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変わらない姉

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「この頃はハービスも落ち着いて、再婚を前向きに考えているようですし、問題はアデリーナだけです」

 ハービスもさすがにリリンナのことは後を引き、何か気付けたのではないかと責任を感じ、人前では気を張っていたが、疲弊した様子だった。

 だが友人との関係もようやく修復され、リリンナのことも被害者だと認識されているため、再婚も叶うことだろう。

「滑稽なものだな。大公閣下にいいところを見せようと、必死で会いに行ったアデリーナと、会いに来られたアイレット」
「二人が関わることはないでしょうから、嫌な思いをさせなくて済むことだけが救いですわね。アイレットが気にしなくとも、姉が手柄にしようとしたなんて…」

 両親は未だにアデリーナが信じられない、あの後も嘘だったと言って来ることもなければ、文句ばかりで、何もなかったかのように振舞えるのかが分からない。

「なぜあんな浅ましい真似が出来るのかが分からない」
「グランダール夫人からは苦情はないか」
「時折、反抗的な目をしていることはあるようですが、言われたことは真面目にやっているようです」
「はあ…」
「夜会はどうしますか」

 約三ヶ月後に久しぶりに王家主催の大規模な夜会がある。その前におそらく、ソック伯爵やコイナー子爵は処刑が施行されるはずだ。

 冤罪も証拠や、証言、食い違いなどを徹底的に調べ、既に剥奪された家門ではあるが、バートロ伯爵家、サオン子爵家、そしてこちらも既にないカットリーオ商会の罪は訂正されたいう。

「夫人からも令嬢として夜会などは出席していいと言われているから、出席させるしかないな」
「少しは変わってくれるといいのですけど」
「誰が何を言っても思考というものは、変えられないものなのか…」

 アイレットは数冊の本を抱えて戻って行き、両親はまたいつでも帰って来て欲しいと、ヒルズ王国のことも聞かせて欲しいと、アイレットを見送った。

 数時間後、何も知らないアデリーナが帰って来て、今日の愚痴を言っている。

「今日も疲れたわ、人使いが荒いのよ!どうして私がこんな目に」

 そう言いながらもミージュリアン・グランダールに従い、社交界での影響力も知っているため、機嫌を損なえば、結婚出来なくなると思い、言われた仕事はアデリーナなりに頑張って行っている。

 とは言っても、思考や発言、自分が正しいという思いの強さに問題はあるものの、礼儀作法は身に付けているため、お茶の入れ方や付き添いなどが、主な仕事である。それでも自由を制限されることはアデリーナにとって、非常に苦しい時間となる。

 同じメイドもさすがに侯爵家はいないが、伯爵家、子爵家の者たちで、公爵家の縁者もいるため、報告される可能性も考えて、傲慢さは鳴りを潜めている。

「今日も縁談の申し込みはない」

 毎日毎日、いつまで続くのですかと聞いて来るため、両親は面倒になって、毎日縁談の申し込みはなかったと答えるようになっている。

 意見交換会に来ていた貴族は完全にアデリーナは虚言癖のある、妹の手柄を横取りするような人間だと認識されており、特に何か言って来ることはないが、また評価は下がっている。

 父はアイレットのように生き甲斐を見付け、その上で納得した、いい相手と結婚してくれたらと思ってはいるが、アデリーナは変わる様子は今のところ見えない。

 アイレットはヒルズ王国の迎えがやって来て、前世も含めての初めての国外へ出ることになった。

 そして、アイレットがヒルズ王国に行っている間に、ついにソック伯爵、夫人、前伯爵とコイナー子爵、夫人、娘二人は処刑された。
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