私のバラ色ではない人生

野村にれ

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禍害2

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 今度はエクル第二王女が王宮内を案内し、夕食は両陛下、6人きょうだいと共に摂ることになった。その前にマイノスがやって来た。

「大変だったね」
「この度はご迷惑をおかけしまして、申し訳ありません」
「アリルも言ったと思うけど、シアのせいじゃない。ただ…母上の勘が当たっていないと良いなということだけだな」
「勘、ですか?」

 変わらずシアと呼んでくれる姿にホッとしたが、勘とは何だろうかと思った。

「ああ、アリルに聞いたと思うが、あんな母が義母となるのが、嫌だったら正直に言って欲しい。対策をする」
「アリル様も仰っていましたが、どういう意味なのでしょうか?」
「母上に起こっていないことだからと、口止めされているから言えないのだが、何があっても動揺せずに、平気な顔を張り付けて置いて欲しい」
「わ、分かりました」

 マイノスも力強く頷いて、去って行き、いくら婚約者とはいえ、他国の者に言うわけにはいかないのだろう。

 夕食は皆で朗らかに話をし、シシリーヌも上機嫌で、ソアリス王妃は末っ子の可愛らしいカイルス殿下に、ずっと話し掛けられ、口を拭ったり、怒ったり、忙しそうで、姉に話し掛けることもなかった。

 翌日はミフル第三王女が王宮の外を案内し、朝食や昼食は各々であったが、夕食をまた同じように摂ることになった。

「陛下、夕食の後で少しお時間を取って貰ってもよろしいですか」

 シシリーヌが急に言い出し、エクシアーヌは驚いてシシリーヌを見たが、シシリーヌはエクシアーヌを見ようとはしなかった。

 婚約者を紹介して欲しいとでもいうつもりなのだろうか、勝手に来て迷惑を掛けているのに、自覚がないのだろうか。

「構わないが、皆もいた方がいいか?」
「はい、出来ればその方がいいかと思います」
「では皆でお茶でも飲もうか」

 きょうだいは頷き、ソアリス王妃は関わる様子もなく、相変わらずカイルス殿下に、あーんをせがまれたり、野菜を食べるように言っていた。

 エクシアーヌはシシリーヌに問いただせないまま、応接室に集まったアンセム、ソアリス、ユリウス、マイノス、アリル、エクル。

 カイルスはお風呂に入れられているが、おそらく眠いのでそのまま眠るだろう。

「こちらに嫁ぐのは私の方がいいと思うのです」
「お姉様?」

 声を上げたが、動揺しているのはエクシアーヌだけであった。

「だって、私が第一王女なのよ?エクシアーヌはマイノス殿下とあまり交流がないようだし、私の方がいいと思ったの。分かるでしょう?」
「何を言っているの…」

 確かにクロンデール王国に来てから、マイノスと交流という交流はしていなかった。予定が狂ったのは誰のせいだと言いたかったが、今言うことではない。

 シシリーヌはユリウスと同い年なので、マイノスより一つ年上となる。

 年下は論外だと言っていたこともあったことから、まさかマイノス様を狙っているとは思わなかった。

「王女がエクシアーヌ王女に代わって、マイノスの婚約者になると言うのか?」
「ええ、陛下もその方が良いと思いませんか?」
「王女は両陛下が婚約者をお探しなのではありませんか?」
「それはエクシアーヌに譲ってあげようと思っているんですの。クロンデール王国も第一王女の方がお喜びになるでしょう?」

 何を勝手なことを言い出したのか、第二王女よりも第一王女の方が良いのかもしれないが、狙いは分かっている。マイノス様にパトリック様のような熱は感じない、好ましく思ったのかもしれないが、側妃になるのが嫌だからだろう。

 両親はまだシシリーヌには伝えていないと言っていたが、初婚でも後妻でもなく、側妃になる可能性が高い。

「側妃が嫌だから?」
「エクシアーヌは側妃でも構わないでしょう?私は愛し愛されたいの、知っているでしょう?マイノス殿下なら叶えてくれると思ったの」
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