私のバラ色ではない人生

野村にれ

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無作法な縁談1

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 アリルと、アリルに連れられた若干不愉快さを滲ませたソアリスと、引っ付いているカイルスまでやって来た。道連れとはこういうことをいうのだろう。

「アリル王女、久しいな。何と美しく成長されたな。私はそなたの母上の姉の夫で、リベルだ」
「アリル・グレンバレンでございます」

 アリルはみごとなカテーシーを見せ、ソアリスとソアリスに抱かれたカイルスも礼をした。

「ソアリス王妃も、結婚式以来だな、良き結婚式であった。そちらは末っ子の王子だね。初めまして」
「ソアリスおうひのむすこのカイルスでございます」

 最近はソアリス王妃の息子と自己紹介することに、誇りを持っている。

「アンセム陛下にそっくりだな」
「ええ、顔だけですが」

 アンセムと顔立ちが似ているのはマイノスとエクル。

 そして色味も同じで、群を抜いて似ているのがカイルスであるが、おかげで性格はソアリスに全振りしていることを理解している。

 アリルはアンセムの横に座り、ソアリスとカイルスは少し離れた椅子に座った。

「幼き頃にも会ったことがあるのだが、覚えているだろうか?」
「申し訳ございませんが、さすがに記憶にありません」
「いいや、無理もない。我が家も娘が生まれて、こちらにもなかなか来ることがなかったからな。それでアリル王女、ルイスがそなたとの婚約を望んでおる」
「お断りいたします」

 「早っ」という声がソアリスから漏れていたが、皆、聞かなかったことにした。そして、カイルスがソアリスに抱かれながら、訊ね始めた。

 「おかあさま、こんやくってなに?」
 「結婚をする約束よ」
 「じゃあ、おかあさまとかいるすも、しなくてはいけませんね」

 突然、離れた椅子でプロポーズが始まっている。

 「お母様とカイルスは親子ですから、約束はしなくても、一緒ですよ」
 「まあ、そうなの?とてもうれしい、かんげきよ」
 「それはよかったわ」

 カイルスはソアリスだけを見つめて、頬をほんのりピンク色に染め、両手で頬を挟んで、幸せそうにしている。

 「ありるねえさまがこんやくするの?まって、おかあさま。るーふぁさまは?ありるねえさまから、けっこんするおあいてだときいたわよ」

 カイルスでもアリルの結婚する相手が、ルーファ・バーセムだと認知している。

 「ルーファ様はアリルの婚約者よ。お約束している相手」
 「じゃあ、ふたりとこんやくするの?」

 勝手にアリルは二人を手玉に取っているような状態にされてしまっている。

 「しませんよ、アリルの婚約者はルーファ様です」
 「よかった、るーふぁさまも、りふぁらさまも、りずもこーしゃくもいいひとよ」
 「お菓子をくれるからでしょう?」
 「とってもおいしいのよ」

 バーセム公爵家にカイルスもよくソアリスにくっ付いて行っている。すっかりアイドルと化したカイルスに、ミオトもリズもルーファも、とても優しい。リファラはルーファの妹で、同様である。

 リズに至ってはソアリスがリズと呼ぶので、カイルスも真似ていたが、さすがにリズ夫人と呼ぶように言ったが、リズが呼び捨てにされる度に、なくした気持ちが沸き立つと言い、そのまま呼ばせている。

 カイルスの口調はソアリスでもあるが、よく一緒にいたので、ミランの口調を真似ている節もある。

 カイルスの言葉に、流石にリベルも婚約者のことを口にした。

「婚約者がいるというのは聞いているが、ルイスとアリル王女の婚約は、お互いの国のためでもあるんだ」
「そんなことはない、幼き頃に断っている」
「でも悪い話ではないでしょう」
「それならば既にララシャ妃が、嫁いでいるのだからいいではありませんか」
「そうだーそうだー」

 話が再開されると、静かになったソアリスとカイルスだったが、カイルスの援護射撃が飛び出し始めた。

 不味い、ソアリスがあのカオスな肩車の時の様に、カイルスに言わせようとしていると、冷や汗を掻いているのはアンセムとアリル。こちらに後ろめたいことはないが、ソアリスが暴走しないかが問題である。
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