私のバラ色ではない人生

野村にれ

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講習2

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「男性の場合はないのですか?」
「そうですね、女性同士なら後ろ手に縛って、踏み付けて、ドレスを捲り上げてしまえば、終わりなんだけど…抵抗するなら、肩の関節でも外せばいいし」

 さも当たり前だと言わんばかりに、さらりと言ってのけた。

「男性は何を言われるか分からないから、触るのはご法度です。ですので、男性の場合は臭いと言えばいいんじゃない?」
「へ?」
「例えば、胸を押し付けられたり、腕を取られたりしたら、臭い物でも思い出して、気分の悪い顔をして、臭いから離れてくれないかって言えばいいのよ」
「それだけで?」

 たかが、そんなことで解決するのだろうか。

「体臭なんだろうが、すまいないが、耐えられないと、口元を押さえて、えずいたら完璧ね!余程の女性でない限りは去って行くでしょう」
「心殺しだわ…」
「確かにそんなことを言われたら、アピールする気力はなくなるわね」
「しかも、王子に言われたなんて知られたら、絶望的でしょう?あの子、王子に臭いって言われたらしいわ。物凄く臭かったんでしょうね、お風呂が嫌いなのかしら、いや体臭なのかもしれないわって、臭い娘の出来上がりよ」
「少し可哀想な気もするが…」

 程度にもよるが、少し可哀想な気がして口にしたのが間違いだった。

「何言っているの、ねえ、メディナ!あの阿呆阿保娘、あっぱらパールですら臭くて死ぬかと思ったわよね」
「はい、まだ恨んでおります」

 以前、ユリウスに会いに王宮にやって来た、今は姿も見ない令嬢のことである。

「ほら~!」
「ですが、臭くない令嬢に言うのは…という意味で」
「では、大便漏らしてない?って言うのは?」
「もっと酷くなってます」

 臭いより酷い、完全に何が理由で臭くなっているではないか。

「それなら、鼻毛が出ているよ?ならどうかしら?」
「それがいいかもしれませんね、戸惑うでしょうから」

 理解を示したのはアリルである、エクルとミフルもいいかもと頷いている。

「戸惑っている内に去るか。それでも挑んで来るようなら、後ろ手で縛って、転がして、人を呼びなさい」

 アンセムは臭いやら大便やら鼻毛も気にはなっているが、先程から縛ると言っているのが、丁度いい縛る物が側にあるとは限らないのではないか?と思った。

「待ってくれ、縛る物がない場合はどうするんだ?」
「持っているでしょう?」
「「「「「はい」」」」」
「持っているのか?」
「はい、持ってますけど?」

 子どもたちが各々、組紐を取り出して見せ、心底不思議そうな顔をして、アンセムを見ている。

「ソアリスが持たせたのか?」
「そうですけど?」
「お父様、持っていないの?」
「縛るのにいるでしょう?」

 今さら知る事実にアンセムは驚きを隠しきれず、オーランとクイオを見たが、首を大きく横に振っている。

「後ろ手で結ぶも良し、転がして足を結ぶも良し、軽くて邪魔にはなりませんから、護身術を習わせてから持たせておりますよ」

 ソアリスは常識でしょうと言わんばかりであるが、それはソアリスの常識である。

 護衛もいるので、出番はないが、髪を縛ったりも出来るので、持っていて無駄にならないない逸品だと、ソアリスは思っている。

 子どもたちも何の疑いもなく、持っており、アンセムの言葉の方が信じられないほどである。

「そうだな…」
「陛下も欲しいならあげますわ」
「ありがとう」

 ソアリスはパンパンと手を叩いた。

「では最後に、お胸は勝手に見ない、触らない、揉みしだかない!はい!」

 流石に皆、口に出すのは憚られ、気まずそうにしている。

「まあ、本当にしたわけではありませんから、いいでしょう。これで終わりです。まだご希望の際はいつでも呼んでくださいね」

 颯爽と去って行ったソアリスたちを、静かに見送った。

「とんでもない講習だったが、多少は為になったな」

 男性陣はこくこくと頷き、女性陣は満足そうである。
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