私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
162 / 348

謝罪

しおりを挟む
「エミアンは行かないわ。だって別に謝ることはないもの」
「そうか…分かった」

 エミアンローズはショックな様子で、悲しそうな顔をしたリベルが少し気になったが、それよりも追加のお菓子が欲しかった。

 サイラスが両親であるキリスとマルシャにも事情を話すと、さすがにあり得ないと、ますますソアリスに嫌われてしまうと、二人は頭を抱えた。

 二人にララシャとエミアンローズを見張って、邸から出さないように言い、リベルとサイラスは王宮に先触れを出しており、同じ目的であったために、アンセムとソアリスはまとめて会うことにした。

「申し訳ございませんでした」
「申し訳ございません」

 応接室に通されたリベルとサイラスは、アンセムとソアリスが入室すると、立ち上がって深く頭を下げた。

「リベル殿下には許すということは、今の段階では私共だけでは判断は出来ません。ピデム王国には既に詳細を送っております」
「勿論でございます、理解しております」
「ロアンスラー公爵も、ララシャ妃がどういった処罰になってからということでよろしいですか」
「はい、承知いたしました」

 ソアリスは何も言わずに、成り行きを見守っている。

 リベルは前回のことがあったので、ビクビクしてので、サイラスが一緒で良かったと思ったくらいだった。

「二人は関与していないのですね?」
「私も前科から、何の言いわけにもなりませんが、ララシャには婚約者には出来ないと言っておりました。それで喧嘩になってこちらに戻っておりまして、頭を冷やせばいいというつもりだったのですが…」
「私も勝手に馬車を使って、王宮に行くとは思ってもおらず、御者も、連れて来た護衛の方も止められないままこちらに来てしまったようです」
「経緯は分かりました。殿下は今後をどうお考えですか?」

 アンセムはロアンスラー公爵は疑っていなかったが、リベル殿下は過去のことから疑っていたが、ソアリスに怒られたのが効いたのか、ソアリスに言葉を借りるならば、人間になったようだ。

 ソアリスは応接室に向かいながら、リベル殿下がまだ誘拐王だったら、かつてないほどくっせえ雑巾に降格すると臭そうな顔で言っていた。

 おそらく謝っていなかったら、あの雑巾を見る目をされていたはずだ。

 ソアリスは澄ました顔をしているが、とりあえず命拾いしたな元雑巾、元誘拐王とでも思っているのだろう。

「国王陛下、王太子殿下が決めることに従います」
「厳しい結果になるかもしれないことも、理解されているのだな」
「はい、承知しております」
「離縁するつもりですか?」
「婚約解消をしていただいたのに、申し訳ないですが、そういった結果になっても当然だと思っております」
「そうですか、ならば今の段階で何も言うことはありません」

 今回の件はエスザール王国の意向を優先しようと、アンセムは考えている。

 ミランお祖母様が王女だったことから、エスザール王国にも親族がいる状態で、ソアリスが私も責任を負うこともなってもいい、私の姉だとは考えないで欲しいと一筆書いたこともあり、情状酌量の余地はないと考えていい。

「ソアリス、何か言うことはあるか」

 その言葉にリベルは思わず、また悪い口が飛んで来るのではないかと、体が勝手にビクっとしていた。

「リベル殿下、そのように身構えなくても大丈夫ですよ。確かにララシャ妃には脳味噌、カビ生えてんのか?脳味噌の代わりに、蟹味噌でも詰まってんのか?とは思いましたけども、ほほほほほ」
「申し訳ございません」

 サイラスも勿論、ソアリスが口が悪いことは知っているが、王妃という立場上いいのかと、ハラハラしたが、アンセムに驚く様子もないことから、周知されていたのかとようやく知った。

「もはや、私が何か言って変わる段階は既に超えております。ですが、リベル殿下に二つ、伺いたいことがございます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

何を間違った?【完結済】

maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。 彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。 今真実を聞いて⋯⋯。 愚かな私の後悔の話 ※作者の妄想の産物です 他サイトでも投稿しております

婚約者の断罪

玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。 見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。 しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。 親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。

もう尽くして耐えるのは辞めます!!

月居 結深
恋愛
 国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。  婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。  こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?  小説家になろうの方でも公開しています。 2024/08/27  なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」  ぱさっ。  伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。 「きちんと目は通してもらえましたか?」 「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」  ざわざわ。ざわざわ。  王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。 「──女のカン、というやつでしょうか」 「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」 「素直、とは」 「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」  カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。 「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」 「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」  カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。 「それではどうぞ、お好きになさいませ」

【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。

川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」 愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。 伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。 「あの女のせいです」 兄は怒り――。 「それほどの話であったのか……」 ――父は呆れた。 そして始まる貴族同士の駆け引き。 「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」 「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」 「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」 令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語──

なにひとつ、まちがっていない。

いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。 それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。 ――なにもかもを間違えた。 そう後悔する自分の将来の姿が。 Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの? A 作者もそこまで考えていません。  どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。

処理中です...