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久振
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サイラス・ロアンスラーに会う日がやって来た。
侍女と、念のためにロペス医師も同席することになった。ロアンスラー公爵が何かするかよりも、ソアリスが怒り狂う可能性が考慮された。
仲が良いわけではないことは侍女たちは知っていたが、なぜかと問われると、兄をハエだと思っているからだと答えると、なるほどと深く納得されてしまい、さすがソアリスの侍女だと思った。
サイラスが待つ応接室に、ソアリスが入室し、何十年振りに真正面から対峙した、サイラスとソアリス兄妹。顔はサイラスとララシャが母・マルシャ似で、ソアリスは父・キリスに似ている。
「ごきげんよう、ロアンスラー公爵」
「はい、王妃陛下。ご無沙汰しております」
サイラスは立ち上がって、深く頭を下げた。それだけでも、ソアリスにとっては私的な場では、見たこともない姿だった。
「人間の言葉が話せるようになったようで、良かったわ」
ハエから進化したなどと思われているとは想定はしていないだろうが、その嫌味はサイラスには身に覚えがあった。
「はい…その通りです。今更ですが、大変申し訳ございませんでした」
「私が王妃ではなかったら、謝ったのかしら?」
「…そ、その、反省はしたと思います」
思いがけない質問にしどろもどろになっており、鼻で笑った。
「たらればを言っても仕方ないわね。おかしいのは自分だと気付いたのね?」
「はい、酷いことばかり言っていた。いや、酷いことしか言っていなかった。今となっては後悔しかありません」
「ざまあみろ」
抑揚のない酷く低い声で、とどめを刺した。
「…はい、本当にすまなかった。両親も反省している、会って欲しいというわけではない。会いたくないのも分かっている」
「それはどうも。母は相変わらず太ってるの?」
「少しは痩せたようだが、見た目には変わらないと思う。ソアリス、いや、王妃陛下の身体を心配していた。父もだ」
「へえ、心配する機能が付いていたのね」
何も知らなければ、酷い言い方ではあるが、その場にいたこともあり、似たようなことを言っていたサイラスは否定することは出来なかった。
「私も含め、恨まれて当然だと思っている」
「姉は来たりしているの?」
「いや、子どもが生まれてから、ほとんど帰って来ることはない。最後は、いつだったか…まだ姪が赤子の頃だったはずだ」
「そう、では会っていないのね」
「ああ、私は会っていない。何かあったのか?」
ソアリスはララシャを遠ざけていたはずなのに、何かあったのだろうか。
「母の様に太っているのは知らないの?」
「え?ララシャが?確かに、出産後は太っていたが…」
サイラスもララシャが痩せている体重を維持するために、食べないようにしている姿を覚えている。
「ルイス殿下の結婚式で、ユリウスに見て来るように言ったのだけど…遠くからでも分かるほど、物凄く太っていたそうなの」
ユリウスはマルシャと一緒で、樽だったと言い切った。あれだけ痩せていることに誇りを持っていたララシャに、見るまで信じられないと思ったくらいである。
「え…」
「私も見たわけではないけど、会っていないのね」
ソアリスは正しい情報を得られるかと思ったが、会っていないことにガッカリして、興味を失った。
「それで、今さら何の用事でしょうか」
「体は大丈夫なのか?」
「ええ、今のところは大丈夫ですが、ロアンスラー公爵が何かしてくれるというのですか?」
「何か出来ることがあれば、何でも言って欲しい」
「約束通り、後ろ盾にはなってくれておりますし。特に何もありませんわ」
後ろ盾はララシャが結婚する予定だった頃からの約束であり、お祝い事には最低限のやり取りはしている。
「そうか…何かあったらいつでも言ってくれ」
「…ええ」
実のあるような話にはならなかったが、サイラスは久し振りにソアリスと話が出来て、良かったと帰って行った。
侍女と、念のためにロペス医師も同席することになった。ロアンスラー公爵が何かするかよりも、ソアリスが怒り狂う可能性が考慮された。
仲が良いわけではないことは侍女たちは知っていたが、なぜかと問われると、兄をハエだと思っているからだと答えると、なるほどと深く納得されてしまい、さすがソアリスの侍女だと思った。
サイラスが待つ応接室に、ソアリスが入室し、何十年振りに真正面から対峙した、サイラスとソアリス兄妹。顔はサイラスとララシャが母・マルシャ似で、ソアリスは父・キリスに似ている。
「ごきげんよう、ロアンスラー公爵」
「はい、王妃陛下。ご無沙汰しております」
サイラスは立ち上がって、深く頭を下げた。それだけでも、ソアリスにとっては私的な場では、見たこともない姿だった。
「人間の言葉が話せるようになったようで、良かったわ」
ハエから進化したなどと思われているとは想定はしていないだろうが、その嫌味はサイラスには身に覚えがあった。
「はい…その通りです。今更ですが、大変申し訳ございませんでした」
「私が王妃ではなかったら、謝ったのかしら?」
「…そ、その、反省はしたと思います」
思いがけない質問にしどろもどろになっており、鼻で笑った。
「たらればを言っても仕方ないわね。おかしいのは自分だと気付いたのね?」
「はい、酷いことばかり言っていた。いや、酷いことしか言っていなかった。今となっては後悔しかありません」
「ざまあみろ」
抑揚のない酷く低い声で、とどめを刺した。
「…はい、本当にすまなかった。両親も反省している、会って欲しいというわけではない。会いたくないのも分かっている」
「それはどうも。母は相変わらず太ってるの?」
「少しは痩せたようだが、見た目には変わらないと思う。ソアリス、いや、王妃陛下の身体を心配していた。父もだ」
「へえ、心配する機能が付いていたのね」
何も知らなければ、酷い言い方ではあるが、その場にいたこともあり、似たようなことを言っていたサイラスは否定することは出来なかった。
「私も含め、恨まれて当然だと思っている」
「姉は来たりしているの?」
「いや、子どもが生まれてから、ほとんど帰って来ることはない。最後は、いつだったか…まだ姪が赤子の頃だったはずだ」
「そう、では会っていないのね」
「ああ、私は会っていない。何かあったのか?」
ソアリスはララシャを遠ざけていたはずなのに、何かあったのだろうか。
「母の様に太っているのは知らないの?」
「え?ララシャが?確かに、出産後は太っていたが…」
サイラスもララシャが痩せている体重を維持するために、食べないようにしている姿を覚えている。
「ルイス殿下の結婚式で、ユリウスに見て来るように言ったのだけど…遠くからでも分かるほど、物凄く太っていたそうなの」
ユリウスはマルシャと一緒で、樽だったと言い切った。あれだけ痩せていることに誇りを持っていたララシャに、見るまで信じられないと思ったくらいである。
「え…」
「私も見たわけではないけど、会っていないのね」
ソアリスは正しい情報を得られるかと思ったが、会っていないことにガッカリして、興味を失った。
「それで、今さら何の用事でしょうか」
「体は大丈夫なのか?」
「ええ、今のところは大丈夫ですが、ロアンスラー公爵が何かしてくれるというのですか?」
「何か出来ることがあれば、何でも言って欲しい」
「約束通り、後ろ盾にはなってくれておりますし。特に何もありませんわ」
後ろ盾はララシャが結婚する予定だった頃からの約束であり、お祝い事には最低限のやり取りはしている。
「そうか…何かあったらいつでも言ってくれ」
「…ええ」
実のあるような話にはならなかったが、サイラスは久し振りにソアリスと話が出来て、良かったと帰って行った。
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