私のバラ色ではない人生

野村にれ

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逡巡

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「子どもが出来ないからって、離縁する?」
「しません」
「じゃあ、二人に問題はないじゃない。ルルエにもそう話せばいいわ」

 ユリウスの本来の目的は母からルルエに焦らなくていいと話して貰えば、気持ちが違うのではないかと考えたからだ。

「私は子どものことに口を出す気はないの」
「え?」
「口の悪い姑が子どものことを言うのは、恐怖でしょう?しかも、私が何を言っても、お前は6人も産んでって思うでしょう?」
「そんなことは」
「答えなくてもいいわ、これは理屈じゃないの」

 お金で買えたり、売っている物ならいいが、子どもはどうしても、持っている方は持てない方の気持ちを理解することはない。そして、持っている方は苦労がないわけではないが、妬まれる身だと思うようにしている。

「で、エクシアーヌが先に妊娠したらと思っているのでしょう?」
「…はい、そう考えることも嫌だと」
「うーん、こればかりは難しい問題ね」

 さすがのソアリスも、ナイーブな話には躊躇する。

「母上が焦らなくてもいいと言えば、気持ちも違うのではないかと思うのですが」
「私よりトエル侯爵夫人に話して貰った方がいいんじゃないの?」

 トエル侯爵夫人は、ルルエの母である。

「穏やかに導いてくださるのではなくて?」
「義母上には既に相談しているようです」
「私が慰めても嘘くさくて、気味が悪いでしょう?」

 自己評価が酷過ぎるが、確かに抱きしめてはくれるが、それは母のぬくもりというよりは、強者の弱者へ優しさのような、穏やかなものではないとは感じていた。

「それは確かに、否定は出来ないような…」
「そうでしょう?心構えという部分では、私に言えるのは、どう蹴散らすかくらいよ?でもルルエはそんな質ではないでしょう?」
「はい…」
「陛下には?」
「まだ話していません」
「言って来る奴がいるということは、側妃などと言う声が上がっているかもしれないな。おそらく、ユリウスやルルエや私には届かないようにしている。よし、突撃して口を割らそう!奥歯をガタガタ言わせてやろうぞ!」
「え?」

 侍女も護衛も背筋を伸ばしていないで、止めようという者はいないのか。

「ルルエにも聞かせた方がいいかもしれぬな、二人の気持ちは二人で話せばいいが、知らないのは気分が悪いのではないか?ポーリア、どう思う?」
「はい、聞きたいと思うのではないでしょうか」
「よし、一緒に行こう!ユリウス、呼んで来なさい」
「ですが」
「私より陛下の方がいいだろう?」

 ソアリスは口の悪い姑を必要以上に、煙たい存在だと思っている。

「父上は忙しいのでは?」
「いや、今日は書類仕事のはずだ。カイルスが言っていた」
「カイルスが?」

 きちんと互いの公務を把握しているのだなと思ったが、違った。

「お父様は、今日は書類に埋もれていたので、邪魔されませんと」

 さすがカイルスは相変わらずブレることを知らない。追いかけ回す時間を教育に充てられているのだが、ちゃんとしないとお母様に嫌われると、きちんと行っているが、おそらく合間に母のの顔を見にやって来たのだろう。

「たのもー!!」

 いくら王妃と王太子夫妻と言えども、国王陛下の執務室に入る言葉ではないが、きちんと側近に確認を取って、待った上で入室している。

 ルルエにも側妃は娶る気はないし、子どもについては私は焦る必要はないと思っているが、母上に相談したら父上に話を聞こうと、ルルエも直接聞いた方がいいだろうと話して、了承して連れて来た。

「相談があるということだったが、どうした?」
「ユリウス殿下にぃ、側妃のお話なんてあるのですかぁ?」
「何だ、その喋り方は?」
「私の想像上の鼻クソ妃の喋り方ですけど、何か?」

 側妃も要らないが、鼻クソ妃など絶対に要らない。
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