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妹の告白1
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「ですが、皆様の力あってこそです」
「勿論です。ですが、わざわざ来ていただいて、教えを乞うたのはこちらです。顔を出そうかと思ったのですが、邪魔をしてはならないと我慢しておりました。牧師から大成功だったと聞き、感謝されました」
「はい、おかげさまで、うまく軌道に乗せられたと思います。助言をいただいたのですよね?」
「是非、取り入れたいと申しました」
「さようですか、ありがとうございます」
「いえ、あっ、冷めない内にどうぞ」
護衛は隣に控えているのか、姿がなく、給仕も終われば去って行き、相手が修道女ということで、醜聞にはならないのだろう。
二人は同じ食事を楽しみながら、こちらのパン屋がお洒落で驚いたことや、ノワソ伯爵のことなどを話した。
「第三者の機関の話も現実になりそうです」
「それは良かったです」
食後のお茶を飲みながら、一息付くと、ローグレイン大公閣下は何か言いたそうな顔をしていた。
「何か聞きたいことがありますか」
「…どうして修道女になられたのですか?」
「そうですね…」
「言い難いことでしょうか」
「いえ、信じては貰えないだろうと思っております。いつか誰かに聞いて貰いたい気もしていたのです。異国の地の閣下にならば、話してみようかと葛藤しております」
「複雑な話ですか」
「はい、信じなくてもいいので、聞いて貰えますか」
「はい」
アイレットはローグレイン大公閣下を真っ直ぐに見つめて話し始めた。
「私はこの前に生きた人生を覚えております。その人生を終えて、今の人生を歩んでおります。信じていただけますか?」
「生まれ変わったと?」
嘘を言っているようには見えない、そもそもそんな嘘を付く必要もない。
「はい、罪深き生涯でした」
「罪…」
「はい、罪人でした。処刑、いえ、私刑というのでしょうか、殺されています」
「殺された?」
物騒な話になって来た、事実であれば、なかなか口に出すことは憚られるだろう。
「はい、私の前の名は…ミジュリアン・バートロです」
「バートロ…」
まさかあのバートロ伯爵家の娘だったというのか。バートロ伯爵家の領地は子どもの連れ去りが多発し、治安が悪く、災害が起きても、何もしておらず、それなのに自分たちは豪遊をし、クーデターが起きた。
領民はずっと声を上げていたという、国は何をしていたのかと思ったが、調査は行われていたが、その前にクーデターが起きてしまったと聞いている。
「はい、あのバートロ伯爵の娘でした」
「確かクーデターの際に亡くなったと、まさかだから冤罪に気付いた?」
だからこそ些細なことに気付けたのか、裏付けは彼女の中にあったのか。
「はい、あれはただのズルです。私は父がワインを密輸することはないと思いました。証拠として書かれていたワイン貯蔵庫がないことも、父たちがワインを嫌悪しているのも知っていたからです。でもどうしてかは説明が出来なかったのです」
「あなたが見なければ分からなかった」
「それはそうかもしれませんが、罪を少しでも軽くしたかっただけかもしれません」
いつか見付かったかもしれないが、このタイミングで見付かったのは彼女の力だろう。罪を軽くするにしても、皆この世にはもういないのだ。
「亡くなったのは何歳ですか」
「13歳です」
「何も知り得なかったのではありませんか」
13歳に何が出来るというのだという思いと、抗えない生まれて来た宿命も、残念ながらある。
「詳しいことは知りませんでした。でも父の怒鳴りつける声や、外には出るなと言われていたこと、何かあるのだとは思っていました」
「でもおかげで今回の事件は公になった」
「偶然です。あんなことになるとは私も思っていませんでした」
「処刑は行われたそうです。公開処刑にはならなかったそうですが、皆、同日に施行されたそうです」
「そうでしたか…もういないのですね」
「勿論です。ですが、わざわざ来ていただいて、教えを乞うたのはこちらです。顔を出そうかと思ったのですが、邪魔をしてはならないと我慢しておりました。牧師から大成功だったと聞き、感謝されました」
「はい、おかげさまで、うまく軌道に乗せられたと思います。助言をいただいたのですよね?」
「是非、取り入れたいと申しました」
「さようですか、ありがとうございます」
「いえ、あっ、冷めない内にどうぞ」
護衛は隣に控えているのか、姿がなく、給仕も終われば去って行き、相手が修道女ということで、醜聞にはならないのだろう。
二人は同じ食事を楽しみながら、こちらのパン屋がお洒落で驚いたことや、ノワソ伯爵のことなどを話した。
「第三者の機関の話も現実になりそうです」
「それは良かったです」
食後のお茶を飲みながら、一息付くと、ローグレイン大公閣下は何か言いたそうな顔をしていた。
「何か聞きたいことがありますか」
「…どうして修道女になられたのですか?」
「そうですね…」
「言い難いことでしょうか」
「いえ、信じては貰えないだろうと思っております。いつか誰かに聞いて貰いたい気もしていたのです。異国の地の閣下にならば、話してみようかと葛藤しております」
「複雑な話ですか」
「はい、信じなくてもいいので、聞いて貰えますか」
「はい」
アイレットはローグレイン大公閣下を真っ直ぐに見つめて話し始めた。
「私はこの前に生きた人生を覚えております。その人生を終えて、今の人生を歩んでおります。信じていただけますか?」
「生まれ変わったと?」
嘘を言っているようには見えない、そもそもそんな嘘を付く必要もない。
「はい、罪深き生涯でした」
「罪…」
「はい、罪人でした。処刑、いえ、私刑というのでしょうか、殺されています」
「殺された?」
物騒な話になって来た、事実であれば、なかなか口に出すことは憚られるだろう。
「はい、私の前の名は…ミジュリアン・バートロです」
「バートロ…」
まさかあのバートロ伯爵家の娘だったというのか。バートロ伯爵家の領地は子どもの連れ去りが多発し、治安が悪く、災害が起きても、何もしておらず、それなのに自分たちは豪遊をし、クーデターが起きた。
領民はずっと声を上げていたという、国は何をしていたのかと思ったが、調査は行われていたが、その前にクーデターが起きてしまったと聞いている。
「はい、あのバートロ伯爵の娘でした」
「確かクーデターの際に亡くなったと、まさかだから冤罪に気付いた?」
だからこそ些細なことに気付けたのか、裏付けは彼女の中にあったのか。
「はい、あれはただのズルです。私は父がワインを密輸することはないと思いました。証拠として書かれていたワイン貯蔵庫がないことも、父たちがワインを嫌悪しているのも知っていたからです。でもどうしてかは説明が出来なかったのです」
「あなたが見なければ分からなかった」
「それはそうかもしれませんが、罪を少しでも軽くしたかっただけかもしれません」
いつか見付かったかもしれないが、このタイミングで見付かったのは彼女の力だろう。罪を軽くするにしても、皆この世にはもういないのだ。
「亡くなったのは何歳ですか」
「13歳です」
「何も知り得なかったのではありませんか」
13歳に何が出来るというのだという思いと、抗えない生まれて来た宿命も、残念ながらある。
「詳しいことは知りませんでした。でも父の怒鳴りつける声や、外には出るなと言われていたこと、何かあるのだとは思っていました」
「でもおかげで今回の事件は公になった」
「偶然です。あんなことになるとは私も思っていませんでした」
「処刑は行われたそうです。公開処刑にはならなかったそうですが、皆、同日に施行されたそうです」
「そうでしたか…もういないのですね」
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