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成長2
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「ケイトが大きいで、正しいわよ」
「この服、カイルスの服じゃない?」
「ええ、活きが良すぎて、膝がハイハイで真っ赤になってしまってね。しかも、ドレスだとおむつ丸出しになるから、ハイハイが終わるまではこの格好で、膝あてを付けて過ごそうかと思っているの」
王女らしく可愛らしいドレスを着せていたのだが、恐ろしい勢いで動き回るので、戻しても戻しても、おむつ丸出しになってしまい、カイルスの幼い頃の服を引っ張り出して、着せている。
「そんなに動くの?」
「そうなのよ、食べて、動いて、寝てるの。一度寝たら、満足するまで起きないの。おかげで寝ている間は静かなのよ?」
「ソアリスじゃない!」
「言われると思ったわ!みーんな、私にそっくりだって言うのよ」
顔はそっくりではないのだが、小さな王妃陛下と言われて、皆を振り回している。祖父母であるロランとテラーに任せたら、ちょっと待って、待って頂戴と、ヒイヒイ言っていたくらいである。
ドアがノックされて、入って来たのはカイルスだった。
「お母様!」
「カイルス。お勉強、お疲れ様」
「はい!」
その次に、アリルを見付けて、嬉しそうな顔をした。
「アリルお姉様、いらしていたんですね」
「カイルス~!」
アリルにとっては、カイルスもまだまだ可愛い弟である。
「リズ夫人も、ようこそお越しくださいました」
「ありがとうございます、殿下」
すっかり立派になったカイルスに、リズも幼い頃も堪らなく可愛かったが、成長に頬を緩めた。
「ケイトに会いに来たのですか」
「カイルスにも会いたかったわ」
「ふふっ、ありがとうございます」
ぎゃふ、ぎゃふという声が聞こえて、アリルとリズは当たりを見渡した。
「「え?」」
「ケイト、起きたんだね。ミルクを」
「はい、準備して参ります」
カイルスは慣れた手つきで、ケイトを抱き上げた。ちょっと重そうであるが、ケイトはカイルスの頬を触って、嬉しそうだ。
乳母も素早い動きで、ミルクを作りに向かった。
「何?」
「ミルクをご所望なの」
「分かるの?」
「おふぇ、おふぇ言う時もあるわね。その場合はおむつね」
「違うの?」
「そうなのよ、助かるでしょう?」
「そんなこと、初めて聞いたわよ」
リズは息子や娘が赤ちゃんの頃に、どうして泣いているのか分からず、右往左往したことを思い出していた。
「最初は気付かなかったのだけど、おむつなのに、ミルクをあげると、がうがうって怒るのよ。先に変えろみたいな」
「自己主張が強いのね…」
「人生が一周目ではないのかもしれないわ」
「中身が大人ってこと?」
「小さいおばさんか、おじさんが入っているのかもしれないわ」
そんな話をしている間に、ミルクが届いて、ソファでカイルスが手慣れた様子であげている。
「カイルス、ありがとう」
「はい、お母様。今日も沢山飲んでいます」
「ええ、飲まないという選択肢は彼女にはないから」
ケイトはちゅーちゅーと物凄い勢いで飲んでおり、飲ませ甲斐がある。
飲み切ると、ぷっはーと言わんばかりの顔をしている。その顔は赤ちゃんのはずなのに、ソアリスにそっくりであった。
ケイトは手足をバタバタさせ始めて、カイルスがちょっと待ってと、乳母に空のミルクの瓶を渡して、膝あてを受け取って付けている。
「カイルス、すっかりお兄ちゃんね」
「へへへ」
どうなることかと思ったカイルスとケイトは、とても仲良しである。そして、素早くハイハイをするケイトを、カイルスが付いて歩いている。
「本当に早いわね…」
「これはドレスは無理ね」
それでも、兄と妹の姿をアリルとリズは、微笑ましく見ていた。
「ソアリスは元気そうね」
「おかげさまで、乳母もいるし、一人で育てているわけではないからね。カイルスも遊んでくれるし、一人でもハイ回っているくらいだから」
「甥っ子と姪っ子とは?」
「それがね、ちょっとケイトの力強過ぎて…見てないと危ないのよ」
「この服、カイルスの服じゃない?」
「ええ、活きが良すぎて、膝がハイハイで真っ赤になってしまってね。しかも、ドレスだとおむつ丸出しになるから、ハイハイが終わるまではこの格好で、膝あてを付けて過ごそうかと思っているの」
王女らしく可愛らしいドレスを着せていたのだが、恐ろしい勢いで動き回るので、戻しても戻しても、おむつ丸出しになってしまい、カイルスの幼い頃の服を引っ張り出して、着せている。
「そんなに動くの?」
「そうなのよ、食べて、動いて、寝てるの。一度寝たら、満足するまで起きないの。おかげで寝ている間は静かなのよ?」
「ソアリスじゃない!」
「言われると思ったわ!みーんな、私にそっくりだって言うのよ」
顔はそっくりではないのだが、小さな王妃陛下と言われて、皆を振り回している。祖父母であるロランとテラーに任せたら、ちょっと待って、待って頂戴と、ヒイヒイ言っていたくらいである。
ドアがノックされて、入って来たのはカイルスだった。
「お母様!」
「カイルス。お勉強、お疲れ様」
「はい!」
その次に、アリルを見付けて、嬉しそうな顔をした。
「アリルお姉様、いらしていたんですね」
「カイルス~!」
アリルにとっては、カイルスもまだまだ可愛い弟である。
「リズ夫人も、ようこそお越しくださいました」
「ありがとうございます、殿下」
すっかり立派になったカイルスに、リズも幼い頃も堪らなく可愛かったが、成長に頬を緩めた。
「ケイトに会いに来たのですか」
「カイルスにも会いたかったわ」
「ふふっ、ありがとうございます」
ぎゃふ、ぎゃふという声が聞こえて、アリルとリズは当たりを見渡した。
「「え?」」
「ケイト、起きたんだね。ミルクを」
「はい、準備して参ります」
カイルスは慣れた手つきで、ケイトを抱き上げた。ちょっと重そうであるが、ケイトはカイルスの頬を触って、嬉しそうだ。
乳母も素早い動きで、ミルクを作りに向かった。
「何?」
「ミルクをご所望なの」
「分かるの?」
「おふぇ、おふぇ言う時もあるわね。その場合はおむつね」
「違うの?」
「そうなのよ、助かるでしょう?」
「そんなこと、初めて聞いたわよ」
リズは息子や娘が赤ちゃんの頃に、どうして泣いているのか分からず、右往左往したことを思い出していた。
「最初は気付かなかったのだけど、おむつなのに、ミルクをあげると、がうがうって怒るのよ。先に変えろみたいな」
「自己主張が強いのね…」
「人生が一周目ではないのかもしれないわ」
「中身が大人ってこと?」
「小さいおばさんか、おじさんが入っているのかもしれないわ」
そんな話をしている間に、ミルクが届いて、ソファでカイルスが手慣れた様子であげている。
「カイルス、ありがとう」
「はい、お母様。今日も沢山飲んでいます」
「ええ、飲まないという選択肢は彼女にはないから」
ケイトはちゅーちゅーと物凄い勢いで飲んでおり、飲ませ甲斐がある。
飲み切ると、ぷっはーと言わんばかりの顔をしている。その顔は赤ちゃんのはずなのに、ソアリスにそっくりであった。
ケイトは手足をバタバタさせ始めて、カイルスがちょっと待ってと、乳母に空のミルクの瓶を渡して、膝あてを受け取って付けている。
「カイルス、すっかりお兄ちゃんね」
「へへへ」
どうなることかと思ったカイルスとケイトは、とても仲良しである。そして、素早くハイハイをするケイトを、カイルスが付いて歩いている。
「本当に早いわね…」
「これはドレスは無理ね」
それでも、兄と妹の姿をアリルとリズは、微笑ましく見ていた。
「ソアリスは元気そうね」
「おかげさまで、乳母もいるし、一人で育てているわけではないからね。カイルスも遊んでくれるし、一人でもハイ回っているくらいだから」
「甥っ子と姪っ子とは?」
「それがね、ちょっとケイトの力強過ぎて…見てないと危ないのよ」
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