9 / 348
要求1
しおりを挟む
「正式に結ぼうという訳ではない、そうなったらいいなくらいでも駄目か」
「子の未来を勝手に決めることはしたくないのです」
「ララシャのためにお願いできぬか、ソアリス妃によく似た子だと聞いている」
アンセムも子が出来ぬことは辛いだろうとは思うが、リベルの目は獰猛にアリルを奪うような目をしていた。
「まさか承諾させて、早くにそちらで教育をなどとお思いではないですよね?」
「いや、それもいいかとは思っている。早くに馴染む方が良いであろう、姉であるララシャもいる訳だし」
「まだ一歳ですよ?母でもないララシャ妃に何が出来るというのです?」
ララシャのためにアリルを与えようと思っているとしか思えない。子どもは物ではない。
「アンセム殿には他に二人もお子がいるではないですか」
「一人くらいいいじゃないかと仰るんですか?逆の立場だったらどうですか」
「無論、逆ならば私は喜んで召し上げたいと思う」
酷い言い方かもしれないが、それは子どもがいないから言える言葉だろう。逆だったら、そんなことを要求することはないが、渡さないと思われる。
「私はそうは思いません、それとソアリスは酷く反対しておりますので、ララシャ妃にもそうお伝えください」
「どうして妹君が反対などと、ララシャは望んでおるのだぞ!」
まるで当たり前のような口ぶりに苛立ちが抑えきれなくなっていた。
「とにかく私も反対、妻も反対です。公爵家にも娘が生まれたそうじゃないですか、そちらに頼んではいかがですか」
「既に会わせたが、兄君の奥方に似ていて、ララシャが望まぬのだ…」
ようやく兄・サイラスにも娘が生まれた。
望む望まないの話ではない、さすがにサイラスも娘をララシャに渡すという選択をするとは思えない。
「はあ、アリルが大きくなって、あの子が納得してという以外は認められません」
「では、まず会わせては貰えないか」
「話を聞いておられますか?大きくなってと申し上げたはずです」
「ララシャにもルイスにも会わせたいのだ」
「大きくなってからの話です、お引き取りください」
「姪が来ればララシャは喜ぶのだ、どうかお願いだ」
リベルは頭を下げたが、そこまで言うのならという話ではない。
「いい加減にしてください、あなた方は自分たちのことしか考えていない。ましてや、あなたは前科のある身で」
「それはもう過去のことだろう」
「これ以上は国の問題にさせて頂きますよ。婚約者を奪い、今度はソアリスが死に物狂いで産んだ子を、そちらの勝手で奪おうとしていると」
「そっ、それは困る」
「今後、この話は止めてください」
リベル殿下は肩を落として帰って行った。おそらくララシャにまとめて来ると、意気揚々とやって来たのであろう。
「どうだった?」
「ああ、考えてくれるそうだよ」
「本当に?娘はいつこちらに来るかしら?」
ララシャは養子にするわけではないが、すっかりアリルは自分の娘になると信じて疑っていなかった。
「大きくなってから望めばと言われたよ」
「それじゃ駄目よ、ソアリスに早く連れて来るように言って頂戴。私が母親になるから大丈夫よって」
「まだ幼いから、奪うような真似することは出来ないよ」
「あなたは私を奪ったではありませんか!また同じようにすればいいじゃないですか。ソアリスに似ているなら、私にも似ているから、きっと本物よりも素敵な親子になれるわ。ソアリスも喜んで差し出すはずよ」
子が出来ぬことはララシャを都合の良いように考えるようになるには十分だった。第二王子とはいえ、周りに子はまだかと言われ、周囲は当たり前に子が産まれている状況、私は子はおらぬともララシャがいればいいと伝えることしか出来ず、離縁や側妃のことは口に出したことはお互いにない。
兄の王太子が結婚し、男児が生まれると安堵したのも事実。しばらく薄まったが、ララシャに子を望まないということではない。
「子の未来を勝手に決めることはしたくないのです」
「ララシャのためにお願いできぬか、ソアリス妃によく似た子だと聞いている」
アンセムも子が出来ぬことは辛いだろうとは思うが、リベルの目は獰猛にアリルを奪うような目をしていた。
「まさか承諾させて、早くにそちらで教育をなどとお思いではないですよね?」
「いや、それもいいかとは思っている。早くに馴染む方が良いであろう、姉であるララシャもいる訳だし」
「まだ一歳ですよ?母でもないララシャ妃に何が出来るというのです?」
ララシャのためにアリルを与えようと思っているとしか思えない。子どもは物ではない。
「アンセム殿には他に二人もお子がいるではないですか」
「一人くらいいいじゃないかと仰るんですか?逆の立場だったらどうですか」
「無論、逆ならば私は喜んで召し上げたいと思う」
酷い言い方かもしれないが、それは子どもがいないから言える言葉だろう。逆だったら、そんなことを要求することはないが、渡さないと思われる。
「私はそうは思いません、それとソアリスは酷く反対しておりますので、ララシャ妃にもそうお伝えください」
「どうして妹君が反対などと、ララシャは望んでおるのだぞ!」
まるで当たり前のような口ぶりに苛立ちが抑えきれなくなっていた。
「とにかく私も反対、妻も反対です。公爵家にも娘が生まれたそうじゃないですか、そちらに頼んではいかがですか」
「既に会わせたが、兄君の奥方に似ていて、ララシャが望まぬのだ…」
ようやく兄・サイラスにも娘が生まれた。
望む望まないの話ではない、さすがにサイラスも娘をララシャに渡すという選択をするとは思えない。
「はあ、アリルが大きくなって、あの子が納得してという以外は認められません」
「では、まず会わせては貰えないか」
「話を聞いておられますか?大きくなってと申し上げたはずです」
「ララシャにもルイスにも会わせたいのだ」
「大きくなってからの話です、お引き取りください」
「姪が来ればララシャは喜ぶのだ、どうかお願いだ」
リベルは頭を下げたが、そこまで言うのならという話ではない。
「いい加減にしてください、あなた方は自分たちのことしか考えていない。ましてや、あなたは前科のある身で」
「それはもう過去のことだろう」
「これ以上は国の問題にさせて頂きますよ。婚約者を奪い、今度はソアリスが死に物狂いで産んだ子を、そちらの勝手で奪おうとしていると」
「そっ、それは困る」
「今後、この話は止めてください」
リベル殿下は肩を落として帰って行った。おそらくララシャにまとめて来ると、意気揚々とやって来たのであろう。
「どうだった?」
「ああ、考えてくれるそうだよ」
「本当に?娘はいつこちらに来るかしら?」
ララシャは養子にするわけではないが、すっかりアリルは自分の娘になると信じて疑っていなかった。
「大きくなってから望めばと言われたよ」
「それじゃ駄目よ、ソアリスに早く連れて来るように言って頂戴。私が母親になるから大丈夫よって」
「まだ幼いから、奪うような真似することは出来ないよ」
「あなたは私を奪ったではありませんか!また同じようにすればいいじゃないですか。ソアリスに似ているなら、私にも似ているから、きっと本物よりも素敵な親子になれるわ。ソアリスも喜んで差し出すはずよ」
子が出来ぬことはララシャを都合の良いように考えるようになるには十分だった。第二王子とはいえ、周りに子はまだかと言われ、周囲は当たり前に子が産まれている状況、私は子はおらぬともララシャがいればいいと伝えることしか出来ず、離縁や側妃のことは口に出したことはお互いにない。
兄の王太子が結婚し、男児が生まれると安堵したのも事実。しばらく薄まったが、ララシャに子を望まないということではない。
3,093
お気に入りに追加
7,625
あなたにおすすめの小説
「だから結婚は君としただろう?」
イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。
黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。
救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。
プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。
それを。
あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。
アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。
…そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。
けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。
「君を愛することはない」
と。
わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~
志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。
政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。
社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。
ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。
ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。
一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。
リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。
ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。
そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。
王家までも巻き込んだその作戦とは……。
他サイトでも掲載中です。
コメントありがとうございます。
タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。
必ず完結させますので、よろしくお願いします。
婚約者の断罪
玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。
見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。
しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。
親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。
もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。
悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。
ふまさ
恋愛
「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」
ぱさっ。
伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。
「きちんと目は通してもらえましたか?」
「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」
ざわざわ。ざわざわ。
王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。
「──女のカン、というやつでしょうか」
「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」
「素直、とは」
「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」
カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。
「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」
「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」
カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。
「それではどうぞ、お好きになさいませ」
【魅了の令嬢】婚約者を簒奪された私。父も兄も激怒し徹底抗戦。我が家は連戦連敗。でも大逆転。王太子殿下は土下座いたしました。そして私は……。
川嶋マサヒロ
恋愛
「僕たちの婚約を破棄しよう」
愛しき婚約者は無情にも、予測していた言葉を口にした。
伯爵令嬢のバシュラール・ディアーヌは婚約破棄を宣告されてしまう。
「あの女のせいです」
兄は怒り――。
「それほどの話であったのか……」
――父は呆れた。
そして始まる貴族同士の駆け引き。
「ディアーヌの執務室だけど、引き払うように通達を出してくれ。彼女も今は、身の置き所がないだろうしね」
「我が家との取引を中止する? いつでも再開できるように、受け入れ体勢は維持するように」
「決闘か……、子供のころ以来だよ。ワクワクするなあ」
令嬢ディアーヌは、残酷な現実を覆せるのか?
今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~
コトミ
恋愛
結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。
そしてその飛び出した先で出会った人とは?
(できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)
hotランキング1位入りしました。ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる