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姉の最終手段
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アイレットとレオは、マリアリージュ教会での結婚式を終え、クリスティアナ教会での結婚式の日となった。両親は両方に出席したが、親族は母国のみの出席となる。
アイレットたちはホテル泊まりだったが、レオが家族とも話すことがあるだろうと、アイレットは侯爵邸に早めに行くことになった。
「アイレット!」
アデリーナはアイレットを見付けると、目を吊り上げ、大きな声で呼び付け、アイレットに向かって行った。
「アデリーナ、いい加減にしなさい!」
さすがに余計なことしか言わなそうな雰囲気に、父親が怒鳴りつけたが、アデリーナは止まらない。
「お姉様、何でしょうか」
「話があるの」
「アデリーナ!!」
「私は構いません、伺いましょう」
アデリーナは二人きりにして欲しいと言ったが、大公家も侯爵家もさすがに出来ないとアデリーナは自身の侍女を同席させ、納得させた。
「大公閣下を私に譲りなさい」
「譲るとは?」
「察しの悪い子ね!大公閣下には私の方がお似合いなの、だから私に譲るのよ」
アイレットは兄たちとは前よりも距離は出来たが、きちんと会話が出来るようになっていたが、アデリーナとは何年も会っていなかった。
教会に訪れるグランダール公爵夫人から文句を言いながら、勤めていると聞いてはいたが、お馴染みの口振りに、結局は変わっていないのだと察した。
「私の夫を譲って欲しいと言っているのですね、なぜですか?お姉様は私に譲られるほど、落ちぶれてはいませんでしょう?」
「はあ?」
「違いますか?お姉様にとって私は不出来で、馬鹿にしていい存在、そうでしょう?そんな妹に譲って貰うのですか?」
「じゃあ、寄こしなさい」
言っていておかしいと思わないのだろうか、我は強いが、頭の悪い人ではなかったはずだ。
「同じことですよ。どうしても、欲しいならば大公閣下に話せばいいではありませんか、なぜそうしないのですか?」
「あなたが奪ったのよ!私の相手を!」
「大公閣下と縁談があったのですか?」
「そうよ!」
アイレットはそのような話を一切聞いたこともないが、あったとしても、整っていないということは縁談はなくなったということではないかと思った。
「アイレット様、そのような縁談はございません。アデリーナ様の妄想です」
声を上げたのはアデリーナが同席させると言った侍女だった。
「マリー!」
「嘘はいけません!相手は大公家ですよ、咎めずにどうするのですか」
「あなた、誰の侍女なのよ!」
「アデリーナ様の侍女ですが、雇って給金を払っているのは侯爵様ですので」
アデリーナの側で見掛けたことのある侍女ではあったが、きちんと職務を全うする侍女だとは知らなかった。
「お姉様、どうされたのですか?あなたは誇り高い方ではありませんでしたか?」
「そうよ、だから私には大公閣下が相応しいのよ!」
頭に血が上っているアデリーナは、嘘を付き、妄想だと言われても、恥ずかしいとも思えないようであった。
「誇り高いアデリーナ・マスタールが、嘘を付いて、妹の夫を強請るような真似をしていいのですか?それはお姉様の言う恥ずかしい真似ではありませんか?正義のマスタール侯爵家に泥を塗る行為ではありませんか?」
「そっ、それは…」
正義感に溢れる姉を刺激するには、一番有効的な言葉を使った。
「もし譲られたとして、お姉様は妹に夫を譲って貰ったとして生きていけるのですか?ひそひそと言われ、面と向かって言う人もいるかもしれません。あの方は不出来な妹に夫を譲って貰ったのだと、それほどに困っていたのだと」
「そ、そんなこと!」
「お姉様の方がよくご存知でしょう?社交界というのはそういうものですよ。耐えられますか?」
「…」
「お姉様は誇り高い方のはずです。落ち着いて客観的にお考えになってください」
マリーはアイレットが言い返せないのではないかと思っていたが、アデリーナを弱点をよく分かっていて、且つ修道女の諭すような口振りに、侯爵令嬢と修道女の合わせ技で、暴論を振りかざすアデリーナが、勝てるはずがないと思った。
アイレットたちはホテル泊まりだったが、レオが家族とも話すことがあるだろうと、アイレットは侯爵邸に早めに行くことになった。
「アイレット!」
アデリーナはアイレットを見付けると、目を吊り上げ、大きな声で呼び付け、アイレットに向かって行った。
「アデリーナ、いい加減にしなさい!」
さすがに余計なことしか言わなそうな雰囲気に、父親が怒鳴りつけたが、アデリーナは止まらない。
「お姉様、何でしょうか」
「話があるの」
「アデリーナ!!」
「私は構いません、伺いましょう」
アデリーナは二人きりにして欲しいと言ったが、大公家も侯爵家もさすがに出来ないとアデリーナは自身の侍女を同席させ、納得させた。
「大公閣下を私に譲りなさい」
「譲るとは?」
「察しの悪い子ね!大公閣下には私の方がお似合いなの、だから私に譲るのよ」
アイレットは兄たちとは前よりも距離は出来たが、きちんと会話が出来るようになっていたが、アデリーナとは何年も会っていなかった。
教会に訪れるグランダール公爵夫人から文句を言いながら、勤めていると聞いてはいたが、お馴染みの口振りに、結局は変わっていないのだと察した。
「私の夫を譲って欲しいと言っているのですね、なぜですか?お姉様は私に譲られるほど、落ちぶれてはいませんでしょう?」
「はあ?」
「違いますか?お姉様にとって私は不出来で、馬鹿にしていい存在、そうでしょう?そんな妹に譲って貰うのですか?」
「じゃあ、寄こしなさい」
言っていておかしいと思わないのだろうか、我は強いが、頭の悪い人ではなかったはずだ。
「同じことですよ。どうしても、欲しいならば大公閣下に話せばいいではありませんか、なぜそうしないのですか?」
「あなたが奪ったのよ!私の相手を!」
「大公閣下と縁談があったのですか?」
「そうよ!」
アイレットはそのような話を一切聞いたこともないが、あったとしても、整っていないということは縁談はなくなったということではないかと思った。
「アイレット様、そのような縁談はございません。アデリーナ様の妄想です」
声を上げたのはアデリーナが同席させると言った侍女だった。
「マリー!」
「嘘はいけません!相手は大公家ですよ、咎めずにどうするのですか」
「あなた、誰の侍女なのよ!」
「アデリーナ様の侍女ですが、雇って給金を払っているのは侯爵様ですので」
アデリーナの側で見掛けたことのある侍女ではあったが、きちんと職務を全うする侍女だとは知らなかった。
「お姉様、どうされたのですか?あなたは誇り高い方ではありませんでしたか?」
「そうよ、だから私には大公閣下が相応しいのよ!」
頭に血が上っているアデリーナは、嘘を付き、妄想だと言われても、恥ずかしいとも思えないようであった。
「誇り高いアデリーナ・マスタールが、嘘を付いて、妹の夫を強請るような真似をしていいのですか?それはお姉様の言う恥ずかしい真似ではありませんか?正義のマスタール侯爵家に泥を塗る行為ではありませんか?」
「そっ、それは…」
正義感に溢れる姉を刺激するには、一番有効的な言葉を使った。
「もし譲られたとして、お姉様は妹に夫を譲って貰ったとして生きていけるのですか?ひそひそと言われ、面と向かって言う人もいるかもしれません。あの方は不出来な妹に夫を譲って貰ったのだと、それほどに困っていたのだと」
「そ、そんなこと!」
「お姉様の方がよくご存知でしょう?社交界というのはそういうものですよ。耐えられますか?」
「…」
「お姉様は誇り高い方のはずです。落ち着いて客観的にお考えになってください」
マリーはアイレットが言い返せないのではないかと思っていたが、アデリーナを弱点をよく分かっていて、且つ修道女の諭すような口振りに、侯爵令嬢と修道女の合わせ技で、暴論を振りかざすアデリーナが、勝てるはずがないと思った。
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