64 / 348
帰国
しおりを挟む
翌日、シシリーヌ王女は迎えが来て、帰って行った。
何か言いたそうではあったが、昨夜、ソアリスの言ったように夜這い未遂があったのだ。シシリーヌは艶めかしいとまでは言えないナイトドレス姿で、マイノスの部屋の前までやって来たが、警備が立っていた。
「シシリーヌ・ゾルワンよ。ちょっとだけ殿下とお話をしたいのだけど」
「もう眠ってらっしゃいます」
「少しだけだから」
「言伝でしたら、私が承ります」
騎士はシシリーヌの前に立ち塞がった。
「どうしても今日中に、私の口からお話しておきたいの。私はゾル王国の第一王女です、分かりますわよね?」
「はい。未婚の王女殿下を婚約者のいる殿下の部屋に、このような時間にお通しすることは出来ません」
「っな」
「陛下、もしくは王妃陛下をお呼びすることになりますが」
「いえ、もう結構よ」
対応したのは女性騎士。念のため男女の騎士を配置していた。これが男性騎士だけだったら、体に触られたなどと言い出して、脅したたかもしれない。
渋々帰ったシシリーヌは、これからの道のりは厳しいものになるだろう。
平常に戻ったクロンデール王国。マイノスはようやくエクシアーヌとの時間を取り、二人は婚約者の時間を楽しんだ。
ソアリスもいつもの素振りと走り込みと、木登り、ミニログハウスで昼寝生活を満喫し、その日の夕食。
「人気者夜這い王女が帰ったことを祝して、カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「ソアリス!」
アンセムが怒っても、可愛い腰巾着がソアリスと同じように、グラスを持って既に賛同してしまっている。
「申し訳ございませんでした!」
マイノスの部屋に入り込もうとしたシシリーヌに、エクシアーヌはさすがにしないだろうと思っていたので、卒倒しそうになった。
「ですが、私も祝杯を挙げたい気持ちでございます」
「ほれ」
ソアリスはアンセムをどうだと言わんばかりに見下ろしている。
「では…乾杯!」
「カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「「「「「乾杯」」」」」
ソアリスはくうぅと言いながら、ワインを一気に飲みし、カイルスも真似しようとしているが、さすがに一気は難しそうだ。
「カイルス、無理するな」「そうだぞ」
「むう」
そんな姿を見ていたエクシアーヌは、しみじみと語り出した。
「本当に素晴らしいご家族で、羨ましいです。近年、こんなに食事中が楽しかったことはございません」
「苦労されているのですね…」
「何がきっかけで姉の機嫌が悪くなるか分かりませんから、極力会話は控えるのです。後は勝手に話していることを聞くくらいで…」
「我々も別の意味で苦労はしているがな…」
目線は肉をひょいひょいと優雅にペロリと平らげて、お代わりを要求しているソアリスに向く。体力作りに余念のないソアリスはよく食べる。
「おかあさま、わたしのきって」
「やーよ、自分で切りなさい」
シシリーヌが帰ったので、至れり尽くせりは終了している。
「どうしてよ、おかあさまがきってくれたら、とってもおいしくなるのよ」
「嘘おっしゃい!誰が切っても変わらないわ」
「ちょんな~!」
追加の肉が届き、ソアリスが一口サイズに切ると、カイルスにあ~んと言い、いいの?という顔をして、満面の笑みで口を開いた。
「おいしい!!」
「後は自分で切って食べなさい」
「あい!」
完全に飴と鞭である。いや、餌付けだろうか。
エクシアーヌは五日間の滞在予定だったが、シシリーヌに取られた時間と、ゾル王国でのシシリーヌの対応もあるので、七日間滞在することに変更された。
そして、ゾル王国に帰国したシシリーヌは両親と対峙していた。
何か言いたそうではあったが、昨夜、ソアリスの言ったように夜這い未遂があったのだ。シシリーヌは艶めかしいとまでは言えないナイトドレス姿で、マイノスの部屋の前までやって来たが、警備が立っていた。
「シシリーヌ・ゾルワンよ。ちょっとだけ殿下とお話をしたいのだけど」
「もう眠ってらっしゃいます」
「少しだけだから」
「言伝でしたら、私が承ります」
騎士はシシリーヌの前に立ち塞がった。
「どうしても今日中に、私の口からお話しておきたいの。私はゾル王国の第一王女です、分かりますわよね?」
「はい。未婚の王女殿下を婚約者のいる殿下の部屋に、このような時間にお通しすることは出来ません」
「っな」
「陛下、もしくは王妃陛下をお呼びすることになりますが」
「いえ、もう結構よ」
対応したのは女性騎士。念のため男女の騎士を配置していた。これが男性騎士だけだったら、体に触られたなどと言い出して、脅したたかもしれない。
渋々帰ったシシリーヌは、これからの道のりは厳しいものになるだろう。
平常に戻ったクロンデール王国。マイノスはようやくエクシアーヌとの時間を取り、二人は婚約者の時間を楽しんだ。
ソアリスもいつもの素振りと走り込みと、木登り、ミニログハウスで昼寝生活を満喫し、その日の夕食。
「人気者夜這い王女が帰ったことを祝して、カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「ソアリス!」
アンセムが怒っても、可愛い腰巾着がソアリスと同じように、グラスを持って既に賛同してしまっている。
「申し訳ございませんでした!」
マイノスの部屋に入り込もうとしたシシリーヌに、エクシアーヌはさすがにしないだろうと思っていたので、卒倒しそうになった。
「ですが、私も祝杯を挙げたい気持ちでございます」
「ほれ」
ソアリスはアンセムをどうだと言わんばかりに見下ろしている。
「では…乾杯!」
「カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「「「「「乾杯」」」」」
ソアリスはくうぅと言いながら、ワインを一気に飲みし、カイルスも真似しようとしているが、さすがに一気は難しそうだ。
「カイルス、無理するな」「そうだぞ」
「むう」
そんな姿を見ていたエクシアーヌは、しみじみと語り出した。
「本当に素晴らしいご家族で、羨ましいです。近年、こんなに食事中が楽しかったことはございません」
「苦労されているのですね…」
「何がきっかけで姉の機嫌が悪くなるか分かりませんから、極力会話は控えるのです。後は勝手に話していることを聞くくらいで…」
「我々も別の意味で苦労はしているがな…」
目線は肉をひょいひょいと優雅にペロリと平らげて、お代わりを要求しているソアリスに向く。体力作りに余念のないソアリスはよく食べる。
「おかあさま、わたしのきって」
「やーよ、自分で切りなさい」
シシリーヌが帰ったので、至れり尽くせりは終了している。
「どうしてよ、おかあさまがきってくれたら、とってもおいしくなるのよ」
「嘘おっしゃい!誰が切っても変わらないわ」
「ちょんな~!」
追加の肉が届き、ソアリスが一口サイズに切ると、カイルスにあ~んと言い、いいの?という顔をして、満面の笑みで口を開いた。
「おいしい!!」
「後は自分で切って食べなさい」
「あい!」
完全に飴と鞭である。いや、餌付けだろうか。
エクシアーヌは五日間の滞在予定だったが、シシリーヌに取られた時間と、ゾル王国でのシシリーヌの対応もあるので、七日間滞在することに変更された。
そして、ゾル王国に帰国したシシリーヌは両親と対峙していた。
4,249
お気に入りに追加
7,625
あなたにおすすめの小説
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
婚約者の断罪
玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。
見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。
しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。
親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
なにひとつ、まちがっていない。
いぬい たすく
恋愛
若くして王となるレジナルドは従妹でもある公爵令嬢エレノーラとの婚約を解消した。
それにかわる恋人との結婚に胸を躍らせる彼には見えなかった。
――なにもかもを間違えた。
そう後悔する自分の将来の姿が。
Q この世界の、この国の技術レベルってどのくらい?政治体制はどんな感じなの?
A 作者もそこまで考えていません。
どうぞ頭のネジを二三本緩めてからお読みください。
【完結】愛すればこそ奪う
つくも茄子
恋愛
侯爵家の次男アーサーが結婚寸前で駆け落ちした。
相手は、侯爵家の上級メイドであり、男爵令嬢であるアンヌだった。二人は幼馴染の初恋同士であり、秘密の恋人でもあった。家のために、成り上がりの平凡な令嬢との結婚を余儀なくされたアーサーであったが、愛する気持ちに嘘はつかない!と全てを捨てての愛の逃避行。
たどり着いた先は辺境の田舎町。
そこで平民として穏やかに愛する人と夫婦として暮らしていた。
数年前に娘のエミリーも生まれ、幸せに満ちていた。
そんなある日、王都の大学から連絡がくる。
アーサーの論文が認められ、講師として大学に招かれることになった。
数年ぶりに王都に戻るアーサー達一行。
王都の暮らしに落ち着いてきた頃に、アーサーに襲いかかった暴行事件!
通り魔の無差別事件として処理された。
だが、アーサーには何かかが引っかかる。
後日、犯人の名前を聞いたアーサーは、驚愕した! 自分を襲ったのが妻の妹!
そこから明らかになる、駆け落ち後の悲劇の数々。
愛し合う夫婦に、捨てたはずの過去が襲いかかってきた。
彼らは一体どのような決断をするのか!!!
一方、『傷物令嬢』となった子爵令嬢のヴィクトリアは美しく優しい夫の間に二人の子供にも恵まれ、幸せの絶頂にいた。
「小説家になろう」「カクヨム」にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる