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団欒1
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「お母様、流石でしたわ」
アンセム、ソアリス、アリルとアンセムの護衛だけになった応接室。
「久しぶりに人にぶつけたら、気持ち良かったわ~今日はよく眠れます」
「いつも寝ているじゃない」
鬱憤を晴らさなくても、毎日よく寝ていることを皆、知っている。
「まさか婚約を申し込んで来るなんて、ビックリしました」
「ああ、私も何を言っているのか理解出来なかった」
「嫌な予感がすると言ったでしょう!あれは誘拐王なのですから!」
アンセムはまさか婚約の話だとは思わず、また何かララシャのことだろうくらいにしか思っていなかった。
「でも私のためにお母様が鞭を持って、追い掛けてやると言った時には感動すらしましたわ。で、鞭は持っているのですか?」
「ええ、大臣が良い鞭がありますよって教えてくださって」
「誰だ!」
「エルムート伯爵です」
「…何という」
絶対、ユリウスとマイノスの間で流行った時だと思った。あの虫も殺さずに、逃がしてやりそうなエルム―ト伯爵が、まさかそんな趣味を持っていたとは。
「買ったのですか?」
「ええ、扱いやすい物と、傷付けやすい物を一本ずつ。ちゃんと自分のお金で買いましたわよ。でもいつか機会がないかと、練習はしておりますの。大臣にも筋がいいと言われましてね、ストレス発散にもなります。ほほほ」
私室のワードロープの中に、しっかりと鞭が収納されているので、侍女もメイドも知っている。
「まさか、木馬か?」
「ええ、子どもたちが乗らなくなったので丁度いいかと」
私室になぜか子ども部屋から木馬を移動し、人払いをして、罵声とバチンバチンと弾く音がしていたが、まさか鞭だったとは。しかもカイルスはその木馬に、嬉しそうに乗って遊んでいたというのに。
「お父様が叩かれていなくて良かったですわ」
「当たり前だ!」
「お母様も苦労したんですね、暴力なんて最低ですわ」
「お義母上のことは、私も知らなかった」
「そうだったのですか」
アリルは初耳だったが、アンセムはさすがに知っているのだと思っていた。
「告げ口したら、脅せなくなるでしょう?」
「脅していたのか?」
さらりと脅すと言っているが、冗談ではないことも分かっている。
「ええ、陛下に言ってもいいの?子どもたちに言っちゃおうかしら、なんて言えば黙りますからね。叩かれた分、仕返しをしておりますのよ」
ソアリスが実家に帰らないので、公式の場でしか会ったことのない祖父母。アリルは確かに気の強そうな祖母だとは思っていた。
「気付かなくて、すまなかった」
「そうね、陛下と最初の顔合わせの時も、頬に叩かれた痕があったのよ。樽が必死こいて隠すように言ったのよ、自分がやった癖に」
「何だと…」
あの日は、かなり不機嫌そうだった。まさかそんな状態だったとは…文句を言っていた自分を恥じた。
「言ってくれれば良かったのに」
「それで酷くなったらどうします?告げ口しただろう?って、また叩かれたら?」
「それは…」
「家庭内のことは見えないからこそ、慎重に動くべきなのですよ。私の場合は怒りが抑えられず、樽をボコボコにしそうだったので、大人しくしていたんですけど。私は発散することが出来ただけ、やられっぱなしの人だっているんですよ」
ソアリスは同級生や夫人仲間に頼んで、あまり参加しないような方も茶会に誘い出して、子どもや夫人の様子を見て貰っている。
「力を入れているのは自分のことがあったからだったんだな」
「ええ、そうですけど?」
「辛くはないんだな?」
「だから鍛えているのではありませんか、身体を鍛えれば自信が付きますから」
「そうか…」
「あとは嫌がらせです。自分が手を上げていた娘が、家庭内暴力防止に力を入れていたら、勘繰られたり、後ろ暗さを感じるでしょう?ふふふふふ」
ソアリスは企み顔であるが、アンセムとアリルは辛さをバネにしているようにしか見えず、悪い口も自分を守るために編み出したのではないかと思った。
アンセム、ソアリス、アリルとアンセムの護衛だけになった応接室。
「久しぶりに人にぶつけたら、気持ち良かったわ~今日はよく眠れます」
「いつも寝ているじゃない」
鬱憤を晴らさなくても、毎日よく寝ていることを皆、知っている。
「まさか婚約を申し込んで来るなんて、ビックリしました」
「ああ、私も何を言っているのか理解出来なかった」
「嫌な予感がすると言ったでしょう!あれは誘拐王なのですから!」
アンセムはまさか婚約の話だとは思わず、また何かララシャのことだろうくらいにしか思っていなかった。
「でも私のためにお母様が鞭を持って、追い掛けてやると言った時には感動すらしましたわ。で、鞭は持っているのですか?」
「ええ、大臣が良い鞭がありますよって教えてくださって」
「誰だ!」
「エルムート伯爵です」
「…何という」
絶対、ユリウスとマイノスの間で流行った時だと思った。あの虫も殺さずに、逃がしてやりそうなエルム―ト伯爵が、まさかそんな趣味を持っていたとは。
「買ったのですか?」
「ええ、扱いやすい物と、傷付けやすい物を一本ずつ。ちゃんと自分のお金で買いましたわよ。でもいつか機会がないかと、練習はしておりますの。大臣にも筋がいいと言われましてね、ストレス発散にもなります。ほほほ」
私室のワードロープの中に、しっかりと鞭が収納されているので、侍女もメイドも知っている。
「まさか、木馬か?」
「ええ、子どもたちが乗らなくなったので丁度いいかと」
私室になぜか子ども部屋から木馬を移動し、人払いをして、罵声とバチンバチンと弾く音がしていたが、まさか鞭だったとは。しかもカイルスはその木馬に、嬉しそうに乗って遊んでいたというのに。
「お父様が叩かれていなくて良かったですわ」
「当たり前だ!」
「お母様も苦労したんですね、暴力なんて最低ですわ」
「お義母上のことは、私も知らなかった」
「そうだったのですか」
アリルは初耳だったが、アンセムはさすがに知っているのだと思っていた。
「告げ口したら、脅せなくなるでしょう?」
「脅していたのか?」
さらりと脅すと言っているが、冗談ではないことも分かっている。
「ええ、陛下に言ってもいいの?子どもたちに言っちゃおうかしら、なんて言えば黙りますからね。叩かれた分、仕返しをしておりますのよ」
ソアリスが実家に帰らないので、公式の場でしか会ったことのない祖父母。アリルは確かに気の強そうな祖母だとは思っていた。
「気付かなくて、すまなかった」
「そうね、陛下と最初の顔合わせの時も、頬に叩かれた痕があったのよ。樽が必死こいて隠すように言ったのよ、自分がやった癖に」
「何だと…」
あの日は、かなり不機嫌そうだった。まさかそんな状態だったとは…文句を言っていた自分を恥じた。
「言ってくれれば良かったのに」
「それで酷くなったらどうします?告げ口しただろう?って、また叩かれたら?」
「それは…」
「家庭内のことは見えないからこそ、慎重に動くべきなのですよ。私の場合は怒りが抑えられず、樽をボコボコにしそうだったので、大人しくしていたんですけど。私は発散することが出来ただけ、やられっぱなしの人だっているんですよ」
ソアリスは同級生や夫人仲間に頼んで、あまり参加しないような方も茶会に誘い出して、子どもや夫人の様子を見て貰っている。
「力を入れているのは自分のことがあったからだったんだな」
「ええ、そうですけど?」
「辛くはないんだな?」
「だから鍛えているのではありませんか、身体を鍛えれば自信が付きますから」
「そうか…」
「あとは嫌がらせです。自分が手を上げていた娘が、家庭内暴力防止に力を入れていたら、勘繰られたり、後ろ暗さを感じるでしょう?ふふふふふ」
ソアリスは企み顔であるが、アンセムとアリルは辛さをバネにしているようにしか見えず、悪い口も自分を守るために編み出したのではないかと思った。
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