私のバラ色ではない人生

野村にれ

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出会い1

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 半年が経ち、前々王妃であるミランが体調を崩すようになった。

 母国であるエスザール王国からお忍びで、甥であるクート国王陛下が、孫を連れてお見舞いに訪れた。来なくてもいいと言ったのだが、息子である王太子に任せて来たようで、兄である前国王陛下は既に亡くなっている。

 息子・ロランがクートを案内して来たが、まずは二人きりでと孫を引き受けて、席を外した。

「クート、久し振りね」
「叔母上、御具合はいかがですか」
「今日はいい方ね、でも毎日いいとは言えないわね、でもユリウスの結婚式までは頑張らなくちゃ」

 学園を卒業するユリウスとルルエの結婚式は、半年後に迫っている。

「でもね、楽しい人生だったわ」
「叔母上…」

 ミランと兄は10も離れていたので、クートはミランが嫁ぐまで、とても可愛がって貰っていた。

「そんな顔をしないで頂戴。本当なのよ、辛いこともあったけど、辛くない人生なんてないものね。子どもが生まれて、孫も生まれて、曾孫にも会えたわ」
「はい…」
「曾孫なんて11人もいるのよ?」

 ロランの妹・アローラはエス王国の大公家に嫁ぎ、娘を2人産んでおり、子どもがそれぞれ1人と2人いる。アローラもこの前、ミランに会いに来ていた。

 勿論、アイリーンもゾル王国がシシリーヌのことで騒がしかったが、今は落ち着いたために、時間を作っては会いに来ている。

「王妃に6人いらっしゃいますものね」
「ええ、とても面白い子なの。アロークが亡くなっても、ここまで生きて来れたのは皆のおかげだわ。あなたも孫を連れて来たんでしょう?」
「はい」
「ねえ、ソアリスに曾孫たちを連れて来てもらえないか聞いてくれる?」
「承知しました」

 メイドが出て行き、しばらくすると話し声と足音が聞こえ出し、「おかあさま」「ちょっと、おかあさま」という幼い声も聞こえている。

「一番下は5歳でしたか」
「ええ、この前なったばかりなの」

 カイルスも5歳になっていたが、相変わらずソアリスが大好きである。「おおばあちゃま、わたし、ごさいになったの」と会う度に聞かされている。

 ドアがノックされ、どうぞと言うとゾロゾロと入って来た。

「クート国王陛下、ご無沙汰しております」

 ソアリスは美しいカーテシーを披露すると、一拍置いて、子どもたちも揃って礼をした。

「美しい、ここまで揃うと圧巻ですな。お久しぶりですね」
「恐れ入ります」

 大きさはそれぞれだが、見事に揃った挨拶だった。公の場ではない時は、ソアリスの多いんだから、一斉にしてしまえばいい作戦である。

「ソアリスも皆もごめんなさいね、忙しいところではなかったかしら」
「ええ、問題ありません」
「だいじょうぶよ」
「ありがとう、カイルス」

 満面の笑みでミランに頭を撫でて貰っている。

「今日の具合はどうですか?」
「今日はクートのおかげか、とてもいいわ」
「いつものガセボでお茶でもいかがですか、確かお孫様もいらっしゃると、聞いたのですが?」

 ソアリスが見渡すも子どもはいない。ミランの調子が良ければ一緒に、良くなければ、子どもたちに孫だけでも連れて行こうと思っていた。

「隣の部屋におります」
「いいわね、調子のいい日は外にでないとよね」
「ええ、足が疲れたらおんぶしますから、歩けるところまで行きましょう」
「ええ、クート、エスコートしてくれる?」

 クートはおんぶ?と引っ掛かったが、ミランの手を取った。

「勿論です」

 ソアリスはユリウスとマイノスに、お義父様とお孫様を呼びに行かせ、皆でガセボに移動することにした。

 外で過ごすのに丁度いい季節で、アンセムとソアリス、ロランとテラー、孫たちが具合のいい日にミランを外に出すようにしている。

「孫のグレイです」
「グレイ・ファルリットです」

 皆が自己紹介をし、ミフルの番になると、グレイの耳が赤くなっていくのが分かった。気付かなかったのは当人のミフルとカイルスとソアリスだけ。

「ふふふ、私に似てしまったのかもしれないな」

 クートは美しいだけでなく、優しくてお茶目なミランが大好きだった。
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