私のバラ色ではない人生

処遇２

「どうしますか。入学案内にもありますが、学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反していると判断しました」
「はい、女学校にと思っております」

　両親は令息がいることで浮ついているのだと、女学校に行かせることにしていた。

「お父様、待って」
「なんだ？もう話しただろう…」
「でも別クラスなら残れるんですよね？戻ることも出来るんじゃないかと思って」

　ベリーナは女学校には行きたくない、同じ学園内なら別クラスでもいいと思っていたが、両親は納得しなかった。だからこそ戻ることが出来るとなれば、両親は考え直してくれるのではないかと考えた。

「授業も真面目に受けなかったのに、ですか？それとも、わざと真面目に受けなかったのですか？」
「…あ、えっ、あの」
「あなたは変わらなかったから、このようなことになっているのです。本人に注意、その後ご家族にも注意、試験、授業と、私たちは導いたはずです」
「女学校に行かせます」
「承知しました、手続きを行いましょう」

　諦めきれないベリーナは声を上げた。

「でもここは学ぶ場所でしょう？出来ていないからって、どうして出て行かなきゃならないんですか！これからはちゃんとします、それでいいじゃないですか」
「ではなぜ注意を聞かなかったのですか」
「…それは」

　婚約者持ちの高位貴族令息と結婚したいから、注意を聞いていては、何もアピールが出来ないからなどと、馬鹿正直には言えない。

「それは？」
「自分のペースで学んでいけばいいと言ってくれた人がいて」
「教師がですか？」
「っいえ、侯爵家の方です。だから」
「侯爵家？侯爵家ですか…」
「そうです！いつも庇ってくれて、だから私のペースでいいんだと思って」

　勝手に名前を出していいのか分からなかったが、なりふり構っていられないベリーナは話し始めてしまった。

「確認を取りましょう、どちらの侯爵家ですか」
「オイエン侯爵家のミリンティー様です」
「分かりました」
「確認が取れたら、なかったことになりますか？」
「いいえ、侯爵家に事実確認をして、事実であればこちらで対応します」
「え？でも侯爵家ですよ？」
「だから何ですか？ここは学園ですから、間違ったことは正さなくてはなりません」
「ベリーナ！黙りなさい！侯爵家の方に迷惑を掛けるわけにはいきません、すぐに手続きをしてください」

　ソチヌ男爵は事実であっても、オイエン侯爵家に目を付けられるわけにはいかないと、慌てた。まさかベリーナが侯爵家の方と関りがあるなどと思ってもいなかったが、事態は不味い方向に進んでいることに気が付いたのだ。

「分かりました」
「待って、待ってよ」

　結局、ベリーナの意見は通らずに、女学校への転校が決まった。後の三人も一人は女学校に、二人はベリーナと同様にどうしても転校したくない、いずれ戻ることが出来るのではないかと考えて、別クラスになった。

　ベリーナは女学校にいかにも訳ありという形で転入したために、遠巻きにされることになり、もう一人の令嬢も己の態度に後悔しており、いくら同時に転入しても、元々仲が良かったわけでもなく、今さらベリーナと親しくする気もなかった。

　別クラスになった二人は完全に校舎も分けられて、授業は受けられるが、二人だけのために授業を行う時間はないので、通常クラスで行われている授業を映し出して、学ぶという手法になった。

　他のクラスに参加するようなこともなく、二人ぼっちのような状態になって、ようやく己の行いを後悔し、チャンスをくださいと願い出たが、既に基礎である礼儀とマナーの授業は終了している。

　個人で学び、次年度に一緒に受けるしかないと言われ、新入生と一緒に受けるなんて耐えられないと、二人も結局女学校に転校することにした。