私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
174 / 348

決定4

しおりを挟む
「そういうことだ、国の問題にしてまで、譲るという選択肢はない。しかも、エミアンローズと想い合っているいるなどと、デタラメまで言って」
「でも、エミアンローズに会えば」
「まあ、人の好みはそれぞれだ。それを否定する気はない」

 エミアンローズはまだ16歳で、好む人がこの世にいないとまでは言わない。だが、カリルは正直、エミアンローズに思い入れはない。

「そうでしょう!」

 ララシャはその言葉に希望を見出した。

「だが、グレイ殿下は確かミフル殿下の最初は見た目に目を奪われ、その後に中身も好きになったと聞いている。あのような整った顔に、惹かれた人間がエミアンローズを選ぶと思うか?」
「いくらお義兄様でも、ひ、酷いわ!」
「せめて、エミアンローズがミフル殿下に似ていたら、説得力があっただろうがな。それもないか。離縁は決定だ、そしてクロンデール王国王家には二度と迷惑を掛けたり、関わることは許さない。関わった時点で良くて修道院。誓約書と、離縁状に読んでサインしなさい。破ったりすれば、どうなるか分かるな?」

 カリルはソアリスから預かった誓約書と、離縁状をララシャの前に置き、サイラスがその横に万年筆を置いた。

「い、嫌です」
「サインしないのなら、クロンデール王国とピデム王国の王家から詳細を発表をするだけだ。それでいいんだな?」
「っえ、待って、待ってください」
「何だ?」
「考える時間をください」

 ララシャはカリルが苦手であった。でもここで負けて、書いてしまったら本当になってしまう、話せばわかるのだからと時間を稼ごうと考えた。

「アンセム陛下も、私も父も君と違って暇ではない。サインしないということで、いいんだな?」
「よ、読みます」

 ララシャは事細かく書かれた誓約書と、離縁状を読んでいった。

「エミアンはどうなるのですか?」
「猶予が貰えたから、王族として残り、留学して、相応しくなれれば、王族には残れるだろう」
「もう会えないってことですか?」
「休暇などに会える状態なら、会えるのではないか?」

 ララシャは外交で国外に出ることもなかったので、エミアンローズと離れたことがなかった。

「そんな…エミアンには私と離れるなんて無理よ。リベル、そうでしょう?」
「決まったことだ」
「お兄様、私が引き取って育てるわ。いいでしょう?学園もクロンデール王国で通えばいいじゃない」
「どうやって暮らすんだ?ロアンスラー公爵家は、お前に泥を塗られたんだ。生きていくの最低限のお金しか出さない。お前が働くのか?父上と母上を頼っても無駄だぞ?同じ意見だ」

 ララシャは既に両親に泣きついてどうにかして貰おうとしたが、父・キリス自業自得だ、母・マルシャには恥晒しだと罵られて、取り付く島もなかった。

 サイラスは離縁となったために、ララシャをお前に戻ってしまっている。

「働く…?」
「学費だって掛かるだろう?お前が引き取るなら、お前が払うべきだろう?」

 リベルが払わないということはないのだろうが、サイラスは引き取る気なら、そこまで責任を持つべきだと思わせるために言い切った。

 そもそもクロンデール王国で学園に通わせたら、ミフル殿下が在学中であるため、迷惑を掛ける可能性がある。サイラスとはしては避けたいことであった。

「それは…」
「何をするにもお金は掛かるんだ、誰も払ってはくれない。自分で払うしかない。公爵令嬢ではないお前に、払う金などない」
「公爵令嬢では、ない?」

 ララシャは離縁すれば、またロアンスラー公爵令嬢に戻れると思っていた。

「当たり前だろう?娘は嫁いだから、公爵令嬢は今はいない」
「だから私が」
「なぜ私と年も変わらない中年が、公爵令嬢になるんだ?冗談もいい加減にしろ」

 その言葉にリベルは、サイラスはソアリスの兄なのだなと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

婚約者の断罪

玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。 見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。 しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。 親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

(完結)婚約破棄から始まる真実の愛

青空一夏
恋愛
 私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。  女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?  美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

【完結】愛すればこそ奪う

つくも茄子
恋愛
侯爵家の次男アーサーが結婚寸前で駆け落ちした。 相手は、侯爵家の上級メイドであり、男爵令嬢であるアンヌだった。二人は幼馴染の初恋同士であり、秘密の恋人でもあった。家のために、成り上がりの平凡な令嬢との結婚を余儀なくされたアーサーであったが、愛する気持ちに嘘はつかない!と全てを捨てての愛の逃避行。 たどり着いた先は辺境の田舎町。 そこで平民として穏やかに愛する人と夫婦として暮らしていた。 数年前に娘のエミリーも生まれ、幸せに満ちていた。 そんなある日、王都の大学から連絡がくる。 アーサーの論文が認められ、講師として大学に招かれることになった。 数年ぶりに王都に戻るアーサー達一行。 王都の暮らしに落ち着いてきた頃に、アーサーに襲いかかった暴行事件! 通り魔の無差別事件として処理された。 だが、アーサーには何かかが引っかかる。 後日、犯人の名前を聞いたアーサーは、驚愕した! 自分を襲ったのが妻の妹! そこから明らかになる、駆け落ち後の悲劇の数々。 愛し合う夫婦に、捨てたはずの過去が襲いかかってきた。 彼らは一体どのような決断をするのか!!! 一方、『傷物令嬢』となった子爵令嬢のヴィクトリアは美しく優しい夫の間に二人の子供にも恵まれ、幸せの絶頂にいた。 「小説家になろう」「カクヨム」にも公開中。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

処理中です...