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ユリウスの婚約
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ユリウスもこの件で婚約者を定めた方がいいと感じ、何人かのご令嬢と会い、申し込んだのはルルエ・トエル侯爵令嬢。ルルエも快諾して、婚約が決まった。
トエル侯爵夫妻は穏やかな人柄で、ルルエもそうであった。
きょうだいたちは大人しそうに見え、大丈夫かと心配した。
「だが、自己主張が強過ぎるのも、こだわりが強過ぎるのも駄目だろう?」
「確かに…」
「人柄の良さそうな方ではあるわね…」
「毒を以て毒を制すようなことは出来ないわよね…」
「地獄は見たくない」
ソアリスにソアリスに似た娘をぶつけたら、どうなっても嫌な予感しかしない。
礼儀や成績も優秀であることは前提であるため、決め手はよく笑うことだった。朗らかさで何とか、母と上手くやっていけるのではないかと考えた。
そして、ユリウスが王太子に決まり、婚約と同時に発表された。既に王太子教育は受けていたが、今後はルルエも王太子妃教育を受けることになる。
気になるソアリスとの相性は今のところ…良好である。
「ルルエ・トエルでございます」
「ユリウスをどうぞよろしくお願いしますわね」
「はい、精進して参ります」
「ユリウスは、トエル嬢を愚物から守るのよ」
愚物…阿呆阿呆娘、あっぱらパールのようなことを言っているのだろう。彼女は通うお金がなくなって、学園からも去った。
「…はい」
本心はどう思っているのかは、我慢出来るような性格ではないので、何かあればボロが出るだろうと、ユリウスは思っていた。
「賢そうで可愛い子ね、私の私室辺りはお化けが出るとでも言っておいてね。私のせいで解消したいなんて言われたら、困るもの」
褒めた側から、何てことを言い出すのかと思ったが、ルルエには徐々に知らせていく方がいいだろうとは思っていた。
「呪詛を吐くお化けが出ると?」
「そうそう、王妃の私室の辺りは近付いてはならぬと!」
「でもカイルスが来るだろう?」
母を探してカイルスは私室辺りもよくウロウロしている。お化けが出るのに、幼子がウロウロしているのは、説得力に欠ける。
「カイルスには見えないとか言っておけばいいじゃない。いける、いける」
いける、いけるじゃない!全く直す気はないことは分かっていたが、開き直り過ぎじゃないか?
今のところルルエが私室に近付くような用事もないので、バレてはいない。
アリルとエクルとミフルがルルエをお茶に誘うこともあり、兄しかいないルルエは始めは戸惑っていたが、すっかり打ち解けたようであった。
「皆、ありがとう。ルルエも喜んでいる」
「いえ、このくらいは。お母様はお茶なんて呑気に飲んでいる暇があったら、一気飲みしてお昼寝をしたいと思ってますから、絶対に誘いませんでしょう?」
「っう。そうだな…」
王女が誘うこともあるだろうが、王妃が誘うことはないところをフォローしてくれていたのか。
「普通の令嬢はお茶くらい飲むものですからね」
「お兄様も参加してくださいね」
母があの調子だったので、あまりお茶を飲むという行為に触れて来なかった。
ある日、エクルとルルエがお茶をしているところに参加していたが、ルルエの後方に、母とカイルスが何やらぶつかり合っているのが見える。カイルスが母に突撃しては、投げ捨てられ、再び来いと腕を広げている。
一体何をしているのだ…母親がするような行為ではないことは明らかである。
エクルも気付いたようで、さてどうしようかと考えているのが分かる。
母子が遊んでいることに変わりはないが、あれはどちらかというと、父子だと絵になる光景ではないだろうか。多分、侍女も護衛もこれは父だと思うことにしたような顔をしている。
そもそも、外でしなくてもいいじゃないか。
エクルはお茶は室内にしておけば、良かったと後悔しているところだろう。
「どうかなさいまして?」
ユリウスとエクルはさて、どう答えようかと思っていたら、目線に気付いてしまったようで、ルルエが振り返った。
トエル侯爵夫妻は穏やかな人柄で、ルルエもそうであった。
きょうだいたちは大人しそうに見え、大丈夫かと心配した。
「だが、自己主張が強過ぎるのも、こだわりが強過ぎるのも駄目だろう?」
「確かに…」
「人柄の良さそうな方ではあるわね…」
「毒を以て毒を制すようなことは出来ないわよね…」
「地獄は見たくない」
ソアリスにソアリスに似た娘をぶつけたら、どうなっても嫌な予感しかしない。
礼儀や成績も優秀であることは前提であるため、決め手はよく笑うことだった。朗らかさで何とか、母と上手くやっていけるのではないかと考えた。
そして、ユリウスが王太子に決まり、婚約と同時に発表された。既に王太子教育は受けていたが、今後はルルエも王太子妃教育を受けることになる。
気になるソアリスとの相性は今のところ…良好である。
「ルルエ・トエルでございます」
「ユリウスをどうぞよろしくお願いしますわね」
「はい、精進して参ります」
「ユリウスは、トエル嬢を愚物から守るのよ」
愚物…阿呆阿呆娘、あっぱらパールのようなことを言っているのだろう。彼女は通うお金がなくなって、学園からも去った。
「…はい」
本心はどう思っているのかは、我慢出来るような性格ではないので、何かあればボロが出るだろうと、ユリウスは思っていた。
「賢そうで可愛い子ね、私の私室辺りはお化けが出るとでも言っておいてね。私のせいで解消したいなんて言われたら、困るもの」
褒めた側から、何てことを言い出すのかと思ったが、ルルエには徐々に知らせていく方がいいだろうとは思っていた。
「呪詛を吐くお化けが出ると?」
「そうそう、王妃の私室の辺りは近付いてはならぬと!」
「でもカイルスが来るだろう?」
母を探してカイルスは私室辺りもよくウロウロしている。お化けが出るのに、幼子がウロウロしているのは、説得力に欠ける。
「カイルスには見えないとか言っておけばいいじゃない。いける、いける」
いける、いけるじゃない!全く直す気はないことは分かっていたが、開き直り過ぎじゃないか?
今のところルルエが私室に近付くような用事もないので、バレてはいない。
アリルとエクルとミフルがルルエをお茶に誘うこともあり、兄しかいないルルエは始めは戸惑っていたが、すっかり打ち解けたようであった。
「皆、ありがとう。ルルエも喜んでいる」
「いえ、このくらいは。お母様はお茶なんて呑気に飲んでいる暇があったら、一気飲みしてお昼寝をしたいと思ってますから、絶対に誘いませんでしょう?」
「っう。そうだな…」
王女が誘うこともあるだろうが、王妃が誘うことはないところをフォローしてくれていたのか。
「普通の令嬢はお茶くらい飲むものですからね」
「お兄様も参加してくださいね」
母があの調子だったので、あまりお茶を飲むという行為に触れて来なかった。
ある日、エクルとルルエがお茶をしているところに参加していたが、ルルエの後方に、母とカイルスが何やらぶつかり合っているのが見える。カイルスが母に突撃しては、投げ捨てられ、再び来いと腕を広げている。
一体何をしているのだ…母親がするような行為ではないことは明らかである。
エクルも気付いたようで、さてどうしようかと考えているのが分かる。
母子が遊んでいることに変わりはないが、あれはどちらかというと、父子だと絵になる光景ではないだろうか。多分、侍女も護衛もこれは父だと思うことにしたような顔をしている。
そもそも、外でしなくてもいいじゃないか。
エクルはお茶は室内にしておけば、良かったと後悔しているところだろう。
「どうかなさいまして?」
ユリウスとエクルはさて、どう答えようかと思っていたら、目線に気付いてしまったようで、ルルエが振り返った。
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