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婚約者
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「何てことをしてくれたの!ララシャだったらこんなことに」
「…」
「出来損ないなりにやりなさい」
「…」
「何とか言いなさい」
「…」
「どうしてこんなことになったのよ」
帰りの馬車では叩いたことは言わなかったことにホッとはしたが、会話が弾まなかった様子に落胆し、ソアリスを責め立てていた。
「でもソアリスに頼るしかないんだ」
「頼るだなんて、そんな言い方必要ないわ。やるしかないのよ、もう何でもいいから結婚すればいいのよ、恥をかくのはこの子なんだから」
ソアリスはお茶会と言う名のアンセムと話す機会を設けられたが、アンセムはいつもララシャの話を聞いていただけなので、何を話したらいいか分からない、ソアリスはアンセムに何も話すことがないため、やはり会話が成り立たない。
ソアリスは駄目になればいい、他に婚約者が見付かればいいと思っているので、アンセムだけが困り果てることになった。
側近であるオーラン・バースランド侯爵令息とクイオ・リックソー伯爵令息もその様子に、共に打開策を考えていた。
ララシャの情報はあっても、妹であるソアリスの情報は社交界もほぼ欠席、あるのは学園の情報くらいで、成績や親しい友人くらいしか分からなかった。
好きな物も、好きな事も分からない。
ロアンスラー公爵家の嫡男である二人の兄・サイラスは気難しいと言われており、接点もなかった。ララシャも兄とはあまり話すことがないと言っていた。
「無口ではないと言ったのですよね?」
「ああ、余計なことを言うからと」
「何か口止めされているようなことがあるのではないですか?」
「ララシャのことか?」
「いえ、それは今さらないのではないでしょうか。リベル王子殿下は包み隠さず、どうにか譲って欲しいということだったのでしょう?」
「そう聞いている」
リベル王子はララシャに一目惚れし、彼女以外と結婚しないと宣言したそうだ。
さすがにロアンスラー公爵家も勝手は出来ないと、王家に連絡が入り、ピデム王国側は王太子妃を奪うことになることで、慰謝料に加え、有利な輸出入条件や不可侵条約も取り付け、ある意味いい結果になったと言える。
ただし、問題は王太子に婚約者がいなくなることであった。
そこで王家も相応しい令嬢を探したが、高位貴族はララシャに決まっていたために、既に婚約者が結婚している者ばかり。ロアンスラー公爵家も責任から、ララシャと同じ教育を受けていたソアリスが後任となる形になった。
兄弟、姉妹が亡くなったりして、後任になることは貴族ではよくあることだ。
「好きな人がいる、とかでしょうか?」
「ああ…それはあるかもしれぬな、それなのに担ぎ出されて、両親に口止めをされているのかもしれない」
「ですが…」
「言えぬだろうな…はあ、可哀想なことをしたな」
すっかりソアリスには好きな人がいて、その人と結婚したかったとなってしまった。アンセムは結婚を覆すことは出来ない。歩み寄るしかないと腹を括って、正直に話すように促すことにした。
「怒ることはないから、何でも話すといい」
「不敬に問いませんか」
「ああ」
やはり思うところがあるのだろうと、どうにか落としどころを考えなくてはならないと思った。
「私には王太子妃は無理です。教養もありませんし、酷く口も悪いのです。粗相をする前に相応しい方に変わっていただくべきです」
「これから学べば良いであろう、成績は良いと聞いている。口が悪いのは公の場でなければ構わない」
「殿下はよろしいのですか」
「ああ、私は構わない」
ソアリスはララシャのことを愛していたから、どうでもよくなったのだろうと考えた。ララシャは言っていた、一挙手一投足が自分を愛してくれていると言っていると、好きの反対は無関心というのは本当なのであろう。
アンセムはやはり正直に伝えることは出来ないのだろうと、ならば与えられたことだけ、やってくれさえすればいいと思うことにした。
「…」
「出来損ないなりにやりなさい」
「…」
「何とか言いなさい」
「…」
「どうしてこんなことになったのよ」
帰りの馬車では叩いたことは言わなかったことにホッとはしたが、会話が弾まなかった様子に落胆し、ソアリスを責め立てていた。
「でもソアリスに頼るしかないんだ」
「頼るだなんて、そんな言い方必要ないわ。やるしかないのよ、もう何でもいいから結婚すればいいのよ、恥をかくのはこの子なんだから」
ソアリスはお茶会と言う名のアンセムと話す機会を設けられたが、アンセムはいつもララシャの話を聞いていただけなので、何を話したらいいか分からない、ソアリスはアンセムに何も話すことがないため、やはり会話が成り立たない。
ソアリスは駄目になればいい、他に婚約者が見付かればいいと思っているので、アンセムだけが困り果てることになった。
側近であるオーラン・バースランド侯爵令息とクイオ・リックソー伯爵令息もその様子に、共に打開策を考えていた。
ララシャの情報はあっても、妹であるソアリスの情報は社交界もほぼ欠席、あるのは学園の情報くらいで、成績や親しい友人くらいしか分からなかった。
好きな物も、好きな事も分からない。
ロアンスラー公爵家の嫡男である二人の兄・サイラスは気難しいと言われており、接点もなかった。ララシャも兄とはあまり話すことがないと言っていた。
「無口ではないと言ったのですよね?」
「ああ、余計なことを言うからと」
「何か口止めされているようなことがあるのではないですか?」
「ララシャのことか?」
「いえ、それは今さらないのではないでしょうか。リベル王子殿下は包み隠さず、どうにか譲って欲しいということだったのでしょう?」
「そう聞いている」
リベル王子はララシャに一目惚れし、彼女以外と結婚しないと宣言したそうだ。
さすがにロアンスラー公爵家も勝手は出来ないと、王家に連絡が入り、ピデム王国側は王太子妃を奪うことになることで、慰謝料に加え、有利な輸出入条件や不可侵条約も取り付け、ある意味いい結果になったと言える。
ただし、問題は王太子に婚約者がいなくなることであった。
そこで王家も相応しい令嬢を探したが、高位貴族はララシャに決まっていたために、既に婚約者が結婚している者ばかり。ロアンスラー公爵家も責任から、ララシャと同じ教育を受けていたソアリスが後任となる形になった。
兄弟、姉妹が亡くなったりして、後任になることは貴族ではよくあることだ。
「好きな人がいる、とかでしょうか?」
「ああ…それはあるかもしれぬな、それなのに担ぎ出されて、両親に口止めをされているのかもしれない」
「ですが…」
「言えぬだろうな…はあ、可哀想なことをしたな」
すっかりソアリスには好きな人がいて、その人と結婚したかったとなってしまった。アンセムは結婚を覆すことは出来ない。歩み寄るしかないと腹を括って、正直に話すように促すことにした。
「怒ることはないから、何でも話すといい」
「不敬に問いませんか」
「ああ」
やはり思うところがあるのだろうと、どうにか落としどころを考えなくてはならないと思った。
「私には王太子妃は無理です。教養もありませんし、酷く口も悪いのです。粗相をする前に相応しい方に変わっていただくべきです」
「これから学べば良いであろう、成績は良いと聞いている。口が悪いのは公の場でなければ構わない」
「殿下はよろしいのですか」
「ああ、私は構わない」
ソアリスはララシャのことを愛していたから、どうでもよくなったのだろうと考えた。ララシャは言っていた、一挙手一投足が自分を愛してくれていると言っていると、好きの反対は無関心というのは本当なのであろう。
アンセムはやはり正直に伝えることは出来ないのだろうと、ならば与えられたことだけ、やってくれさえすればいいと思うことにした。
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