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マリアリージュ教会1
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アイレットは旅の支度はしたが、移動中は任せたらいいという牧師様の言葉を信じ、言われるがまま馬車に乗っていた。教会で休みながら進むのかと思っていたが、なぜだか良いホテルを経由しながら、優雅にヒルズ王国に到着した。
招かれた他国のことなので、口には出さなかったが、さすがに待遇が良すぎないかとは思っていた。
ヒルズ王国と実家や公爵家から援助金が出ていることは伝えられていないので、アイレットは常にいいのかなという表情をしたままだった。
そして、ついにマリアリージュ教会に着き、牧師や修道女の姿を見て、ホッとした。
「長旅、お疲れ様でした」
「お招きありがとうございます。とてもいい旅でした」
「それはようございました、部屋を用意してありますので、今日はいかがしますか。お疲れでしたらお休みになっていただいて構いません」
「いえ、時間は限られておりますので、可能であれば参考になるようなお店を見せていただきたのですか」
「勿論です、修道女たちとどこがいいか考えておりましたので、絞った3店を案内いたします」
既にどのような内容なのかは教会に伝えられており、皆とても興味を示していると連絡を貰っていた。
「ありがとうございます。パン屋以外でも考えておりましたが、他に何かありますでしょうか」
「私たちも集まって考えてはみたのですが、パン屋が一番身近で、子どもも喜ぶのではないかと思います」
「承知しました」
ヒルズ王国も主食はパンであり、パン屋でも問題ないと思うが、もしも他に何かあれば変更しようと考えていた。
アイレットは修道女二人と、護衛とパン屋を見せて貰うことになった。
2店は母国よりも内装や配置はお洒落ではあったが、パンはトレイではなく籠に入れ、パンの種類はあまり変わらなかった。ただ残る1店は大きく、2店よりも店構えも、パン屋というよりはブティックのようであった。
パンも見た目に凝っており、フルーツや見たこともない粒のようなものが乗っているデニッシュや、サンドウィッチ、ホットドック、ドーナツと、種類も豊富。
「ここは最新型ですか?」
「ふふふ、ここは今一番のお洒落パン屋だそうです。値段も高いですが、凝ったパンが多いそうです」
「勿論、味も美味しいそうです」
「購入後は箱に入れるのですね」
「はい、あの箱もお洒落アイテムだそうです」
「持って歩くことで宣伝になりますからね」
長いパンは袋に入れるが、他のパンは茶色に地図のようなものが書いてある箱に、購入した商品を店員が入れて、客に渡すスタイルとなっている。
「なるほど…さすがヒルズ王国ですね、是非、取り入れたいですね」
「食べたいではないのですね」
「いえ、食べてもみたいです。いくつかは買えそうですが…」
アイレットもお金は持って来ていたが、沢山買えるほどは持っていない。
「アイレット様、予算をいただいていますので、買えますよ」
「本当ですか…デッサンだけさせて貰えないかと思ったのですが」
「いえ、買いましょう」
なるべく分かり易くて、作り易そうなものを選んで、購入しようということになり、店の許可は得ていたが、修道女が熱心に選ぶ様子に、ちょうど来ていたオーナーが顔を出した。
「ご相談に乗りましょうか」
「オーナーのノワソ伯爵様です」
「オプティ王国の修道女、アイレットと申します。パンの味を盗む真似は致しませんので、お許しください」
「いえ、見学と伺っておりましたが」
「教会でパンを使った授業を考えておりまして、こちらのパンも素晴らしいので、取り入れさせていただこうと思いまして」
「パンを?」
「これです」
アイレットはポケットに入れていた、少し小ぶりなクロワッサンを取り出し、掌に乗せると、ノワソ伯爵は身を乗り出してじっと見つめた。
招かれた他国のことなので、口には出さなかったが、さすがに待遇が良すぎないかとは思っていた。
ヒルズ王国と実家や公爵家から援助金が出ていることは伝えられていないので、アイレットは常にいいのかなという表情をしたままだった。
そして、ついにマリアリージュ教会に着き、牧師や修道女の姿を見て、ホッとした。
「長旅、お疲れ様でした」
「お招きありがとうございます。とてもいい旅でした」
「それはようございました、部屋を用意してありますので、今日はいかがしますか。お疲れでしたらお休みになっていただいて構いません」
「いえ、時間は限られておりますので、可能であれば参考になるようなお店を見せていただきたのですか」
「勿論です、修道女たちとどこがいいか考えておりましたので、絞った3店を案内いたします」
既にどのような内容なのかは教会に伝えられており、皆とても興味を示していると連絡を貰っていた。
「ありがとうございます。パン屋以外でも考えておりましたが、他に何かありますでしょうか」
「私たちも集まって考えてはみたのですが、パン屋が一番身近で、子どもも喜ぶのではないかと思います」
「承知しました」
ヒルズ王国も主食はパンであり、パン屋でも問題ないと思うが、もしも他に何かあれば変更しようと考えていた。
アイレットは修道女二人と、護衛とパン屋を見せて貰うことになった。
2店は母国よりも内装や配置はお洒落ではあったが、パンはトレイではなく籠に入れ、パンの種類はあまり変わらなかった。ただ残る1店は大きく、2店よりも店構えも、パン屋というよりはブティックのようであった。
パンも見た目に凝っており、フルーツや見たこともない粒のようなものが乗っているデニッシュや、サンドウィッチ、ホットドック、ドーナツと、種類も豊富。
「ここは最新型ですか?」
「ふふふ、ここは今一番のお洒落パン屋だそうです。値段も高いですが、凝ったパンが多いそうです」
「勿論、味も美味しいそうです」
「購入後は箱に入れるのですね」
「はい、あの箱もお洒落アイテムだそうです」
「持って歩くことで宣伝になりますからね」
長いパンは袋に入れるが、他のパンは茶色に地図のようなものが書いてある箱に、購入した商品を店員が入れて、客に渡すスタイルとなっている。
「なるほど…さすがヒルズ王国ですね、是非、取り入れたいですね」
「食べたいではないのですね」
「いえ、食べてもみたいです。いくつかは買えそうですが…」
アイレットもお金は持って来ていたが、沢山買えるほどは持っていない。
「アイレット様、予算をいただいていますので、買えますよ」
「本当ですか…デッサンだけさせて貰えないかと思ったのですが」
「いえ、買いましょう」
なるべく分かり易くて、作り易そうなものを選んで、購入しようということになり、店の許可は得ていたが、修道女が熱心に選ぶ様子に、ちょうど来ていたオーナーが顔を出した。
「ご相談に乗りましょうか」
「オーナーのノワソ伯爵様です」
「オプティ王国の修道女、アイレットと申します。パンの味を盗む真似は致しませんので、お許しください」
「いえ、見学と伺っておりましたが」
「教会でパンを使った授業を考えておりまして、こちらのパンも素晴らしいので、取り入れさせていただこうと思いまして」
「パンを?」
「これです」
アイレットはポケットに入れていた、少し小ぶりなクロワッサンを取り出し、掌に乗せると、ノワソ伯爵は身を乗り出してじっと見つめた。
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