私のバラ色ではない人生

野村にれ

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相談

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 教会や孤児院など子どもがいる場所への訪問は、ソアリスが一緒になって遊ぶので、大人気である。

 始めはララシャとは比べて貶めようとしていた者もいたが、ソアリスはそういったことはロアンスラー公爵夫妻におっしゃってくださいと、傷付く素振りもなく言い切り、口に出す者もいなくなった。

 大臣たちとはよく議論を交わしていた、腹の探り合いもあるが、どうやったら通るか相談に来る者も増えている。

 私的な相談にも、乗ることもあった。いつもは艶々した大臣がやつれていたが、皆見て見ぬ振りでも、ソアリスは迷いなく声を掛ける。

「大臣、顔色が悪いが?」
「申し訳ございません」
「謝ることではない。私には力になれぬことか?」
「いえ、実は妻が不貞をしていることが分かりまして…家庭内が滅茶苦茶で…」
「開き直ったのですか?」
「はい…子どももおりますし…妻の実家は侯爵家ですし、でも…これまで通りというわけには…」
「奥様はどうされたいのですか?」
「離縁されるとは思っていないからこそ、出来るんですよ。どうしたらいいのでしょうか…」

 この大臣は伯爵家、妻は格上の侯爵令嬢であった。幼児ではないが、男の子と女の子一人ずつ子どもがいる。

「離縁する覚悟はあるとして、私ならばという答えをしてもいいですか?」
「はい」
「お金はありますか?」
「お金、ですか?困ってはいませんが」
「では、妻の両親に証拠を突き付けて、小屋に閉じ込めてもいいか許可を貰います」
「小屋ですか?」
「狭いところの方が精神的なダメージを与えられますから。小屋を建てて、そこに許せるまで、もしくは答えが出るまで、押し込めます」
「え?」

 アンセムも横で聞いていたが、ギョッとした。小屋に閉じ込めろと言い出すとは思わなかった。

「だって邸に今、人は呼ばないでしょう?出入りの人には見えないようなところに、小屋を作るのです。子どもが遊ぶのに売っているでしょう?」

 子どもの秘密基地のような、小さなログハウスが売っている。なぜ知っているのか、ソアリスも欲しかったからである。

「そうすれば不貞女を見なくて済むし、それほどのことをしたのだと、最低限の世話だけをして、後悔させればいい」
「それは大丈夫か?」

 さすがにアンセムが口を出したが、ソアリスは府に落ちない顔をしている。

「だからご両親に許可を取るんですよ!非難するようなら、侯爵夫妻は不貞を推奨していると、私が広めて差し上げるわ」
「それは…」
「殿下は、爵位が上だから不貞を犯してもいいと思っていると?」
「それはよくない」
「使った後は子どもたちの遊び場にもなるし、置いておけば戒めにもなる。子どもたちが遊びたいと言えば、あそこには今、お母様が反省しているから、反省が終わったらと言えばいい。子どもたちに外から詰めさせてもいい、貴族の子は聡いですからね。不貞は隠してもいいけど、下手に言い訳をするより、恥ずかしいという気持ちを植え付け、親としての自覚も持つべきです」

 子どもたちまで使う気かと思ったが、大臣の子は8歳と6歳だ、きっと察しているだろう。夫人は心を抉られるような復讐になるであろう。

 ソアリスはふっと笑った。

「と、アドバイスを貰ったと話すのです。妻でもご両親でもいい。いつでも閉じ込めるぞと、ログハウスを買うのもいいと思います、ふふふ」
「それは…恐ろしくていいですね、話してみます」
「いいのか?今ので?」
「何だか、勇気が出ました!」

 アンセムは本当か?と思ったが、話し合いの結果、妻は罪を認め謝罪したようで、不貞相手にも話を付け、示談として支払われた慰謝料で、子どもたちのためにログハウスを本当に買い、妻の顔色が悪くなった。

 いずれ離縁するかもしれないが、今は反省する姿を見たいと言い、夫の顔色はすっかり元に戻った。このログハウスの案は、他の家でも脅しで使われたそうだ。

 それからも男女問わず様々な相談を受けることがあったが、ハッキリ言うことで、頼りになると浸透していった。

 皮肉にも欠陥品だと思っていた口が、功を奏した。

 ソアリスにも爆発する前に気晴らしが必要で、木登りも汚い言葉で喚く声も、許容されていったのである。

 そして、ララシャの方にも変化が訪れた。
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