私のバラ色ではない人生

野村にれ

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災い去りて1

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「ララシャの独断で、リベル殿下も知らないんじゃない?ピデム王国にどういうことかと抗議を出して、エスザール王国にも経緯の説明を、あれでもピデム王国の王族なのですから、責任を取らせないと」
「我が国だけの話ではないな」

 ララシャはこれまでのように内々でどうにかなる話だと思っているのだろうが、今回はエスザール王国が関わって来るため、なかったことにはならない。

「ええ、会うのが最後だと思ったから、言いたいこと言ってやったわ」
「そうなるかもしれないな」

 姉妹の話ではない、国の話になる。

 そもそも、ミフルの婚約者を譲れなどと言われて、アンセムも腹が立っている。

「相手がララシャではなかったら、『脳味噌、カビ生えてんのか?脳味噌の代わりに、蟹味噌でも詰まってんのか?ミフルの婚約者を奪う?尻を出せ!』とでも言ってやりたいところだけど、効果がないから消化不良よ」
「そ、そうか…」

 今日もフルスロットルかと思ったが、ララシャには効果がないと言っていた。

「ミフルはグレイ殿下に好きに報告したらいいわ」
「いいの?」
「いいわよ、あなたには文句を言っていい権利があるわ。本来、怒っていいのはミフルだけでしょう?母様は野次馬みたいなものよ、ほほほ」
「一番、野次馬にしてはいけない人種よ」
「ミフルも私に似ているなら、同族よ」
「…う」

 自分でソアリス似と言ってしまったために、何も言えなくなった。

「まずはピデム王国の話だから、平気よ」

 エスザール王国には説明はするが、まずはピデム王国がどう動くかである。

「お母様は何の話をしていたの?」
「これまでの経験から、ララシャの言葉に信憑性がないことは分かったから、どうして肥え太ったのか、ばっかり聞いていたの」
「え?」
「ララシャはネズミか?リスか?小鳥か?っていう食事だったの。食べても太らないって、言いたかったから」
「そんなことで?」
「彼女には誇らしいことだったの」

 ミフルはそんな言葉に何の意味があるのかと、理解が出来なかった。

「しかも、私にもう少し痩せたらとか、食べ過ぎだとか言っていたのよ。それがああなっているのよ?聞かずにはいられないでしょう?目の前に大好きな揚げ芋を、置かれたようなものよ?」
「揚げ芋…」

 ティータイムにはそぐわない、ソアリスの好物である。ちなみにきょうだい全員、大好きである。

「そんなことを言われていたのか?」
「そうよ、それが今となっては樽2号、何かもう可笑しくなっちゃって」

 しばらくすると、ララシャとエミアンローズを追い出した、ポーリアとキャロラインと護衛達も戻って来た。

「ご苦労様、ありがとうね。大人しく帰ったかしら?」
「まだ話は終わっていない、約束をして貰っていないなどと言っておりましたが」
「ド、エミアンローズは?」

 ドリアンローズが口から出そうになったが、慌てて止めた。

「分かっていない様子でした」
「まるで幼子のようだったわね」
「はい、16歳とは思えない振る舞いでした」
「そうなのか?」

 ララシャはともかく、エミアンローズは王族の教育を生まれた時から、受けているはずだと思っていた。

「ええ、ララシャをママと呼び、自分をエミアンって言うのよ」
「教育を受けていないのか?」
「さあ、ララシャと同じで、今日は体調が良くない、これはあまり得意ではないから、私はゆっくりでないと出来ないのなんて言って、逃げているんじゃない?」

 そうではないが、逃げているのは当たりである。

「ララシャのせいではあるけど、『エミアン、グレイ様と結婚するの!ママもお似合いだって言ってたもの』って言っていたわ。思わず、鼻摘まんでしまったもの」
「鼻?」
「ああ…何でもないのよ」
「何?マ~マ~」

 ミフルが整った顔を、ソアリスに近付けて、じっと見ている。しかも、ここでママと呼ぶところがまた、ソアリスに似ているところである。
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