私のバラ色ではない人生

処遇１

　学園長とベリーナ・ソチヌ男爵令嬢の担任教師はベリーナを呼び出した。

「礼儀とマナーの成果が見られませんので、別のクラスか、女学校への転校をお勧めします。ご両親と共にお話しましょう」
「っな、どうしてですか！そんなの横暴です！」
「令息達から不愉快だという不満が多く出ています。授業を受けても改善されないのは問題ですよ」
「そんなの一部でしょう？」

　一部の生徒に言われたからと、転校までさせようなんて酷過ぎる。

「公爵家、侯爵家、伯爵家ですね」
「だから一部でしょう？」
「ええ、貴族の一部である公爵家、侯爵家、伯爵家です」
「全員ですか？」
「そうです」

　ベリーナは驚いた顔をして、あなたは高位貴族から総スカンを食らっていると伝えたつもりだったが、伝わっていなかったらしい。

「婚約者のいない、あなたには分からないかもしれませんが、婚約者以外にむやみに触れられる令息たちは不愉快に感じているのですよ？」
「喜んでいる方だって」
「喜ぶなど、身を売る女性たちの常套句を学生のあなたが使うなんて…信じられないことです」
「っ」

　担任教師は残念ですと言わんばかりである。

　ベリーナ以外にも真面目に受けずにいた中で、抗議があった者に関しても同様に通告されて、ようやく焦り始めた。対象は四人となった。

　真面目に受けず、身に付いていないが、ベリーナのように風紀を乱す行動をしていない生徒は保留とされた。

　判断は苦情を受け止めていた学園長と、授業を担当したシェリーと、担任教師で話し合った。黙って見ていただけではない、注意をして、家にも通達を行った。

　その上で授業を受けても変わらないというのは退学に該当するため、別クラスか転校を勧めるのは、優しい対応である。

「王妃陛下の見学は大変効果がありました。あの後は特に熱心に取り組むようになり、何人かは改善もされて、いい刺激になりました」
「そうですか！」
「はい、ですが変わらぬ子は変わりませんね。カイルス殿下が美しい挨拶をされたことで、お相手は王族ですが、自分たちが５歳にも劣ると周りに見られていることも気付いていないようでした」
「それは…周りの目も感じないのでしょう」
「どうしても王妃陛下は出来て当たり前だという判断をされますから、さすがの機転でござました」

　ベリーナは両親にもちゃんとしなさいと言われており、呼ばれる前にどうにかしないといけないと、ミリンティーに縋り付くしないと思った。

「ミリンティー様、大変なんです」
「どうされたの？」
「学園長に別クラスか、転校を勧められて」
「まあ」

　ミリンティーは頬に片手を当てて、親身になっているような態度ではない。

「助けてください！お願いします」
「でも別クラスなら、この学園に居られるのでしょう？」
「え？でも今のクラスには居られないのは…」
「学園長に言われたのなら、私にはどうにもならないわ」
「ええ…でもいつも庇ってくれたじゃないですか」

　邸に呼んで貰ったり、休みの日に会ったりするような間柄ではないが、会えば話をしたり、注意されている時も、そんなにうるさく言わなくてもいいじゃない、自分のペースで学んでいけばいいと言ってくれていた。ミリンティーがそう言うと、皆が黙るしかなく、気分が良かった。だから味方だと思っていた。

「学園長の決定なのでしょう？」
「そうです…」
「それは難しいわよ」
「そんな…」
「お力になれなくて、ごめんなさいね」

　ベリーナは肩を落とすしかなく、学園に両親を呼ばれることになり、既に事情を説明されて、どうしてきちんとしなかったのかと怒られた後である。

「「申し訳ありませんでした」」

　両親であるソチヌ男爵夫妻はすぐさま頭を下げた。学園長は両親はまともだったのに、なぜ娘はこうなってしまったのかと思うしかなかった。