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ガーデンパーティー
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そして、いつものカイルス以外の子どもたちは集まって、今度はエクルの婚約を祝っていた。
「マイノスに続き、エクルもおめでとう」「「「おめでとう」」」
「ありがとう」
「ガーデンパーティーは途中で大変だったがな」
「あれはお母様のせいでしょう」
「何かあったの?」
ガーデンパーティーには参加していなかったミフルが訊ねた。
「鼻毛よ」
「また?」
ミフルは眉間に皺をよせ、呆れた声を出した。
令息から逃れて、ホッと一人になったエクルの側にソアリスがひょっこり現れた。口元を扇子で隠しているため、嫌な予感がしたが、もう遅かった。
「ねえ、口髭は丁寧に手入れしているのに、鼻毛が数本も出ているってどう思う?」
「っ!!!またですの」
またも見付けてしまったのかと、エクルは頭を抱えたくなった。話し方は丁寧なのだが、内容がおかしい。
「口髭に誤魔化されそうになったけど、鼻毛も完全に出ているのよ?手堅く3本は出てるの!ふんぬって、頑張ればもっと出るわ、あれは」
「ちょ、お母様」
救いを求めて、きょうだいたちを探すが、誰も近くにはいなかった。
「あれだけ口髭を丁寧に育てているのに、鼻毛を疎かにすることがあるかしら?まっ、まさか!」
ソアリスはこういった席で表情は崩さないが、少し驚いた目をした。
「何?」
「出やすい鼻毛から目を背けるトラップかしら?」
「は、はあ?」
「だってそうでしょう?まず立派なお髭ですねとなるでしょう?」
「そ、そうね」
「そこから、鼻毛出てますけどねとは言い辛いじゃない?」
「え?」
「言わせないためだったのか!!悔しい!みごとにトラップにハマってしまったわ、王妃としたことが情けない」
「いえ、注意してないわよね?」
「しないわよ、ただただ我慢して、鼻毛の本数を数えていたわ」
1本ではなければ、きっと数えるだろうなこの母はと思った。
「お母様…ほんと」
「鼻毛が伸びたら合体するのかしら?」
「はあ?」
何を言い出すのか、本当に分からない。しかも想像力も意外と豊かである。
「だって、伸びるんでしょう?」
「知らないわ」
「いつか僕も口髭になるんだって、思ってるかもしれないじゃない?」
「もう、ちょっと…」
「僕だって鼻毛に生まれたくなんてなかった、憧れの口髭~そーれ!合体だ!これでぼくも口髭だ!でも、おい!お前は鼻毛だろうって喧嘩になるかしら?」
「!!」
エクルは崩れ落ちそうになったが、ソアリスが素早く腕を持ち、あらあら疲れたのね、少し座りましょうなんて言って、椅子に案内する優しさ付きである。
さすがに気付いたきょうだいたちは、今日はエクルかと心の中でご愁傷様と深く頷いた。パーティーという緊張感の中で行われるソアリスの大好きな悪戯。皆、ちゃんと鼻毛の手入れくらいして来て欲しいと切実に思っている。
アリルが婚約者のルーファと駆け付けると、もう涙目で息も絶え絶えだった。ある意味、王妃砲に撃たれたのだ。
「今日も見付けたのね」
「…そうなの、口髭の方から、手堅く3本は出ていたそうなの。頑張ればもっと出るって、ふんぬとまで言っていたわ…」
「ふっ」
「口ひげは出やすい鼻毛から目を背けるトラップだって…ふふふっ」
「ぶぶっ!」
ルーファは耐えられず、吹き出してしまった。
「ルーファ、耐えて頂戴」
「分かってる、分かっているんだが。ああ、うちの母のところへ行ったようだ」
「あら、まずいわ。今日はエピソード付きなの」
「なんてことを」
「…ぶぶっ、エピソード付き」
ソアリスが何やら話している、そしてリズが視線を移した先には口髭の紳士がいる。アリルはあれが元凶かと恨みたくなった。
「ああ、おばさまが悶絶しているわ。本当にごめんなさいね」
「いや、いいんだ。覚悟はしていただろうから、あっ、背中を擦っているよ」
リズは真っ赤になって、口元を押さえている。この華やかなガーデンパーティーだからこそ、笑えなさが面白さを増す。
「飲み物を咽たんじゃないかしら、もうなんてことを」
「優しい王妃にしか見えないところがさすがだね」
リズ大丈夫?なんて労わる言葉が聞こえそうなほどである。
「自分が原因なのに。あっ、いつもの澄ました顔で戻ったわ。兄たちが聞いてるわね、結局聞かずにはいられないのよね。ほら、悶絶することになるのに」
「鼻毛も伸びるんでしょうって、もしかしたら鼻毛も口髭になりたいのかもしれないって」
「ぶぶっ」
「僕だって鼻毛に生まれたくなんてなかった、憧れの口髭~そーれ!合体だ!これでぼくも口髭だ!でも、おい!お前は鼻毛だろうって喧嘩になるかしら?って…」
「ぶぶぶっ!」
「擬人化までしたの!?ルーファ、修行が必要ね」
「はい…でも無理かもしれない」
ルーファはファンでもあるため、絶対に勝てる気がしなかった。
「エクル姉様、ご愁傷様でした」
話を聞いたミフルが、気持ちを込めて労った。
「今度居たら、また絶対見に行くわよ、あれは」
「トラップに引っ掛かるもんかと言い出しそうだな」
「でもお母様のおかげで、一気に肩の力が抜けたの。事前の顔合わせだったんでしょう?」
「そうなるな」
「母上にはエクルの疲れが見えたんだろうな」
「崩れ落ちたけどね」
微笑ましいとは言えないかもしれないが、仲良しきょうだいの憩いとは、真逆の面倒なことがゾル王国で起きていた。
「マイノスに続き、エクルもおめでとう」「「「おめでとう」」」
「ありがとう」
「ガーデンパーティーは途中で大変だったがな」
「あれはお母様のせいでしょう」
「何かあったの?」
ガーデンパーティーには参加していなかったミフルが訊ねた。
「鼻毛よ」
「また?」
ミフルは眉間に皺をよせ、呆れた声を出した。
令息から逃れて、ホッと一人になったエクルの側にソアリスがひょっこり現れた。口元を扇子で隠しているため、嫌な予感がしたが、もう遅かった。
「ねえ、口髭は丁寧に手入れしているのに、鼻毛が数本も出ているってどう思う?」
「っ!!!またですの」
またも見付けてしまったのかと、エクルは頭を抱えたくなった。話し方は丁寧なのだが、内容がおかしい。
「口髭に誤魔化されそうになったけど、鼻毛も完全に出ているのよ?手堅く3本は出てるの!ふんぬって、頑張ればもっと出るわ、あれは」
「ちょ、お母様」
救いを求めて、きょうだいたちを探すが、誰も近くにはいなかった。
「あれだけ口髭を丁寧に育てているのに、鼻毛を疎かにすることがあるかしら?まっ、まさか!」
ソアリスはこういった席で表情は崩さないが、少し驚いた目をした。
「何?」
「出やすい鼻毛から目を背けるトラップかしら?」
「は、はあ?」
「だってそうでしょう?まず立派なお髭ですねとなるでしょう?」
「そ、そうね」
「そこから、鼻毛出てますけどねとは言い辛いじゃない?」
「え?」
「言わせないためだったのか!!悔しい!みごとにトラップにハマってしまったわ、王妃としたことが情けない」
「いえ、注意してないわよね?」
「しないわよ、ただただ我慢して、鼻毛の本数を数えていたわ」
1本ではなければ、きっと数えるだろうなこの母はと思った。
「お母様…ほんと」
「鼻毛が伸びたら合体するのかしら?」
「はあ?」
何を言い出すのか、本当に分からない。しかも想像力も意外と豊かである。
「だって、伸びるんでしょう?」
「知らないわ」
「いつか僕も口髭になるんだって、思ってるかもしれないじゃない?」
「もう、ちょっと…」
「僕だって鼻毛に生まれたくなんてなかった、憧れの口髭~そーれ!合体だ!これでぼくも口髭だ!でも、おい!お前は鼻毛だろうって喧嘩になるかしら?」
「!!」
エクルは崩れ落ちそうになったが、ソアリスが素早く腕を持ち、あらあら疲れたのね、少し座りましょうなんて言って、椅子に案内する優しさ付きである。
さすがに気付いたきょうだいたちは、今日はエクルかと心の中でご愁傷様と深く頷いた。パーティーという緊張感の中で行われるソアリスの大好きな悪戯。皆、ちゃんと鼻毛の手入れくらいして来て欲しいと切実に思っている。
アリルが婚約者のルーファと駆け付けると、もう涙目で息も絶え絶えだった。ある意味、王妃砲に撃たれたのだ。
「今日も見付けたのね」
「…そうなの、口髭の方から、手堅く3本は出ていたそうなの。頑張ればもっと出るって、ふんぬとまで言っていたわ…」
「ふっ」
「口ひげは出やすい鼻毛から目を背けるトラップだって…ふふふっ」
「ぶぶっ!」
ルーファは耐えられず、吹き出してしまった。
「ルーファ、耐えて頂戴」
「分かってる、分かっているんだが。ああ、うちの母のところへ行ったようだ」
「あら、まずいわ。今日はエピソード付きなの」
「なんてことを」
「…ぶぶっ、エピソード付き」
ソアリスが何やら話している、そしてリズが視線を移した先には口髭の紳士がいる。アリルはあれが元凶かと恨みたくなった。
「ああ、おばさまが悶絶しているわ。本当にごめんなさいね」
「いや、いいんだ。覚悟はしていただろうから、あっ、背中を擦っているよ」
リズは真っ赤になって、口元を押さえている。この華やかなガーデンパーティーだからこそ、笑えなさが面白さを増す。
「飲み物を咽たんじゃないかしら、もうなんてことを」
「優しい王妃にしか見えないところがさすがだね」
リズ大丈夫?なんて労わる言葉が聞こえそうなほどである。
「自分が原因なのに。あっ、いつもの澄ました顔で戻ったわ。兄たちが聞いてるわね、結局聞かずにはいられないのよね。ほら、悶絶することになるのに」
「鼻毛も伸びるんでしょうって、もしかしたら鼻毛も口髭になりたいのかもしれないって」
「ぶぶっ」
「僕だって鼻毛に生まれたくなんてなかった、憧れの口髭~そーれ!合体だ!これでぼくも口髭だ!でも、おい!お前は鼻毛だろうって喧嘩になるかしら?って…」
「ぶぶぶっ!」
「擬人化までしたの!?ルーファ、修行が必要ね」
「はい…でも無理かもしれない」
ルーファはファンでもあるため、絶対に勝てる気がしなかった。
「エクル姉様、ご愁傷様でした」
話を聞いたミフルが、気持ちを込めて労った。
「今度居たら、また絶対見に行くわよ、あれは」
「トラップに引っ掛かるもんかと言い出しそうだな」
「でもお母様のおかげで、一気に肩の力が抜けたの。事前の顔合わせだったんでしょう?」
「そうなるな」
「母上にはエクルの疲れが見えたんだろうな」
「崩れ落ちたけどね」
微笑ましいとは言えないかもしれないが、仲良しきょうだいの憩いとは、真逆の面倒なことがゾル王国で起きていた。
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