私のバラ色ではない人生

野村にれ

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不機嫌

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「コンクレット侯爵夫人に話は聞いた、私の方から抗議と、接触禁止を出しておこう。ユリウスもそれでいいか?」
「はい、よろしくお願いします」
「今後、同じようなことがあればすぐ言いなさい」
「はい、申し訳ございませんでした」

 ユリウスはパールに困ってはいたが、毅然とした態度で接していた。学園でも周りが近付かない様にしてくれており、終わればすぐに王宮に戻っていたので、二人きりになったことはない。

 ゆえに両親に言うほどではないと思っていたが、まさか乗り込んで来るとは思わなかった。

「で、ソアリスは少しはスッキリしたか?」
「いや、スッキリしないのは、この鼻に付いたあの匂いのせいだな。もう匂わないはずなのに、まだくっせえ」
「確かにコンクレット侯爵夫人にも、匂いが移ったようだったな。臭くてすみませんと言っておった」

 報告に来たコンクレット侯爵夫人は、開口一番にパールの匂いが移って、臭くて申し訳ありませんと言いながら、報告をした。

「臭そうだとは思いましたが、そんなに臭かったんですか」
「ああ、匂いというか、量の問題だろうな」
「瓶ごと掛けたくらいの威力だった」
「うええ…」

 これだけ母にくっせぇを連発させるくらいだと思ったが、瓶ごとは吐き気がする。

「嫁はくっせえ娘は勘弁してくれ」
「はい、勿論です」

 新たに婚約者は香水臭くない者というのが、追加されることになった。

 そして、コンクレット侯爵夫妻のおかげで、後妻と連れ子二人が、伯爵に隠れて、先妻の娘に嫌がらせを受けていることが発覚した。

 暴力はなかったが、些細なことで罰だと言って食事を抜いたり、連れて来たメイドと一緒になって行っていたそうだ。

 あの茶会でのドレスも母親の形見が着たいと言ったと、伯爵には告げていたようで、恥をかかせる魂胆だった。

「分かり易くて助かりましたね、一番厄介なのは隠して行うことです。たかがドレス、されどドレスです」
「はい、伯爵が愚かだったとも言えます」
「それはそうですね」
「伯爵家には相応しくないと、離縁になりそうです。信頼できる親戚や、祖父母にフォローするようにお願いしてあります」
「ありがとう、ご苦労様でした」
「とんでもございません」

 後妻と連れ子二人は子爵家だったが、死別して、夫の弟が継ぐことになった。子爵家に残ったものの、生活の面倒を看て貰っていたにもかかわらず、肩身の狭い思いをしていると感じていた。

 後妻は伯爵に目を付け、身の上を話して聞かせて、同情を買い、まんまと嫁ぐことになり、子爵家での鬱憤を晴らすかのように先妻の娘に当たっていたそうだ。

 後妻と連れ子は後妻の実家である、貧しい男爵家に戻ることになり、パールはユリウスに接近禁止となった。

 香水も乳房丸出しのドレスも、もう買っては貰えないだろう。

「ドレスは、駄目になったか?」
「ええ、さすがに臭過ぎて…息子にもお母様、臭いと…ショックでした。なのでドレス代も請求してやりましたわ」

 メディナも自分の匂いに耐えられなかった。ソアリスのようにくっせぇとは口には出さなかったが、心の中ではずっと思っていた。

「それなら良かった。私も当分、鼻から匂いが取れなかった」
「私もです」
「息子の嫁に臭いのは止めてくれって言っておいた」
「それはいいですね。私も息子が大きくなったら、お願いしようと思います。あれは生活に支障をきたします」

 一番被害を被ったメディナは、頭痛がし、吐き気を催し、気分が悪くなって、寝込んだほどであった。

「あと、あの娘の着ていたようなドレスはどうしたら買えるのだ?メディナはあのようなドレスを勧められたことがあるか?」
「ございません」
「そうだよな、おかしいよな」
「辱めるためであれば、有効かと存じます」
「そうだな、気を配ってくれ」
「承知しました」

 乳房丸出しのドレスには要注意という項目が加わった。
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