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変わり種5
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「カイルス、ここが学園よ」
「がくえん」
「マイノスとアリルが通っている学校」
「おかあさまもかよったの?」
「そうよ、カイルスも通うかもしれないわね」
「おそろいね」
侍女と護衛はいるが、手を繋いで、カイルスは幸せそうに歩いている。
ソアリスの目的は本日行われているシェリーの授業と、学園長への面会である。
現在、授業中であり、ソアリスは途中で、新しい授業の見学ということで入ることになっている。教師に案内されて入る前に教室の様子を確認すると、何人か真面目に受けていない者が見受けられた。
ソアリスとカイルス、侍女に護衛が入ると、さすがにザワザワしたが、シェリーには伝えてあるため、シェリーの注意で皆、前を向いた。
皆、前を向いて座学を受けていた。ソアリスは静かにその様子を見ていたが、シェリーはある提案をした。
「二度とこのような機会もないかもしれませんので、王妃陛下、お手伝いいただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます。王妃陛下への挨拶を見せます」
シェリーはソアリスの前に立ち、皆が注目をした。いつか挨拶することがあるかもしれない、そう思ったのだろう。
「先生、カイルスに代わってもいいかしら?」
「承知しました」
カイルスは皆の視線がこちらに向いたので、驚いてはいたが、見られることには慣れている。
「カイルス、こちらのトリラス先生に素敵なご挨拶してくれますか」
「はい、おかあさま」
カイルスはまだ短い手足だが、右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出した。
「カイルス・グレンバレンでございます」
カイルスも既に教育を始めているため、5歳でもきちんと挨拶が出来る。しかもこの前、レイドラにもお墨付きを貰っている。
シェリーも右膝を曲げ、左の脚を後ろに引いてお辞儀をした。
「シェリー・トリラスでございます」
両陛下に向けてするものではあるが、臣下である貴族が王族に敬意を表す場合も有効である。
「二人とも大変、素晴らしいです。やはり美しい挨拶は見ていて、こちらも背筋が伸びますわね。トリラス先生、お邪魔してごめんなさいね。素晴らしい授業でした」
「恐れ入ります」
「では、注意力散漫になってはいけませんので、この辺りで失礼します。皆様もありがとうございました」
生徒たちは頭を下げている者もいたが、どうしていいか分からなかった。ソアリスは再びカイルスと手を繋いで、教室を後にし、シェリーはドアが閉まるまで、頭を下げて見送った。
シェリーは見学に来る連絡を受けていたが、本物の王族にこれが礼儀だと見せ付け、カイルスに代わったことも、ソアリスの思惑をきちんと理解している。
ソアリスが学園長を訪ねると、リズと同様に揉み手だった。
「授業はいかがでしたか?」
「素晴らしかったです。さすがレイドラ様の推薦ですわね」
「はい、ありがとうございます」
「ただ真面目に受けていない者も見受けられましたね、私がいる間は聞いている振りをしているようでしたが」
「別クラスか、女学校を勧めようかと思っております。あちらの学園長にも異性がいると浮つく者もいると、理解を示してくれております」
カイルスはメディナからジュースを貰って、機嫌良くしている。
「分かりました、よろしくお願いいたします」
「はい、責任を持って、きちんと対応させていただきます。アリル王女殿下にも、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」
「いいえ、私の時代もおりましたもの。ねえ、サートス先生?」
「はい、王妃陛下」
校長と共にいたのは、ソアリスの担任教師であったリリー・サートス。子爵家の次男と結婚して、子どもを産んでからも、教師を続けている働く女性である。
「がくえん」
「マイノスとアリルが通っている学校」
「おかあさまもかよったの?」
「そうよ、カイルスも通うかもしれないわね」
「おそろいね」
侍女と護衛はいるが、手を繋いで、カイルスは幸せそうに歩いている。
ソアリスの目的は本日行われているシェリーの授業と、学園長への面会である。
現在、授業中であり、ソアリスは途中で、新しい授業の見学ということで入ることになっている。教師に案内されて入る前に教室の様子を確認すると、何人か真面目に受けていない者が見受けられた。
ソアリスとカイルス、侍女に護衛が入ると、さすがにザワザワしたが、シェリーには伝えてあるため、シェリーの注意で皆、前を向いた。
皆、前を向いて座学を受けていた。ソアリスは静かにその様子を見ていたが、シェリーはある提案をした。
「二度とこのような機会もないかもしれませんので、王妃陛下、お手伝いいただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「ありがとうございます。王妃陛下への挨拶を見せます」
シェリーはソアリスの前に立ち、皆が注目をした。いつか挨拶することがあるかもしれない、そう思ったのだろう。
「先生、カイルスに代わってもいいかしら?」
「承知しました」
カイルスは皆の視線がこちらに向いたので、驚いてはいたが、見られることには慣れている。
「カイルス、こちらのトリラス先生に素敵なご挨拶してくれますか」
「はい、おかあさま」
カイルスはまだ短い手足だが、右足を引き、右手を体に添え、左手を横方向へ水平に差し出した。
「カイルス・グレンバレンでございます」
カイルスも既に教育を始めているため、5歳でもきちんと挨拶が出来る。しかもこの前、レイドラにもお墨付きを貰っている。
シェリーも右膝を曲げ、左の脚を後ろに引いてお辞儀をした。
「シェリー・トリラスでございます」
両陛下に向けてするものではあるが、臣下である貴族が王族に敬意を表す場合も有効である。
「二人とも大変、素晴らしいです。やはり美しい挨拶は見ていて、こちらも背筋が伸びますわね。トリラス先生、お邪魔してごめんなさいね。素晴らしい授業でした」
「恐れ入ります」
「では、注意力散漫になってはいけませんので、この辺りで失礼します。皆様もありがとうございました」
生徒たちは頭を下げている者もいたが、どうしていいか分からなかった。ソアリスは再びカイルスと手を繋いで、教室を後にし、シェリーはドアが閉まるまで、頭を下げて見送った。
シェリーは見学に来る連絡を受けていたが、本物の王族にこれが礼儀だと見せ付け、カイルスに代わったことも、ソアリスの思惑をきちんと理解している。
ソアリスが学園長を訪ねると、リズと同様に揉み手だった。
「授業はいかがでしたか?」
「素晴らしかったです。さすがレイドラ様の推薦ですわね」
「はい、ありがとうございます」
「ただ真面目に受けていない者も見受けられましたね、私がいる間は聞いている振りをしているようでしたが」
「別クラスか、女学校を勧めようかと思っております。あちらの学園長にも異性がいると浮つく者もいると、理解を示してくれております」
カイルスはメディナからジュースを貰って、機嫌良くしている。
「分かりました、よろしくお願いいたします」
「はい、責任を持って、きちんと対応させていただきます。アリル王女殿下にも、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」
「いいえ、私の時代もおりましたもの。ねえ、サートス先生?」
「はい、王妃陛下」
校長と共にいたのは、ソアリスの担任教師であったリリー・サートス。子爵家の次男と結婚して、子どもを産んでからも、教師を続けている働く女性である。
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