私のバラ色ではない人生

野村にれ

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現実

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「そんな言い方をしなくてもいいじゃない!」
「もし王太子の娘だったら許されなかったはずだよ?」

 次期王弟の娘・エミアンローズだから、勉強が進んでいないことも許容されているのであって、これが王太子の娘であれば無理矢理にでも行われていただろう。

 ルイスは妙な行動を起こしてはいたが、管轄外という部分で、子どもたちは全員、王族の教育はきちんと受けている。

「自由にさせて貰っているのはそういうことなんだよ?ララシャもそうだろう?」
「でもエミアンを気に入ってくれる人がいたら」
「そうだね、それでもいいと言ってくれる人がいたら、その人が王族だったら、王家にも嫁げるかもしれない。でも今の状況で、他国に打診はさせては貰えないよ」

 ララシャは生まれた時から婚約者が決まっていたので、リベルからアプローチを受けるまで、婚約を申し込まれることを経験したことがなかった。

 だからこそ、婚約者のいないエミアンローズには、沢山の申し込みが来るはずだと信じていた。

 それならば、きちんとした王族の教育を受けさせるべきだったのだが、甘やかされて育てられたエミアンローズは我儘を言えば叶えてくれる、泣けば庇ってくれると分かっているので、教育は進まない。

 リベルのせいでもあるが、ララシャも同じ方向を向かないと意味がない。

「待っているしかないというの…」
「エミアンローズはまだ12歳なんだから、これからちゃんと授業を受けるように言えば、打診することも出来ると思うよ」
「あの子に厳しくしろって言うの…」
「困るのはエミアンなんだよ?相手が見付からない、嫁いでも役に立たないなんて言われたら嫌だろう?」
「そんなの嫌よ!」

 私の娘がそんな風に言われるなんて耐えられない。

 それでなくてもエミアンローズと同じ年のソアリスの娘が、次期王太子殿下と婚約しただけでも苛立つのに、婚約者が見付からないなんてことはあってはならない。

「だったら、きちんと受けさせて、素敵なレディにしてあげた方がいいだろう?」
「そうね…私も頑張るわ」

 ララシャは泣き付いても、しっかり受けるように言うようにはなかったが、当のエミアンローズは真面目に受ける気がない。

 それもそのはず、ララシャはこれまでずっとエミアンローズは頑張っていると認め、無理強いをすることはなかった。だからこそ今さらママはどうしたのだろう、授業なんて意味がないと思っている。

「エミアン、ちゃんと授業を受けなくては駄目だと言ったでしょう?」

 今日も落ち着きがなく、授業に身が入っていないと注意を受けた。

「どうして最近、そんなこと言うの?」
「エミアンも、もうすぐ13歳でしょう?素敵な女性になって欲しいの」
「どうして?今でもエミアンは世界で一番可愛いのでしょう?」
「勿論よ。でもね、王族の教育をきちんと受けないと、婚約して欲しいと言われても、お受けできないかもしれないの」
「でもママ、エミアンには素敵な婚約者が出来るんでしょう?」

 ララシャはいずれ素敵な婚約者が出来る、あなたはお姫様だから、どんな相手でも気に入ってくれると常々言っていた。どんな相手でも王族なのだから、厳しい教育はしなくても大丈夫だろうと思っていた。

 だが、王族だからこそ、きちんとしなければ、嫁がせることが出来ないなんて思わなかった。両陛下や王太子殿下から許可を得なければならなくなったら、リベルに頼んでも、どうにもならないかもしれない。

 ララシャもミフルが婚約していなかったら、婚約の申し込みはまだかと思っていただろうが、ララシャにも現実が少し見えた。
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