私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
16 / 360

願望

しおりを挟む
 一方、ピデム王国に戻ったリベルは何と伝えようか悩んでいた、ララシャに納得して貰わなくてならない。

 だが、ソアリスが言ったことをララシャに伝える勇気はない。あんなにハッキリ言う人だとは思わなかったというくらい、ララシャとは違った。

 てっきりララシャと同じような性格なのかと思っていた。

 メイドに聞くと、私が出て行ってからララシャは出て来たそうだが、今はまた部屋に閉じ籠っているらしい。周りに当たったりはしないのだが、ヒロイン気取りと揶揄されていることは知っている。

 確かにララシャはまるでヒロインのような人生だった。

 生まれただけでアンセム王太子殿下の婚約者になり、リベル第二王子殿下に求婚されて、結婚した。始めは他国の王太子の婚約者を奪うなんてという声もあったが、リベルが溺愛することで、相手は王太子の婚約者でもあった公爵令嬢ならば、優秀なのだろうと思われていた。

 だが、近くにいる者は接していく内、発言などを聞けば、第二王子はたまに外交や公務があるくらいで、良かったと言えるレベルであった。

 意見を聞いても、難しいことは王太子殿下に任せるように言われていたから、私はよく分からない。礼儀やマナー、周辺国の情報も完璧だとは言い難く、クロンデール王国はある意味、ソアリスを選んで正解だっただろうと思うほどだった。

 選んだのはリベルなので、期待外れだとは誰も思っていても言いはしない。

 そして、リベルは子どもも出来ないことで、側妃を勧められたが、奪ってまでも結婚したことで、娶ることはないと言っているにも関わらず、今でも娘を紹介して来る貴族は後を絶たない。

 リベルはララシャの部屋に向かった。

「ララシャ?ソアリス妃に会ったよ」
「ソアリスに?」
「ああ」
「ソアリスなら、アリルをくれるって言ったでしょう?」

 アンセムには直接断られているが、ソアリスには直接断られたわけではないので、ララシャはまだ信じていた。

「それは出来ないと言っただろう、子どもは物じゃないんだ。しかも王族だ、ララシャも分かるだろう?」
「でもソアリスが是非にと言えば、変わるかもしれないじゃない!」

 既に三人子どもがいて、四人目がいるならば、一人くらい渡してくれるはず。アリルならソアリスに似ていたから、私の娘だと言っても不自然ではない。

「ソアリス妃はアンセム殿下と同じで反対していたよ」
「嘘よ!ソアリスは私が育てると言えば、喜ぶはずだわ」
「なぜそう思うんだい?」
「ずっと私に憧れているのよ」
「そうだとしても、まだ幼い子どもを渡すというのは違うだろう?アリル王女はソアリス妃に懐いていただろう?引き離したら、可哀想だとは思わないか?」
「…」

 アリルはララシャに興味も示さなかった。姪なら懐いてくれると思っており、ショックだった。だからむしろ早く引き離して、自分に懐かせようと考えていた。

「私は側妃を娶る気もないし、出来なければそれでいい、それともララシャは私と別れたいかい?」
「え?」
「子どもは私のせいかもしれないだろう?」
「離縁なんて考えていないわ」

 死ぬと言ったのも脅しで、まさか離縁だなんて考えたこともなかった。実家に戻って、居場所がなくて惨めな思いをするのは嫌だ。

「ならば、二人で出来たら、喜べばいいじゃないか」
「そうね…」

 ソアリスの第四子はアンセムによく似た女の子だった。ただし髪色はソアリスだったため、またメイドに毛染め依頼をすることとなった。

 女児はエクルと名付けられ、アリルと共に皆に愛されているそうだ。

 両親と兄夫妻がお祝いに訪れたらしいが、私は会うことはないと断った。また手紙を預かったと受け取ったが、火を付けて暖炉に投げた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

私がもらっても構わないのだろう?

Ruhuna
恋愛
捨てたのなら、私がもらっても構わないのだろう? 6話完結予定

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った

mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。 学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい? 良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。 9話で完結

【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」

まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10 私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。 エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。 エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら? それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。 エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。 そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。 なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【 完結 】「平民上がりの庶子」と言っただなんて誰が言ったんですか?悪い冗談はやめて下さい!

しずもり
恋愛
 ここはチェン王国の貴族子息子女が通う王立学園の食堂だ。確かにこの時期は夜会や学園行事など無い。でもだからってこの国の第二王子が側近候補たちと男爵令嬢を右腕にぶら下げていきなり婚約破棄を宣言しちゃいますか。そうですか。 お昼休憩って案外と短いのですけど、私、まだお昼食べていませんのよ?  突然、婚約破棄を宣言されたのはチェン王国第二王子ヴィンセントの婚約者マリア・べルージュ公爵令嬢だ。彼女はいつも一緒に行動をしているカミラ・ワトソン伯爵令嬢、グレイシー・テネート子爵令嬢、エリザベス・トルーヤ伯爵令嬢たちと昼食を取る為食堂の席に座った所だった。 そこへ現れたのが側近候補と男爵令嬢を連れた第二王子ヴィンセントでマリアを見つけるなり書類のような物をテーブルに叩きつけたのだった。 よくある婚約破棄モノになりますが「ざまぁ」は微ざまぁ程度です。 *なんちゃって異世界モノの緩い設定です。 *登場人物の言葉遣い等(特に心の中での言葉)は現代風になっている事が多いです。 *ざまぁ、は微ざまぁ、になるかなぁ?ぐらいの要素しかありません。

処理中です...