思っていると、カリルが声を掛けた。

「確か、君は好意を持たれ易いのだろう？リベルなど見限って、再婚すればいいのではないか？」

　リベルとサイラスは驚いた顔で、カリルを見たが、冗談で言っているようには見えなかった。

「とても人気のあるのだろう？」
「それは、そうですけど」

　サイラスはそんなはずはない、こんな肥え太った中年を誰も相手にしないと叫びたかったが、王太子の言葉を遮ることは出来ない。

　ララシャは今でも自分を愛しているリベルに悪いと思っているのか、意味深にちらちら見ながら答えた。

「エミアンローズにも幸せになって欲しいだろう？」
「当たり前です」
「ならば、とりあえずはエミアンローズにちゃんと教育を受けさせて、王族に残るためにも、留学させられるリベルに任せた方がいいんじゃないか？」
「そ、そうですけど」
「迷うことはないのではないか？」
「…サインします」

　ララシャは渋々という顔を作りながら、誓約書と、離縁状にサインした。ララシャは部屋に戻し、次はエミアンローズと話をするために、サイラスが呼びに行った合間にリベルはサイラスに問うた。

「なぜあのようなことを？」
「ショックだったか？」
「いいえ、それはありませんが、再婚など」

　無理だろうと言いたかったが、口に出すのは憚られた。

「ソアリス王妃陛下の助言なんだよ。ごねた時は、再婚、人気があると匂わせれば、絶対に否定しないから、そこで言いくるめて、そのまま押し進めるといいと」
「それは…」
「さすが妹君というべきだが、王妃陛下はこうも言った。ただし、変わっていなければと」

　成長していない証拠だとも言える。再び二人は溜息をつきそうだった。

「お連れしました」

　サイラスによって、エミアンローズがやって来た。

「パパ、また来たの？暇なのね」
「エミアンローズ、今後はお父様と呼びなさい。自分のことも、私と言いなさい。１６歳なんだから、分かるね？」
「え？パパ」
「お父様だ」
「何で？急にどうしたの？」

　エミアンローズにとっては、怒られることもあるけど、結局許してくれるのがリベルだった。

「急ではない、ずっと思っていた」
「そんなこと言われても、別に怖くないもん」

　やはり幼子を相手している気分になるが、１６歳として話をすることにした。

「お父様とお母様は、離縁することになった」
「離縁？」

　離縁が分からないのか、両親が離縁が受け入れられないのか分からないが、事実を伝えて、受け入れるしかない。

「そして、エミアンローズは留学して貰う」
「留学？」
「ピデム王国に戻って、準備をして、留学するんだ。帰るから準備しなさい。お母様にも当分会えない、ちゃんと挨拶をして来なさい」
「ママに会えないの？」