私のバラ色ではない人生

野村にれ

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私意

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 学園を卒業したらすぐに結婚というクロンデール王国とは違い、ゾル王国では18歳で学園を卒業して、働いたり、相手の家で学んだりしながら、20歳くらいで結婚することが主流となっていきつつあった。

 シシリーヌは18歳で結婚したいと思っていたが、両陛下も関係性が変わらないかと思い、公爵家も何も言わないことから、先延ばしにしていた。

 押し付けてしまえという考えを持つ夫妻だったら、早めに結婚させていたかもしれないが、娘のことも公爵家のことも大事に思っていたからこそである。

 悲劇のヒロイン王女、シシリーヌは学園も休んで、ひとしきり、部屋に籠って可哀想な己を嘆いた。両陛下も王太子夫妻もエクシアーヌも、何を言われるか分からないので、会うことを控えた。

 その後、シシリーヌは行動を制限されてまではいないので、ダソール公爵家に勝手に押し掛けたが、領地にいるので、いつ行ってもパトリックは不在。

 手紙を渡したが、私のことは忘れて、愛する人とお幸せになられてくださいと返事が来て、きっとそう書くように言われたのだと思い、あなたが迎えに来るのを待っていると書こうとしていると陛下に呼ばれた。

「ダソール公爵令息に会いに行ったり、手紙を書くのは止めなさい!もうシシリーヌの婚約者ではない!」
「そう言わされているのでしょう?」

 シシリーヌの中で、パトリックはしたくないのに、婚約を白紙にしたということに勝手に変わっていた。

「いいや、望んで婚約は白紙になった」
「そんなはずないわ」
「愛を返せなかった男なのだろう?いつもそう言っていたではないか」

 シシリーヌは愛が足りないとよく話していた。

「離れてみたら、そうでもなかったかもしれないと思うようになりまして」
「随分、都合のいいことだな。皆、自分には相応しくないと言っているのかと思っていたそうだぞ?あれだけ非難しておいて、今さらなかったことになど出来るか!」

 パトリックを非難する姿は何度も見られていた、そう取られても仕方ないが、シシリーヌにとってはもっと愛して欲しいという意味だった。

「そんな…」
「もう覆ることはない、諦めなさい。白紙になっている以上、シシリーヌは何の関係もない、公爵令息に迷惑を掛けていることになる。責任が取れるのか?」
「責任…私は婚約は白紙にされたのですよ!」
「試し行動をしたのを忘れたのか!」
「思わせぶりな行動は慎む、婚約者のいる者、相手にはむやみに触れたりしない!そんな常識も知らぬとは言わせないわよ!」

 ずっと黙っていたマリエンヌもついに怒鳴った。

「それは…」

 己が勝手に始めた試し行動がきっかけであることを、すっかりシシリーヌはなかったことにしていた。

「あなたがすることは反省であって、相手を責めるなどあり得ません!シシリーヌは、自分の身の振り方を考えなさい!部屋に連れて行って頂戴」

 シシリーヌは結局、パトリックに謝ってもいない。待ってと言いながら、シシリーヌは部屋に戻された。

「都合のいい考えですわね」
「どうするかな…国内で婚約者が見付かるかも分からないが、見付かっても、その者が肩身の狭い思いをするだけだろう」

 シシリーヌとパトリックの婚約が解消になったことが伝わっても、シシリーヌへの縁談の話すらない。すぐにとなると外聞が悪いという可能性もあるが、そうではないというのが現実だろう。

 そもそも王女が降嫁するような家は既に婚約者がおり、後妻か、下位貴族となってしまう。条件を付けて、他国に嫁がせるしかないが、貰い手があるかどうか。

「シューストン、スディア、そしてエクシアーヌに迷惑を掛けるようになる前に手を打たなければ」
「そうだな、もっと早くに白紙にすべきだったか」
「いえ、パトリックには申し訳ないけど、おかげでエクシアーヌの婚約が出来たとも言えるわ」

 シシリーヌの婚約が白紙になった状態で、エクシアーヌの婚約は決められなかっただろう。
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