私のバラ色ではない人生

野村にれ

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妊婦1

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 表向きは変わらないが、ソアリスの体調優先のスケージュールに組み直された。アリルも毎日ではないが、手伝いにやって来るようになり、テラーには侍女に公務を運んで貰い、説明をしながら行うことになった。

 侍女たちも少し忙しくなるくらいでと言ったのだが、皆、今が腕の見せ所だと言わんばかりに、三人が腕をぶん回しながら、取り仕切ってくれてる。

 だが、家ではまだ発表になっていないので、スンとしているそうだ。

 ソアリスも減りはしたが公務も行い、よく食べ、よく眠り、走るのは止めたが、散歩も欠かさなかった。

 毎日、ロペス医師も診察にやって来るが、私室だとまだ知らない者もいるために、医師として公務に関わっているという風にして、執務室に訪れている。 

 だがいつも通り、木登りは禁止、さらに今回は侍女たちの心臓に悪い、ブランコも禁止されてしまった。

「縄跳びは?」
「駄目です。どうして大丈夫だと思ったんですか」
「飛ぶだけじゃない?」
「上下運動もですが、転びでもしたらどうするのですか」
「そっか…皆、妊娠中は何しているの?」

 ソアリスは今回は年齢のために、行動は制限されることになっている。

「そうですね、散歩はとてもいいです。後は本など読まれたり、刺繍をしたり、編み物をしたり…」

 ロペス医師は言いながら、絶対ソアリスがやらないであろうことしか言えずに、どんどん尻蕾になっていった。

「本は必要がある時だけよ、どうせ眠くなるし。刺繍は…血液スタンプありになってしまうの。編み物はしたこともないわ。細かい作業は文字を書くのが限界よ」
「では、やはり本を書かれたらいかがですか」
「柄じゃないわ」
「そうですか…王妃陛下の話を聞きたい方も多いと思いますよ。おそらくクロンデール王国の王族の方では、最高齢出産になると思います」

 43歳で妊娠・出産した人もいるだろうが、王族ではまずいない。

「歴史書に書かれるのね…」
「私はそのような場に立ち会うことが出来て、嬉しく思っております」
「そう?それならいいか」

 子どもたちも心配で毎日顔を見にやって来るようになり、それはいいのだが、ルルエとお腹の大きなエクシアーヌまでやって来るようになってしまった。

「んもう、二人は無理に来なくていいわよ」
「いえ、来たくて来ております」
「私もです。散歩ですから」
「ならいいけども」

 結局、一番元気そうなのはソアリスである。エクシアーヌに大丈夫かと、すぐに駆け寄る有様である。皆、王妃陛下こそと言いたいところである。

「大変失礼ですが、お義母様を当たり前だとは思ってはなりませんね」
「…はい」

 毎日訪ねているが、いつもと何も変わらない様子に驚くばかりである。

「結局、悪阻はなかったのですのよね?」
「何か気持ちが悪い日もあったような気もするけど…寝たら治まったんだと思うわ」

 ルルエもエクシアーヌも覚えてもいないということは、大したことがないということで、だからこそ6人も出産しているのだと思った。

「でも、カイルスの時は酷かったのよ」
「そうだったのですね」
「そうなの、後は少しあったくらいで、カイルスの時は年齢だと思っていたけど、違ったみたいね。じいさまにそっくりだったから、異物だったのかしら?」

 じいさんやら、じいさまやら、呼べるのはソアリスだけだろう。アンセムも今や当たり前に受け入れている。

「今でも食べたくないけど、食べなきゃいけないから、トマトを啜りながら、吐く日々を思い出すわ。忌々しくって」

 その日々が塵も積もって、今は亡き祖父・アロークへの暴言へ繋がるのである。

「眠れない日などは…」
「ないわね!私、陣痛の時以外、眠れなかったことはないわ」

 すぐ寝るソアリスがベットにいるのに、眠れなかったのは陣痛の時だけなので、よく覚えているのである。
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