私のバラ色ではない人生

野村にれ

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変わり種3

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「ちなみに母上は何と返したのですか?」
「どうして、友人でもないあなたのクソほど面白くない話を、私が聞かなきゃいけないんだ?言ってみろとか」
「ブレませんね」
「あの手の女の話はクソほど面白くない。どうにかして、自分が可愛いと、求められているという話に持って行き、優越感に浸りたいのだよ、気色悪いだろう?」

 ポーリアもキャロラインも、今までで一番激しく頷いている。

「ポーリア、キャロライン、穏便な方法は何がある?」
「そうですね、学園側に再度、礼儀とマナーの時間を取らせるか」
「はい、試験を行うなどでしょうか」
「いいわね、試験を受けさせて、講習を受けさせるか。そうなった場合は、リズのお母様に頼もうかしら」
「ミッドラー前侯爵夫人ですか!」

 声を上げたのはポーリア。

 レイドラ・ミッドラー前侯爵夫人といえば、歩く礼儀作法と呼ばれ、非常に厳しく、迫力のある婦人である。「あなた」と呼ばれただけで体が縮こまり、ポーリアとキャロラインも、親世代も震え上がる存在である。

「ええ、リズを助手に付ければ最強よ?」
「母上、そのような方の邸で木に登ったり、ソファで寝ていたんですか?」
「そうですけど?」

 ポーリアとキャロラインも驚愕の表情を浮かべている。

「私もレイドラ様に教えて貰ったのよ」

 マイノスとポーリアとキャロラインは、確かにキレのあるソアリスの美しい所作に妙に納得がいった。

 そして、学園側には王妃からではなく、被害を被っている保護者からの要望という形で、礼儀とマナー試験を受けさせることになった。

 侍女たちは学園に子どもが通っていないので、リズと、同様に被害を被っていたアーラック侯爵家の夫人、トルカが代表となって行った。

 バーセム公爵家にお茶がてら、様子を聞きに行ったソアリスと、今日の侍女はメディナ。勿論、メディナも事情を聞き、何ですってと怒り散らかし、私はアブラムシと呼んでおりましたと言い、こびりついていたのねと同情された。

「リズ、その後どう?」
「どうもこうもありませんわよ、分からない~覚えられない~だそうですわ。ソアリスの言葉を借りるなら、脳味噌ねえのか、ですわね」
「私の言葉まで…流石ね」
「何年一緒にいると思っているのよ」

 ソアリスとリズは学園時代の友人でもあるが、6歳の時に知り合い、付き合いは30年以上になる。

 公爵令嬢できっと清楚な女の子だと思ったら、全く違ったが、口は悪いが、性格が似ており、すぐに仲良くなった。

「ごもっとも」
「お母様とも話したのだけど…彼女のクラスに礼儀とマナーの時間を作って、それでも身に付かない場合は個別指導にするか、最悪は退学ね」
「他にもいるの?」
「あそこまで酷い子はいないのだけど、平民もいるクラスだから、誰でも学んでおいて損はないでしょう?保護者にも理解いただいているの」

 子どもはともかく、礼儀とマナーが学べるのならば、有難いという保護者が多い。

「商家でも接客業でも身に付けている方がいいわよね」
「だから、学園長と相談して組み込もうってことになって、一年生の時にしておかないと、どうにもならなくなるじゃない?」
「そうね、レイドラ様様ね」
「学園長の奥様が、震え上がったみたいで、揉み手で聞いてくださったわ」

 母が先に文を出したおかげで、いかがしましたか、私たちも困っていたのですと、真摯に聞いてくれた。

「流石だわ、今度お礼をしなくっちゃ」
「母を怖がらないのはソアリスくらいよ、最初からそうだったものね」
「だって、おば様はうちの樽と違って、理不尽じゃないもの。ちゃんと基づいて怒ってくれるでしょう?」

 リズもソアリスが母・マルシャを樽と呼んでいることを知っており、当たり前に受け入れている。

「私はそれでも昔は怖かったわ、でも今となっては心強い味方ね」
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