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偏見
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「まあ、あの子なりに多少の努力はしたのかもしれないけど、周りが上手くやってくれているんでしょう?」
「立ち振る舞いやマナーもか?」
捲し立てられた時も、言葉は酷かったが、無音で聞いていれば、まるで優雅に話をしているような様だった。
「横で誰かに教えてもらえばいいことじゃない」
そんな付け焼刃で王妃が務まるはずがない。きっとララシャは努力した後のソアリス王妃を知らないから、昔のままだと思っているのだろう。
「あの子は元々ガサツで口が悪いから、本来はあんな場所にいる子じゃないのよ?私の妹だったから、王太子様の婚約者になっただけなんだから」
確かにリベルがララシャを見初めなければ、ララシャはアンセムと結婚していただろう。ソアリス王妃には婚約者がいなかったと聞いていた。
口が悪いことは流石に知っていたようだ、知らない振りをして聞くことにした。
「口が悪いのか?」
「そうよ、下品な言葉使いをして、気を引こうとするの。凄く幼稚でしょう?」
あれは気を引きたいという雰囲気ではなく、抑え込まれたものが噴出したようだったが、アンセム陛下もアリル王女も口振りに驚いていなかったということは、分かっているということである。
そもそも、言っていいと言ったのはアンセム陛下だ。
「結婚相手は考えられていたのか?」
「いないわよ、なかなか見付からなかったんじゃない?」
結婚したい相手がいたわけではなさそうではあったが、姉が王太子の婚約者であることから、王家に嫁ぐことは絶対にないと思って生きていたのだろう。
アンセム陛下には悪いという気持ちは以前はあったが、ソアリス王妃と上手くやっていることから、もういいだろうという気持ちになっていた。
だからソアリス王妃の気持ちなど考えたこともなかった、王太子妃になれるなどラッキーではないかとすら思っていたが、全く違ったようだ。
「王家には嫁ぎたくなかったと」
「そう言っていたわ。相応しくないから、逃げる気でいるようなことを。構って欲しくて言って来るのよ」
「逃げる?」
「全部捨てて逃げようなんて言っていたの。絶対しないくせに。本当に幼稚で困っちゃうわ」
アンセム陛下も驚いてはいなかった。聞かされていたと言うことだろう。
「だが、王太子妃教育を終えたからこそ、結婚して、王妃にもなれているんじゃないか?」
「適当に誤魔化したに決まっているじゃない!きっと、お母様が上手くやったのよ」
「いや、それはないだろう。義母上でどうにかなる話じゃないよ」
母国でなければ、フォロー出来ないからと、表に出ることが許可されないララシャには言われたくはないだろう。
「いいえ、あの子には無理よ。アンセム陛下が、よく側妃を娶らなかったものだと思ったもの。それか、6人も子どもを産んだおかげじゃない?」
確かに子どもが6人もいれば、側妃など必要はないだろうが、それだけであるはずがない。外交先でも、ソアリス王妃の評判は聞くこともある。
「子どもを産ませて、あまり外に出さないようにしていたんだと思うわ。妊娠中なら誰も文句を言わないじゃない」
ララシャと違って、ソアリス王妃は妊娠中も公務を行っていた。文句を言わせないようにしていたのは、ララシャの方である。
何も知らないとはいえ、さすがに偏見が過ぎるが、会うこともないだろうから、言うことは控えよう。
こんなことで機嫌を悪くさせても、喧嘩をしても仕方ない。
「まあ、いずれ分かることよ。婚約だって間違えていたと、後悔するだけだわ。謝りに来ないのは癪だけど」
ソアリス王妃がララシャに謝ることは一生ないことだけは分かる。
「それよりも、エミアンに縁談は来ていないの?さすがにまだ早いかしら?」
「立ち振る舞いやマナーもか?」
捲し立てられた時も、言葉は酷かったが、無音で聞いていれば、まるで優雅に話をしているような様だった。
「横で誰かに教えてもらえばいいことじゃない」
そんな付け焼刃で王妃が務まるはずがない。きっとララシャは努力した後のソアリス王妃を知らないから、昔のままだと思っているのだろう。
「あの子は元々ガサツで口が悪いから、本来はあんな場所にいる子じゃないのよ?私の妹だったから、王太子様の婚約者になっただけなんだから」
確かにリベルがララシャを見初めなければ、ララシャはアンセムと結婚していただろう。ソアリス王妃には婚約者がいなかったと聞いていた。
口が悪いことは流石に知っていたようだ、知らない振りをして聞くことにした。
「口が悪いのか?」
「そうよ、下品な言葉使いをして、気を引こうとするの。凄く幼稚でしょう?」
あれは気を引きたいという雰囲気ではなく、抑え込まれたものが噴出したようだったが、アンセム陛下もアリル王女も口振りに驚いていなかったということは、分かっているということである。
そもそも、言っていいと言ったのはアンセム陛下だ。
「結婚相手は考えられていたのか?」
「いないわよ、なかなか見付からなかったんじゃない?」
結婚したい相手がいたわけではなさそうではあったが、姉が王太子の婚約者であることから、王家に嫁ぐことは絶対にないと思って生きていたのだろう。
アンセム陛下には悪いという気持ちは以前はあったが、ソアリス王妃と上手くやっていることから、もういいだろうという気持ちになっていた。
だからソアリス王妃の気持ちなど考えたこともなかった、王太子妃になれるなどラッキーではないかとすら思っていたが、全く違ったようだ。
「王家には嫁ぎたくなかったと」
「そう言っていたわ。相応しくないから、逃げる気でいるようなことを。構って欲しくて言って来るのよ」
「逃げる?」
「全部捨てて逃げようなんて言っていたの。絶対しないくせに。本当に幼稚で困っちゃうわ」
アンセム陛下も驚いてはいなかった。聞かされていたと言うことだろう。
「だが、王太子妃教育を終えたからこそ、結婚して、王妃にもなれているんじゃないか?」
「適当に誤魔化したに決まっているじゃない!きっと、お母様が上手くやったのよ」
「いや、それはないだろう。義母上でどうにかなる話じゃないよ」
母国でなければ、フォロー出来ないからと、表に出ることが許可されないララシャには言われたくはないだろう。
「いいえ、あの子には無理よ。アンセム陛下が、よく側妃を娶らなかったものだと思ったもの。それか、6人も子どもを産んだおかげじゃない?」
確かに子どもが6人もいれば、側妃など必要はないだろうが、それだけであるはずがない。外交先でも、ソアリス王妃の評判は聞くこともある。
「子どもを産ませて、あまり外に出さないようにしていたんだと思うわ。妊娠中なら誰も文句を言わないじゃない」
ララシャと違って、ソアリス王妃は妊娠中も公務を行っていた。文句を言わせないようにしていたのは、ララシャの方である。
何も知らないとはいえ、さすがに偏見が過ぎるが、会うこともないだろうから、言うことは控えよう。
こんなことで機嫌を悪くさせても、喧嘩をしても仕方ない。
「まあ、いずれ分かることよ。婚約だって間違えていたと、後悔するだけだわ。謝りに来ないのは癪だけど」
ソアリス王妃がララシャに謝ることは一生ないことだけは分かる。
「それよりも、エミアンに縁談は来ていないの?さすがにまだ早いかしら?」
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