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願望
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一方、ピデム王国に戻ったリベルは何と伝えようか悩んでいた、ララシャに納得して貰わなくてならない。
だが、ソアリスが言ったことをララシャに伝える勇気はない。あんなにハッキリ言う人だとは思わなかったというくらい、ララシャとは違った。
てっきりララシャと同じような性格なのかと思っていた。
メイドに聞くと、私が出て行ってからララシャは出て来たそうだが、今はまた部屋に閉じ籠っているらしい。周りに当たったりはしないのだが、ヒロイン気取りと揶揄されていることは知っている。
確かにララシャはまるでヒロインのような人生だった。
生まれただけでアンセム王太子殿下の婚約者になり、リベル第二王子殿下に求婚されて、結婚した。始めは他国の王太子の婚約者を奪うなんてという声もあったが、リベルが溺愛することで、相手は王太子の婚約者でもあった公爵令嬢ならば、優秀なのだろうと思われていた。
だが、近くにいる者は接していく内、発言などを聞けば、第二王子はたまに外交や公務があるくらいで、良かったと言えるレベルであった。
意見を聞いても、難しいことは王太子殿下に任せるように言われていたから、私はよく分からない。礼儀やマナー、周辺国の情報も完璧だとは言い難く、クロンデール王国はある意味、ソアリスを選んで正解だっただろうと思うほどだった。
選んだのはリベルなので、期待外れだとは誰も思っていても言いはしない。
そして、リベルは子どもも出来ないことで、側妃を勧められたが、奪ってまでも結婚したことで、娶ることはないと言っているにも関わらず、今でも娘を紹介して来る貴族は後を絶たない。
リベルはララシャの部屋に向かった。
「ララシャ?ソアリス妃に会ったよ」
「ソアリスに?」
「ああ」
「ソアリスなら、アリルをくれるって言ったでしょう?」
アンセムには直接断られているが、ソアリスには直接断られたわけではないので、ララシャはまだ信じていた。
「それは出来ないと言っただろう、子どもは物じゃないんだ。しかも王族だ、ララシャも分かるだろう?」
「でもソアリスが是非にと言えば、変わるかもしれないじゃない!」
既に三人子どもがいて、四人目がいるならば、一人くらい渡してくれるはず。アリルならソアリスに似ていたから、私の娘だと言っても不自然ではない。
「ソアリス妃はアンセム殿下と同じで反対していたよ」
「嘘よ!ソアリスは私が育てると言えば、喜ぶはずだわ」
「なぜそう思うんだい?」
「ずっと私に憧れているのよ」
「そうだとしても、まだ幼い子どもを渡すというのは違うだろう?アリル王女はソアリス妃に懐いていただろう?引き離したら、可哀想だとは思わないか?」
「…」
アリルはララシャに興味も示さなかった。姪なら懐いてくれると思っており、ショックだった。だからむしろ早く引き離して、自分に懐かせようと考えていた。
「私は側妃を娶る気もないし、出来なければそれでいい、それともララシャは私と別れたいかい?」
「え?」
「子どもは私のせいかもしれないだろう?」
「離縁なんて考えていないわ」
死ぬと言ったのも脅しで、まさか離縁だなんて考えたこともなかった。実家に戻って、居場所がなくて惨めな思いをするのは嫌だ。
「ならば、二人で出来たら、喜べばいいじゃないか」
「そうね…」
ソアリスの第四子はアンセムによく似た女の子だった。ただし髪色はソアリスだったため、またメイドに毛染め依頼をすることとなった。
女児はエクルと名付けられ、アリルと共に皆に愛されているそうだ。
両親と兄夫妻がお祝いに訪れたらしいが、私は会うことはないと断った。また手紙を預かったと受け取ったが、火を付けて暖炉に投げた。
だが、ソアリスが言ったことをララシャに伝える勇気はない。あんなにハッキリ言う人だとは思わなかったというくらい、ララシャとは違った。
てっきりララシャと同じような性格なのかと思っていた。
メイドに聞くと、私が出て行ってからララシャは出て来たそうだが、今はまた部屋に閉じ籠っているらしい。周りに当たったりはしないのだが、ヒロイン気取りと揶揄されていることは知っている。
確かにララシャはまるでヒロインのような人生だった。
生まれただけでアンセム王太子殿下の婚約者になり、リベル第二王子殿下に求婚されて、結婚した。始めは他国の王太子の婚約者を奪うなんてという声もあったが、リベルが溺愛することで、相手は王太子の婚約者でもあった公爵令嬢ならば、優秀なのだろうと思われていた。
だが、近くにいる者は接していく内、発言などを聞けば、第二王子はたまに外交や公務があるくらいで、良かったと言えるレベルであった。
意見を聞いても、難しいことは王太子殿下に任せるように言われていたから、私はよく分からない。礼儀やマナー、周辺国の情報も完璧だとは言い難く、クロンデール王国はある意味、ソアリスを選んで正解だっただろうと思うほどだった。
選んだのはリベルなので、期待外れだとは誰も思っていても言いはしない。
そして、リベルは子どもも出来ないことで、側妃を勧められたが、奪ってまでも結婚したことで、娶ることはないと言っているにも関わらず、今でも娘を紹介して来る貴族は後を絶たない。
リベルはララシャの部屋に向かった。
「ララシャ?ソアリス妃に会ったよ」
「ソアリスに?」
「ああ」
「ソアリスなら、アリルをくれるって言ったでしょう?」
アンセムには直接断られているが、ソアリスには直接断られたわけではないので、ララシャはまだ信じていた。
「それは出来ないと言っただろう、子どもは物じゃないんだ。しかも王族だ、ララシャも分かるだろう?」
「でもソアリスが是非にと言えば、変わるかもしれないじゃない!」
既に三人子どもがいて、四人目がいるならば、一人くらい渡してくれるはず。アリルならソアリスに似ていたから、私の娘だと言っても不自然ではない。
「ソアリス妃はアンセム殿下と同じで反対していたよ」
「嘘よ!ソアリスは私が育てると言えば、喜ぶはずだわ」
「なぜそう思うんだい?」
「ずっと私に憧れているのよ」
「そうだとしても、まだ幼い子どもを渡すというのは違うだろう?アリル王女はソアリス妃に懐いていただろう?引き離したら、可哀想だとは思わないか?」
「…」
アリルはララシャに興味も示さなかった。姪なら懐いてくれると思っており、ショックだった。だからむしろ早く引き離して、自分に懐かせようと考えていた。
「私は側妃を娶る気もないし、出来なければそれでいい、それともララシャは私と別れたいかい?」
「え?」
「子どもは私のせいかもしれないだろう?」
「離縁なんて考えていないわ」
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「ならば、二人で出来たら、喜べばいいじゃないか」
「そうね…」
ソアリスの第四子はアンセムによく似た女の子だった。ただし髪色はソアリスだったため、またメイドに毛染め依頼をすることとなった。
女児はエクルと名付けられ、アリルと共に皆に愛されているそうだ。
両親と兄夫妻がお祝いに訪れたらしいが、私は会うことはないと断った。また手紙を預かったと受け取ったが、火を付けて暖炉に投げた。
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