私のバラ色ではない人生

野村にれ

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変わり種4

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 ソアリスの本性を知った母・レイドラは最初の内は、私が矯正しなくてはと思っていたが、ソアリスは表向きは指導するのは、もう少しこうした方がキレイに見える、背筋が良く見えるという程度だと気付いた。

 教師が付いていたそうだが、ソアリスは早く終わらせた方が木登りが出来るからと、所作もマナーも申し分ない。ただ普段は異常に口が悪いだけで、メリハリが大事なのだと気付かされたそうだ。

 リズは予定なく訪れたロアンスラー公爵家で、ソアリスの頬が腫れていて、母・マルシャに叩かれていることに気付いた。

「どうしたの?それ、もしかして叩かれたの?」
「樽よ、いえ母よ。言わないでね」
「でも、どうして…」
「気に入らないと手を上げるの。殴り返してもいいけど、力がまだ足りないから」
「許されないわ」
「私も許すことはないわ、いずれどんな形でも倍にして仕返しをするわ」

 レイドラにも母娘の仲が悪いとは伝えていたが、叩かれていることは黙っていた。伝えていたら、レイドラは黙っていられなかっただろう。

 そして、ソアリスは殴り返すことは一度もなかったが、得意の悪い口で仕返しを現在も行っている。

 姉・ララシャが別の相手に嫁ぐことになって、王太子妃になることになりそうだと聞いた時、さすがにソアリスは向いていないだろうと思った。

 常に視線のある王族はソアリスには耐えられない。

 当のソアリスも自覚があるので、絶対嫌だ、絶対無理だと喚いていたが、レイドラだけはソアリスがなるのはいいかもしれないと賛成していた。

「でも耐えられるとは思えません」
「無理する必要はない。ソアリスらしくあればいい、きっとソアリスも猫を被り続けるのは無理でしょう?でもね、きっと賛同する者もいるはず」
「そうですか?」
「ソアリスって一度好きになると、離れられないでしょう?他に替えがきかないのよ。あなたもそうでしょう?ソアリスに会った日は、ソアリスの話ばかり」
「それは、そうですけど」

 そして、母の勘は当たった。

 結婚した頃は無気力で、心ここに非ずな時もあったが、ソアリスはソアリスらしく、王妃にまでなった。

 ルーファがアリル王女殿下と婚約したいと言い出した時は、ソアリスと本当に家族になれるかもしれないと、心が躍った。

 そして、婚約が決まって、レイドラに話すと、歩く礼儀作法が、嬉しさと驚きで飛び跳ねそうになっていた。

「素晴らしいご縁じゃない!これで正真正銘、幼なじみで、友人で、家族にもなって、あなたどれだけソアリスが好きなのよ」
「自分でもそう思うわ」
「でもおかげで私も家族ね、これからはどんどん割り込むわよ」
「まあ」

 今回の件もどうしてもっと早く言わないのかと怒られてから、任せなさい、家族なんだからと、すぐさま動いてくれた。やはり母には一生敵わないと思った。

 指導は自分ではなく、適任がいると、ある夫人を連れて来た。

 シェリー・トリラス次期公爵夫人。

 トリラス公爵家嫡男に嫁ぎ、五年前に娘、二年前に息子を産み、週の短時間ならばと、公爵家も快く引き受けてくれた。

 シェリーは伯爵令嬢で、教師になりたかったが、公爵家に嫁ぐことになり、公爵家からの希望でレイドラが礼儀とマナーの指導を務めた。その後、レイドラを師と仰ぎ、今回の講師を任されることになった。

 爵位も高く、生徒とも年齢も近く、生の声が聞くことが出来る。

 そして学園で礼儀とマナーの授業が始まった。シェリーはこういった時に恥を掻く、不適切だと取られると、日常的なことから始めた。

 だが、ベリーナは変わらなかった。同時にミリンティーも頑張っているんだからと、同じような生徒もベリーナが怒られないんだからと、変わらなかった。

 そろそろ、最終決定を出してもいい段階に入っていた。

 いよいよ動き出したのはソアリス。お供はなぜかカイルスである。
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