1 / 395
婚約解消
しおりを挟む
クロンデール王国の王太子の婚約者、ララシャ・ロアンスラーが隣国であるピデム王国の第二王子・リベルに見染められて、隣国にある母の実家の侯爵家でこれから嫁ぐまで過ごすことになったそうだ。
ピデム王国の王家の血筋はハーレムから、ただ唯一を囲うというような少数派の血筋がよく見られるそうだが、傍から見れば何だそれはとしか言いようがない。
リベルは唯一を囲う質だったようで、ララシャとの婚約を強引に進めようとし、ララシャもあまりに求める様子に絆されて、相思相愛となったそうだ。母は母国とピデム王国の交渉のために隣国に滞在している。
ララシャは母国の王太子妃になるために育てられていた。妹・ソアリスはいつも姉のお供だった。ララシャ様の妹、王太子の婚約者の妹。
ソアリスは名前の前に、常に自分ではない何かで表現されていた。
母に事あるごとに比べられた。さすが王太子妃ね、あなたは王太子妃ではないのだから、やっぱり王太子妃には敵わないわねと、それで隣国でも第二王子妃なのだから、ある意味成功しているのだろう。さすが王太子妃になるべくして生まれた女性は違うと思っていた。
しかし、父の発言で事態は一変した。
「ソアリスが王太子妃になるのだ」
昔は素敵だったと言われる父・キリスであるが、年々貧層になっているとも日々思っていたが、そんな人間からふざけた発言を聞くことになるとは思わなかった。
「絶対嫌です!お父様は欠陥品の相応しくない私を、お姉様の代わりにするおつもりですか!」
ソアリスは口が悪いことでロアンスラー公爵邸では、欠陥品と呼ばれていた。
「ララシャが嫁ぐことになったのだから仕方ないんだ」
「王家に仕方のない者を出すつもりで?それって不敬ではないかしら?」
「そ、そんなことは」
「でも、お母様は私を欠陥品だと、お父様もそうおっしゃっていましたよね?」
「そういう仕方ないではなく、断れないのだ。一緒に勉強して来たであろう」
確かに姉のお供という名目で、勉強には付き合ったが、王太子妃教育までは付き添っていない。
「ならば私はこの家から切り捨ててください」
「出て行くというのか」
「ええ、その方が清々しますでしょう?揉め事が起きても関係ないと言えますよ」
「そんなに王太子殿下が嫌か」
「ええ、勿論です」
王太子はララシャに惚れこんでいる人物である。それが妹が代わりでは耐えられぬだろう。なぜか何度か同席したが、私は空気と化した。
妹がずるいずるいと言うという姉妹もいるそうだが、全くずるくはない。ララシャは大変だなと思うばかりで、私の方がなんて向上心もなければ、考えたこともない。
言い寄ったなどと言われては堪らないので、王太子殿下の顔すらしっかり見たこともない。
「有難く受け入れることであって、拒否権などない!これは命令だ!」
「だったらお前が嫁げよ!」
口が達者ではない父はうるさいと叫んで、ドアを閉めて去って行ってしまった。
そして元凶でもあった母・マルシャが帰って来た。
そもそもララシャを隣国に連れて行ったのは母である、第二王子に会わせたのも母、全て母が悪いのではないかと思っている。
「我儘ばっかり言って、キリスがボロボロじゃないの!明日、王宮に行くわよ」
「お母様はお父様のことしか考えていないのね」
「傷付けたのはあなたでしょう」
「もういいです!私はいなかったことにしてください。そうすればお父様が傷付くこともありませんわ」
ソアリスは王太子妃などもってのほか、そもそも貴族令嬢にも向いていない。だからこそソアリスはララシャより二つ年下だったが、婚約者もいなかった。
いずれは揉め事を起こさないためにも、社交を必要としない爵位の低い貴族か、平民に嫁ぐか、働こうと思っていたのだ。
ソアリス自身も両親も、全てはララシャが嫁いでからのつもりであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
ようやく王太子妃の長い連載が一つ終わったので、
また王太子妃の話を新しく投稿させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
ピデム王国の王家の血筋はハーレムから、ただ唯一を囲うというような少数派の血筋がよく見られるそうだが、傍から見れば何だそれはとしか言いようがない。
リベルは唯一を囲う質だったようで、ララシャとの婚約を強引に進めようとし、ララシャもあまりに求める様子に絆されて、相思相愛となったそうだ。母は母国とピデム王国の交渉のために隣国に滞在している。
ララシャは母国の王太子妃になるために育てられていた。妹・ソアリスはいつも姉のお供だった。ララシャ様の妹、王太子の婚約者の妹。
ソアリスは名前の前に、常に自分ではない何かで表現されていた。
母に事あるごとに比べられた。さすが王太子妃ね、あなたは王太子妃ではないのだから、やっぱり王太子妃には敵わないわねと、それで隣国でも第二王子妃なのだから、ある意味成功しているのだろう。さすが王太子妃になるべくして生まれた女性は違うと思っていた。
しかし、父の発言で事態は一変した。
「ソアリスが王太子妃になるのだ」
昔は素敵だったと言われる父・キリスであるが、年々貧層になっているとも日々思っていたが、そんな人間からふざけた発言を聞くことになるとは思わなかった。
「絶対嫌です!お父様は欠陥品の相応しくない私を、お姉様の代わりにするおつもりですか!」
ソアリスは口が悪いことでロアンスラー公爵邸では、欠陥品と呼ばれていた。
「ララシャが嫁ぐことになったのだから仕方ないんだ」
「王家に仕方のない者を出すつもりで?それって不敬ではないかしら?」
「そ、そんなことは」
「でも、お母様は私を欠陥品だと、お父様もそうおっしゃっていましたよね?」
「そういう仕方ないではなく、断れないのだ。一緒に勉強して来たであろう」
確かに姉のお供という名目で、勉強には付き合ったが、王太子妃教育までは付き添っていない。
「ならば私はこの家から切り捨ててください」
「出て行くというのか」
「ええ、その方が清々しますでしょう?揉め事が起きても関係ないと言えますよ」
「そんなに王太子殿下が嫌か」
「ええ、勿論です」
王太子はララシャに惚れこんでいる人物である。それが妹が代わりでは耐えられぬだろう。なぜか何度か同席したが、私は空気と化した。
妹がずるいずるいと言うという姉妹もいるそうだが、全くずるくはない。ララシャは大変だなと思うばかりで、私の方がなんて向上心もなければ、考えたこともない。
言い寄ったなどと言われては堪らないので、王太子殿下の顔すらしっかり見たこともない。
「有難く受け入れることであって、拒否権などない!これは命令だ!」
「だったらお前が嫁げよ!」
口が達者ではない父はうるさいと叫んで、ドアを閉めて去って行ってしまった。
そして元凶でもあった母・マルシャが帰って来た。
そもそもララシャを隣国に連れて行ったのは母である、第二王子に会わせたのも母、全て母が悪いのではないかと思っている。
「我儘ばっかり言って、キリスがボロボロじゃないの!明日、王宮に行くわよ」
「お母様はお父様のことしか考えていないのね」
「傷付けたのはあなたでしょう」
「もういいです!私はいなかったことにしてください。そうすればお父様が傷付くこともありませんわ」
ソアリスは王太子妃などもってのほか、そもそも貴族令嬢にも向いていない。だからこそソアリスはララシャより二つ年下だったが、婚約者もいなかった。
いずれは揉め事を起こさないためにも、社交を必要としない爵位の低い貴族か、平民に嫁ぐか、働こうと思っていたのだ。
ソアリス自身も両親も、全てはララシャが嫁いでからのつもりであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます。
ようやく王太子妃の長い連載が一つ終わったので、
また王太子妃の話を新しく投稿させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
3,186
お気に入りに追加
8,471
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木あかり
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
さげわたし
凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。
今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。
だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。
実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。
そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。
※こちらも不定期更新です。
連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。
相手不在で進んでいく婚約解消物語
キムラましゅろう
恋愛
自分の目で確かめるなんて言わなければよかった。
噂が真実かなんて、そんなこと他の誰かに確認して貰えばよかった。
今、わたしの目の前にある光景が、それが単なる噂では無かったと物語る……。
王都で近衛騎士として働く婚約者に恋人が出来たという噂を確かめるべく単身王都へ乗り込んだリリーが見たものは、婚約者のグレインが恋人と噂される女性の肩を抱いて歩く姿だった……。
噂が真実と確信したリリーは領地に戻り、居候先の家族を巻き込んで婚約解消へと向けて動き出す。
婚約者は遠く離れている為に不在だけど……☆
これは婚約者の心変わりを知った直後から、幸せになれる道を模索して突き進むリリーの数日間の物語である。
果たしてリリーは幸せになれるのか。
5〜7話くらいで完結を予定しているど短編です。
完全ご都合主義、完全ノーリアリティでラストまで作者も突き進みます。
作中に現代的な言葉が出て来ても気にしてはいけません。
全て大らかな心で受け止めて下さい。
小説家になろうサンでも投稿します。
R15は念のため……。
【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!
ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のマリーは、バツイチで気難しいと有名のタングール伯爵と結婚させられた。
数年後、マリーは結婚生活に不満を募らせていた。
子供達と離れたくないために我慢して結婚生活を続けていたマリーは、更に、男児が誕生せずに義母に嫌味を言われる日々。
そんなある日、ある出来事がきっかけでマリーは離縁することとなる。
離婚を迫られるマリーは、子供達と離れたくないと侍女として雇って貰うことを伯爵に頼むのだった……
侍女として働く中で見えてくる伯爵の本来の姿。そしてマリーの心は変化していく……
そんな矢先、伯爵の新たな婚約者が屋敷へやって来た。
そして、伯爵はマリーへ意外な提案をして……!?
※毎日投稿&完結を目指します
※毎朝6時投稿
※2023.6.22完結
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。
傷物にされた私は幸せを掴む
コトミ
恋愛
エミリア・フィナリーは子爵家の二人姉妹の姉で、妹のために我慢していた。両親は真面目でおとなしいエミリアよりも、明るくて可愛い双子の妹である次女のミアを溺愛していた。そんな中でもエミリアは長女のために子爵家の婿取りをしなくてはいけなかったために、同じく子爵家の次男との婚約が決まっていた。その子爵家の次男はルイと言い、エミリアにはとても優しくしていた。顔も良くて、エミリアは少し自慢に思っていた。エミリアが十七になり、結婚も近くなってきた冬の日に事件が起き、大きな傷を負う事になる。
(ここまで読んでいただきありがとうございます。妹ざまあ、展開です。本編も読んでいただけると嬉しいです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる