私のバラ色ではない人生

野村にれ

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帰省

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 アンセムの姉、アイリーン王女もパーティーなどには出席していたが、祖父が危ないということで、私的な理由で初めてゾル王国からクロンデール王国に帰省した。ソアリスの喝がなければ、会えなかったかもしれない。

「お祖父様」
「アイリーン、ルークとリックも大きくなったな」

 アイリーンは急いでやって来たが、覚悟もしていた。公爵である夫は来れなかったが、息子2人も連れて来た。

 さすがに元気とは言えないが、話が出来て本当に良かった。

 少し眠るというアロークに、子どもたちは両親のところ行き、隣の部屋で祖母であるミランと二人になった。

「お祖母様…お元気だと聞いていたから、もっと戻って来るべきでしたわ」
「急に悪くなってしまったのよ」

 年齢もあり、臓器が弱っているとは言われていたが、ガクンと一気に悪くなった。

「あなたはアンセムの立場が揺るがない様に、近寄らなかったのでしょう」
「始めはそうでしたが…」

 アイリーンを担ぎ出そうとする可能性はほとんどなかったが、それでもアイリーンはゼロにしたかった。だから近寄らないようにし、子どもを産むと、子育てと夫人の仕事でなかなか帰ることは出来なかった。

「私もよく分かるわ。他国だと、なかなか離れられないでしょう?」
「はい…でも会えてよかったわ」
「ええ…本当に。ソアリスが喝を入れたおかげなの」
「はい?」

 弟の妻であるソアリスとは、パーティーなどでは顔を合わせて会話はしていたが、私的な関係性は築いていない。

「あなたに連絡した少し後に、眠ったままになってしまって、覚悟して欲しいって言われていたの。そこでソアリスがお腹の子を見ないまま死ぬのかって怒鳴って、アローも夢現でずっとソアリスに怒られてて、目が覚めたそうなの」
「え?本当に?」
「本当なの、医師も説明できないけど、それで今の様に安定したの。おかげでソアリスが臨月なのに、一日一回、確認にやって来るの」
「へ?」
「会ってみれば分かるわ、あの子はあなたと合うはずよ」
「そうですか…?前の婚約者よりかはいいかと思いましたが」

 アイリーンはララシャと何度かお茶をしたことがあったが、全く合わなかった。王女の立場は嫌だったが、まるで王女の様に振舞うララシャも、不愉快だった。

「ララシャ妃ね…ソアリスとは仲が良くないのよ。アリル、第一王女ね。子どもが出来なかったのは辛かったとは思うけど、あちらの王太子の息子の婚約者にして、面倒を看るからと、子どもの代わりにしようとしたり」
「はあ?」

 両親とは手紙のやり取りをしているが、そんな話は聞いていない。

「ロランはあなたには言わなかったんでしょうね、アンセムとソアリスに対処するように任せていたから」
「ララシャ妃はゾル王国でも、評判が悪いです。そもそもピデム王国があり得ないことをしたものですけど、良かったのかもしれませんね」
「そうなの、ソアリスで本当に良かったと、ロランもテラーも言っているわ」

 お茶をしていると、何やら騒がしくなった。

「来たのね。ソアリスは口が悪いけど、気にしないでね」
「え?」

 ミランも出て行き、アイリーンも付いて行くことにした。すると、腹が重いとこぼしながら、ソアリスは腹を抱えて、アロークのいる部屋に入っていった。アイリーンはあれがソアリス?と、ただただ動揺した。

「今日も生きておりますか?まだですよ、まだ生まれてませんからね」
「分かっておる」
「本当ですか?ポックリ逝かないでくださいよ!」
「いかん!」

 アイリーンは後ろからその様子を見ていたが、驚き過ぎて唖然とした。

「これを抱いてからですからね!」
「せめて、この子とか赤子とか言ってくれ」
「あら、失礼しました。あまりにお腹が重くって」
「絶対、そのせいじゃないだろう」

 元国王陛下に言う言葉ではないが、誰も注意すらせず、見守っている。そして、祖父は先程よりも生き生きしている。
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