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捕獲
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「王妃陛下にもそうです。お声を掛けられましたか?」
「い、いえ…ですが、私がルルエ王太子妃殿下と話をしていたからで」
「ですから、ルルエ王太子妃殿下から声を掛けられていないでしょう?話していたというのは、通りません」
話をしている最中にソアリスが割り込んだように思えるが、そもそも最初の前提が成り立っていない。
「ですが、ルルエ王太子妃殿下とは知り合いで…」
「知り合いというよりは、顔見知りというだけではありませんか」
「そんなことはありません」
「もう結構よ。オードエル公爵を呼んで頂戴」
「承知しました」
キャロラインはオードエル公爵を呼びに行き、ソアリスとミーチュアだけが残された。ソアリスは沈黙も全く苦ではないが、ミーチュアはそうではなかった。
「王妃陛下、本当にルルエ王太子妃殿下とは知り合いで」
「まだ私に話し掛けるなんて…オードエル公爵家はどうなっているの?」
ミーチュアはドレスを裾を掴んで、下を向くしかなかった。そして、キャロラインに連れて来られたサリエスト・オードエル公爵と、夫人であるファーリン。
「オードエル公爵、引き取って頂戴」
「ミーチュア!何かあったのでしょうか」
ファーリンはミーチュアの元へ駆け寄った。
「説明を求める?」
「は、はい」
「キャロライン、部屋を」
「ご用意してございます」
キャロラインは部屋に案内し、ソアリスにユリウスとルルエを、マイノスとエクシアーヌにチェンジして、後で来るように伝えるように頼まれて、部屋を出た。
「オードエル公爵家の教育はどうなっている?誰が指導している?」
「妻と、教師が…何があったのでしょうか」
「まずルルエに知り合いだと言い張って、一方的に話し掛ける、いえ、貶めたと言った方が正しいわね」
「本当に知り合いで」
「まだ私に話し掛けるのね…」
「っあ」
ソアリスが現時点で声を掛けたのは、オードエル公爵だけである。
「知り合いって便利な言葉よね、友人だとは言えないから、知り合い。でも実際は顔を知っているだけの顔見知りなのに、知り合いと使う…そもそも王太子妃に知り合いってよく言えるわよね…頭に何が入っているの?」
「そんな言い方をしなくてもいいではありませんか!」
声を上げたのはファーリン、元は伯爵令嬢で、ソアリスよりも四つ年上である。
「私、あなたに声を掛けたかしら?親子ねえ…同じだもの」
「っく」
「オードエル公爵、これが私が見たものよ」
「ですが、王妃陛下は、私の妻とはそれこそ顔見知りではありませんか」
本当は知り合いだと言いたかったが、仕える状況ではないゆえに、顔見知りと使ったことが間違いであった。
「そんなことを言ったら、私はほとんどの者と顔見知りになってしまいますわよ、面白くもない、おかしいこと仰るわね」
「え?ファーリン、そう言っていたよな?」
「ええ、王妃陛下とは、ララシャ様を通じて、何度か…」
ソアリスはララシャの知り合いに興味はなく、服がはち切れそうだとか、余程インパクトのある者でないと覚えていない。
沈黙もいくらでも耐えられるソアリスは、ファーリンの顔をじっと見つめたまま、黙り込んだ。オードエル公爵側は、とんでもなく長い時間に思えている。
「あの、王妃陛下」
だが全く思い出すことは出来ず、関係もないので、まあいいかとあっさり諦めた。
「お嬢さんもね、ルルエにも私にも、声を掛けられていないのに、勝手に話をして来るの。貶めて、遮ってまでね、公爵家ともなれば手本となるべき存在でしょう?違うかしら?」
「それはそうだと思いますが…」
扉が叩く音がし、ソアリスがどうぞと返事をすると、キャロラインがユリウスとルルエを連れて入室した。ソアリスは優雅に立ち上がって、ルルエの側に行き、耳元で何かを言い、ルルエが頷くと席に戻った。
「い、いえ…ですが、私がルルエ王太子妃殿下と話をしていたからで」
「ですから、ルルエ王太子妃殿下から声を掛けられていないでしょう?話していたというのは、通りません」
話をしている最中にソアリスが割り込んだように思えるが、そもそも最初の前提が成り立っていない。
「ですが、ルルエ王太子妃殿下とは知り合いで…」
「知り合いというよりは、顔見知りというだけではありませんか」
「そんなことはありません」
「もう結構よ。オードエル公爵を呼んで頂戴」
「承知しました」
キャロラインはオードエル公爵を呼びに行き、ソアリスとミーチュアだけが残された。ソアリスは沈黙も全く苦ではないが、ミーチュアはそうではなかった。
「王妃陛下、本当にルルエ王太子妃殿下とは知り合いで」
「まだ私に話し掛けるなんて…オードエル公爵家はどうなっているの?」
ミーチュアはドレスを裾を掴んで、下を向くしかなかった。そして、キャロラインに連れて来られたサリエスト・オードエル公爵と、夫人であるファーリン。
「オードエル公爵、引き取って頂戴」
「ミーチュア!何かあったのでしょうか」
ファーリンはミーチュアの元へ駆け寄った。
「説明を求める?」
「は、はい」
「キャロライン、部屋を」
「ご用意してございます」
キャロラインは部屋に案内し、ソアリスにユリウスとルルエを、マイノスとエクシアーヌにチェンジして、後で来るように伝えるように頼まれて、部屋を出た。
「オードエル公爵家の教育はどうなっている?誰が指導している?」
「妻と、教師が…何があったのでしょうか」
「まずルルエに知り合いだと言い張って、一方的に話し掛ける、いえ、貶めたと言った方が正しいわね」
「本当に知り合いで」
「まだ私に話し掛けるのね…」
「っあ」
ソアリスが現時点で声を掛けたのは、オードエル公爵だけである。
「知り合いって便利な言葉よね、友人だとは言えないから、知り合い。でも実際は顔を知っているだけの顔見知りなのに、知り合いと使う…そもそも王太子妃に知り合いってよく言えるわよね…頭に何が入っているの?」
「そんな言い方をしなくてもいいではありませんか!」
声を上げたのはファーリン、元は伯爵令嬢で、ソアリスよりも四つ年上である。
「私、あなたに声を掛けたかしら?親子ねえ…同じだもの」
「っく」
「オードエル公爵、これが私が見たものよ」
「ですが、王妃陛下は、私の妻とはそれこそ顔見知りではありませんか」
本当は知り合いだと言いたかったが、仕える状況ではないゆえに、顔見知りと使ったことが間違いであった。
「そんなことを言ったら、私はほとんどの者と顔見知りになってしまいますわよ、面白くもない、おかしいこと仰るわね」
「え?ファーリン、そう言っていたよな?」
「ええ、王妃陛下とは、ララシャ様を通じて、何度か…」
ソアリスはララシャの知り合いに興味はなく、服がはち切れそうだとか、余程インパクトのある者でないと覚えていない。
沈黙もいくらでも耐えられるソアリスは、ファーリンの顔をじっと見つめたまま、黙り込んだ。オードエル公爵側は、とんでもなく長い時間に思えている。
「あの、王妃陛下」
だが全く思い出すことは出来ず、関係もないので、まあいいかとあっさり諦めた。
「お嬢さんもね、ルルエにも私にも、声を掛けられていないのに、勝手に話をして来るの。貶めて、遮ってまでね、公爵家ともなれば手本となるべき存在でしょう?違うかしら?」
「それはそうだと思いますが…」
扉が叩く音がし、ソアリスがどうぞと返事をすると、キャロラインがユリウスとルルエを連れて入室した。ソアリスは優雅に立ち上がって、ルルエの側に行き、耳元で何かを言い、ルルエが頷くと席に戻った。
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