私のバラ色ではない人生

野村にれ

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完敗

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「母上、少しお時間、よろしいですか」
「どうしたの?ママが恋しいの?チューチューは、させないわよ?」
「違いますってば!」

 変態辱めカリキュラムの誤解を、まだ使われているユリウスである。

「ルルエのことなんですけど」
「母様で役に立つかしら?」

 ソアリスとルルエは互いに好意的であるが、エクシアーヌのように、尊敬しているとまでは至っていない。

「子どものことで…」
「何か言われたの?どこのどいつだ!」

 ソアリスは立ち上がって、腕まくりをしている。侍女と護衛も付いて参りますと言わんばかりに、背筋を伸ばすんじゃない。

「何か言って来る奴はね、頭の中で首を絞めてあげて、泡を吹かせるのよ!」
「そんな考えを…」
「当たり前じゃない!グズグズに腐り落ちてしまえ!乳首がミミズのように伸びてしまえ!とかね」
「っひ」

 そんなこと思わせるまで、一体どこのどいつが言ったのだと、ユリウスも思ってしまった。

 ユリウスとルルエは結婚して二年、子どもはいなかった。一年目は気にもしていなかった、二年目はそろそろと互いに思ってはいた、そして三年目になり、マイノスも結婚して、ルルエはエクシアーヌが先に妊娠したらと思う様になっていた。

「とりあえず、落ち着いて、話を聞いてください」

 ソアリスは静かに座った。

「確かにまだかという人はいるそうですが…」
「聞き流せる質ではないのかしら?」
「初めは微笑んでいたのですが、最近は気にしているようで」
「ん?そもそもさ、ユリウスのせいかもしれないのにね?」
「え?」
「だって、そうでしょう?」
「もしかして、私に問題があるのでしょうか?」

 ユリウスもルルエも医師から問題ないと言われて、結婚している。

「さあ?」
「え?」

 ソアリスが言い出したのに、投げ捨てる様は相変わらずであるが、内容が内容だけにユリウスもさすがに茶化すような母ではないのにと思っていた。

 ならば、実は問題は私にあったのか、それならば先に言って欲しかった。結婚などしない方が、良かったのではないかとすら考えた。

「ユリウス、今どう思った?」
「私のせいなら、ルルエに悪いと思いました。結婚すべきではなかったのではないかとも」
「よく分かってんじゃない、ルルエもそう思っているのよ!それなのに、ユリウスはルルエだけが悩んでいるかのように言ったでしょう?お前は高みの見物か?」
「…いえ」
「何様だ?王太子様か?ああ?」
「申し訳ありません…」

 母に口で勝てると思ったことはないが、完敗である。

 確かに私は全く気にせずに、ルルエが気が病まないようにとばかり考えていたが、ルルエだけの問題ではない。

「そもそもね、子どもが欲しいという気持ちがあって、授からないというのは人が口出し出来ることでは、本来ないはずなの。でも王家ですからね、私が6人も産まされたように、多い方が良いとされているけど、私6人も産んでいるのよ?」
「え?」
「だから感謝して欲しいの」
「え?」
「子どもが一人しかいないのならば、側妃なんて考えもあるけど、産みたい気持ちを尊重しながらも、生まれなくても、誰かの子を後継としてもいいし、カイルスを後継にしてもいいじゃない?生まれても、もしかしたら、とんでもないことを仕出かす可能性だってあるじゃない?」
「は、い」

 私も考えなかったわけではない、生まれなくても、生まれても、後継に相応しくない場合だってある。カイルスもなりたいかは分からないが、カイルスに王太子になって貰う選択肢も考えていた。

「あ!まさか、側妃が欲しいから、そんな風に言っているの?」
「違います!要りません!」

 ユリウスはまたあわあわと否定することになってしまっているが、そんなつもりで話に来たわけではない。
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