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誤解
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生まれた時から婚約者ではあったが、それは務めだと思っていたに過ぎない。
確かにリベル殿下が現れなければ、結婚していたとは思うが、愛していると思ったことはない。ララシャもそうだと思っていた。
「ララシャです、いつもアンセム殿下に愛されていると言っておりましたよ?」
「ララシャは渡さない!」
リベルはお門違いにアンセムを睨み付けており、どこが愛されていると感じたのだろうかと思うほどであった。婚約者だったのだから、愛されていないというよりかは良かったのかもしれないが、今となっては迷惑でしかない。
「戻って来ても困ります。ララシャ妃は婚約者ではあったが…愛していたとは正直言えない」
「そうなのですか?おかしいですわね」
ソアリスはアンセムがララシャを愛していて、奪われてしまって、可哀想な人だと思っていた。妹を娶ることになって、不満ながらも王太子として受け入れ、だが側妃は好みの者を選んだのだろうと思っていた。
結局、側妃は姿すら見ていないが、ソアリスも興味がない上に、住処も使用人も違うので、偶然耳に入ることもなかった。
「自分の都合よく捏造するところがあるのではないか?甘やかさずにきちんと伝えてはどうですか」
「リベル殿下は子どもが欲しいのですか?」
「出来たらいいとは思っているが、ララシャを苦しめてまで欲しいとは思っていない。出来ないなら、それでいい」
ソアリスは面白くもない会話しかしないララシャを選んだことで、見る目のない王子だと思っていたが、いい夫ではないかと素直に思った。
ならば二人で末永く幸せにしていればいい、そして王家なので、ララシャが子育てをするわけではないと思うが、私も向いていないが、飽きやすいララシャも向いているとは思えない。
ただ愛でるだけならまだいいが、飽きたら放置や、言うことを聞かないことがあれば、誰かに泣きつき、もしくは過保護に育てる可能性もあるかもしれない。
「殿下が欲しいなら話が変わりますが、答えは出ているではありませんか」
「ああ…」
「そもそも王家に嫁ぐというのは、腹を括るものでしょう?子どもが出来なくて辛いわ、だから貰って来てなどと通用すると思っていることが間違いでしょう?」
「あっ、ああ…」
率直な意見を許可したので、リベルは何も言えないが、大人しいと思っていたソアリス妃がここまでハッキリ言うとは思わなかった。
王太子妃となれば、本来血を残すことが義務であるとも言えるため、真っ当な考えなのはソアリス妃の方だとは頭では分かっている。
だが、こう言ったことは女性の方が辛い立場になることが多いのだが、ソアリス妃は王太子妃として割り切っているという表現がぴったりだろう。
「子を求められるのも王家であれば、当然のことなのではありませんか?ララシャ妃はずっと王太子妃になるために教育されているはずなのに、どうしてなのかしら?」
「それは…そうかもしれないが」
「私はララシャに言ったのですよ、期待され過ぎているのではないかと。でも応えられると言ったのです。だからこんなことで挫けていることは、期待に応えられていない、恥ずかしいことだと、教えて差し上げるべきでは?言っても分かっていないことも多いですが、言わないと一生分かりませんよ」
ソアリスの気迫に負けて、リベルは帰って行った。なぜ他国の王太子夫妻が相談を受けなければならないのか、アンセムもソアリスもどっと疲れた。
その夜、アンセムは寝室で背を向けて眠るソアリスに、きちんとララシャのことは誤解だと伝えなければと思っていた。
「ララシャ妃のことだが」
「…はい」
「愛していると信じていたのか、ずっと」
「ええ、まあそうですね。どちらでも構いませんから、寝ましょう。妊娠中は眠いのです」
「ああ、そうだな」
結局、アンセムはまた素っ気ない態度に誤解を上手く説くことが出来なかった。
確かにリベル殿下が現れなければ、結婚していたとは思うが、愛していると思ったことはない。ララシャもそうだと思っていた。
「ララシャです、いつもアンセム殿下に愛されていると言っておりましたよ?」
「ララシャは渡さない!」
リベルはお門違いにアンセムを睨み付けており、どこが愛されていると感じたのだろうかと思うほどであった。婚約者だったのだから、愛されていないというよりかは良かったのかもしれないが、今となっては迷惑でしかない。
「戻って来ても困ります。ララシャ妃は婚約者ではあったが…愛していたとは正直言えない」
「そうなのですか?おかしいですわね」
ソアリスはアンセムがララシャを愛していて、奪われてしまって、可哀想な人だと思っていた。妹を娶ることになって、不満ながらも王太子として受け入れ、だが側妃は好みの者を選んだのだろうと思っていた。
結局、側妃は姿すら見ていないが、ソアリスも興味がない上に、住処も使用人も違うので、偶然耳に入ることもなかった。
「自分の都合よく捏造するところがあるのではないか?甘やかさずにきちんと伝えてはどうですか」
「リベル殿下は子どもが欲しいのですか?」
「出来たらいいとは思っているが、ララシャを苦しめてまで欲しいとは思っていない。出来ないなら、それでいい」
ソアリスは面白くもない会話しかしないララシャを選んだことで、見る目のない王子だと思っていたが、いい夫ではないかと素直に思った。
ならば二人で末永く幸せにしていればいい、そして王家なので、ララシャが子育てをするわけではないと思うが、私も向いていないが、飽きやすいララシャも向いているとは思えない。
ただ愛でるだけならまだいいが、飽きたら放置や、言うことを聞かないことがあれば、誰かに泣きつき、もしくは過保護に育てる可能性もあるかもしれない。
「殿下が欲しいなら話が変わりますが、答えは出ているではありませんか」
「ああ…」
「そもそも王家に嫁ぐというのは、腹を括るものでしょう?子どもが出来なくて辛いわ、だから貰って来てなどと通用すると思っていることが間違いでしょう?」
「あっ、ああ…」
率直な意見を許可したので、リベルは何も言えないが、大人しいと思っていたソアリス妃がここまでハッキリ言うとは思わなかった。
王太子妃となれば、本来血を残すことが義務であるとも言えるため、真っ当な考えなのはソアリス妃の方だとは頭では分かっている。
だが、こう言ったことは女性の方が辛い立場になることが多いのだが、ソアリス妃は王太子妃として割り切っているという表現がぴったりだろう。
「子を求められるのも王家であれば、当然のことなのではありませんか?ララシャ妃はずっと王太子妃になるために教育されているはずなのに、どうしてなのかしら?」
「それは…そうかもしれないが」
「私はララシャに言ったのですよ、期待され過ぎているのではないかと。でも応えられると言ったのです。だからこんなことで挫けていることは、期待に応えられていない、恥ずかしいことだと、教えて差し上げるべきでは?言っても分かっていないことも多いですが、言わないと一生分かりませんよ」
ソアリスの気迫に負けて、リベルは帰って行った。なぜ他国の王太子夫妻が相談を受けなければならないのか、アンセムもソアリスもどっと疲れた。
その夜、アンセムは寝室で背を向けて眠るソアリスに、きちんとララシャのことは誤解だと伝えなければと思っていた。
「ララシャ妃のことだが」
「…はい」
「愛していると信じていたのか、ずっと」
「ええ、まあそうですね。どちらでも構いませんから、寝ましょう。妊娠中は眠いのです」
「ああ、そうだな」
結局、アンセムはまた素っ気ない態度に誤解を上手く説くことが出来なかった。
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