私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
152 / 350

災い来たる5

しおりを挟む
「言わないわよ!」
「公務もないから、肥え太っていてもいいのかしら?」

 エミアンローズがいなくなったことで、これでもかというほど、嫌味というか、悪口の応酬となっている。

「あなたはそればっかり!」
「だって、そんな体形を見せ付けられて、黙っていろって言う方が無理な話じゃない?何だか面白くなって来たわ、ふふふ」
「だから!妊娠をして!そうよ、あなた40歳を過ぎて、子どもを産むなんて、私とても恥ずかしかったのよ」

 ララシャは結局、リベルが祝いを送っているが、ケイトの出産の祝いを一切言っていない。そんなことは頭にないという状況で、どれだけ自分のことしか頭にないか分かるというものである。

 そして、ようやく第7子のことを思い出した。

 周りが気を使って、おめでたいと言ってくれたが、こんな年で本当に恥ずかしいわと言うことが、とても気持ちが良かった。

「恥ずかしい、そう、それは悪かったわね」

 黙って控えていた侍女と護衛はその言葉に、怒りで震えたが、そんなことで傷付くソアリスではない。

「だったら、私も肥え太った、樽のような姉を持って恥ずかしいのだけど?」
「樽ですって!」
「ララシャ様、太ってらっしゃるのはご存知?なんて言われていたのよ?見るまで信じていなかったけど…これは言われるわよね」
「っな、ななな」

 他者から言われた時と聞き、さすがに動揺をした。

「妊娠して体形が変わるのは分かるわ。別に人前に立たない人間なら、気にしなくてもいいかもしれないけど、病気でもないのに肥え太った王族なんて、見てられないでしょう?」

 ユリウスが遠くから見ても、明らかに異彩を放っていたと言っていた。

「あなたは戻り易かっただけじゃない」
「勝手に戻ったのではないわ、食事制限や運動をして、戻したのよ?あなたは乳母もおらず、一人で育てたとでも言うの?」
「そんなはずないでしょう!」

 乳母を雇えないというのは、お金がないという意味で、どうして私が一人で育てなきゃならないのよと、怒っていた。

「だったら乳母も雇えない方に比べて、楽をさせて貰っていることは、分かっているのでしょう?だったら、体重くらい戻しなさいよ、影で笑われているわよ?」
「はあ?笑われるわけないでしょう」
「今、ローティー・オイエンと並んだら、そっくりなんじゃない?」

 ローティーはララシャの友人で、変わり種のせいで、未だに婚約者が決まらないミリンティーの母親である。

「はあ?」
「娘さんも同じ体形だから、そっくりだと思うわよ。当時、あなたはずっと馬鹿にしていたわよね?」

 友人をあんなに太って恥ずかしくないのか、隣にいるとますます太って見えて、申し訳ないなどと言っていた。

「ローティーと一緒だなんて…」
「娘に婚約者がいないところも同じね。紹介して欲しいと言われなかった?」
「言われたけど…」

 連絡はあり、王太子妃殿下の茶会で、声を掛けてみたが、周りにはおりませんわねと言われてしまった。

「あなたが紹介してくれればいいじゃない」
「嫌よ、評判の悪い娘なんて」
「評判が悪い?」
「ええ、侯爵令嬢としてあるまじき行為をされたの。婚約者が出来ないのも無理もないわ」

 侯爵令嬢となれば嫁ぎ先も限られる、子どもが多い場合は下位貴族に嫁ぐことも出来るが、オイエン侯爵家はローティーと嫡男だけである。

 それなのに下位貴族に嫁ぐということは、何か利益でもない限り、嫁ぎ先がなかったと取られてしまう。

「え?どういうこと?」
「友人なのだから、本人に聞いたら?それとも会うのが怖いかしら?」
「だから、しつこいわね!私はそんな話をしに来たのではないわ」

 もう二度と会わないかもしれないと察しているので、言いたいことは言ってしまおうと思っているソアリスだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後妻を迎えた家の侯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
 私はイリス=レイバン、侯爵令嬢で現在22歳よ。お父様と亡くなったお母様との間にはお兄様と私、二人の子供がいる。そんな生活の中、一か月前にお父様の再婚話を聞かされた。  もう私もいい年だし、婚約者も決まっている身。それぐらいならと思って、お兄様と二人で了承したのだけれど……。  やってきたのは、ケイト=エルマン子爵令嬢。御年16歳! 昔からプレイボーイと言われたお父様でも、流石にこれは…。 『家出した伯爵令嬢』で序盤と終盤に登場する令嬢を描いた外伝的作品です。本編には出ない人物で一部設定を使い回した話ですが、独立したお話です。 完結済み!

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

公爵令嬢の立場を捨てたお姫様

羽衣 狐火
恋愛
公爵令嬢は暇なんてないわ 舞踏会 お茶会 正妃になるための勉強 …何もかもうんざりですわ!もう公爵令嬢の立場なんか捨ててやる! 王子なんか知りませんわ! 田舎でのんびり暮らします!

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

それでも、私は幸せです~二番目にすらなれない妖精姫の結婚~

柵空いとま
恋愛
家族のために、婚約者である第二王子のために。政治的な理由で選ばれただけだと、ちゃんとわかっている。 大好きな人達に恥をかかせないために、侯爵令嬢シエラは幼い頃からひたすら努力した。六年間も苦手な妃教育、周りからの心無い言葉に耐えた結果、いよいよ来月、婚約者と結婚する……はずだった。そんな彼女を待ち受けたのは他の女性と仲睦まじく歩いている婚約者の姿と一方的な婚約解消。それだけではなく、シエラの新しい嫁ぎ先が既に決まったという事実も告げられた。その相手は、悪名高い隣国の英雄であるが――。 これは、どんなに頑張っても大好きな人の一番目どころか二番目にすらなれなかった少女が自分の「幸せ」の形を見つめ直す物語。 ※他のサイトにも投稿しています

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

見た目を変えろと命令したのに婚約破棄ですか。それなら元に戻るだけです

天宮有
恋愛
私テリナは、婚約者のアシェルから見た目を変えろと命令されて魔法薬を飲まされる。 魔法学園に入学する前の出来事で、他の男が私と関わることを阻止したかったようだ。 薬の効力によって、私は魔法の実力はあるけど醜い令嬢と呼ばれるようになってしまう。 それでも構わないと考えていたのに、アシェルは醜いから婚約破棄すると言い出した。

【完結】殿下の本命は誰なのですか?

紫崎 藍華
恋愛
ローランド王子からリリアンを婚約者にすると告げられ婚約破棄されたクレア。 王命により決められた婚約なので勝手に破棄されたことを報告しなければならないのだが、そのときリリアンが倒れてしまった。 予想外の事態に正式な婚約破棄の手続きは後回しにされ、クレアは曖昧な立場のままローランド王子に振り回されることになる。

処理中です...