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クリスティアナ教会1
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フォリッチ公爵と、ローグレイン大公閣下はお忍びの視察で、クリスティアナ教会へやって来た。牧師には連絡をしてあり、アイレットが対応することになっている。
「レオ・ライプ・ローグレインです」
「初めまして、アイレットと申します」
アイレットは修道服に身を包んでいたが、少し腰を落として挨拶をした。貴族令嬢ではないが、相手が誰か分かっていての礼儀である。
「どうして、大公閣下がと思っていることでしょう」
「はい…」
「学園でのことを聞きまして、お会いしてみたいと私が希望したのです」
頭巾をかぶっているため、顔しか見えないが、それだけでも平民とは言い難い、高貴さを残しながら、美しい顔立ちをしている。
「学園ですか?」
アイレットは不思議そうな顔をして、二人の顔を見詰めている。
「カウンセラーのことを、パルシエが話しまして」
「ああ…ですが、カウンセラーは元々おりました。増やしてはどうかとは言いましたが、実際に増やしたのは学園長です」
姉とは似ていなくもないが、姉の方は気の強さが表情や言動に現れて不快だったが、妹の方はどちらかというと淡々としている。
「双方に付けるように進言されたのですよね?なぜですか」
「はい、心が壊れているのは傷付けた者もだと思ったので、両方に付けて欲しいと言いました」
「傷付けた者がおかしいと?」
「何の感情もないのに嫌がらせをする人もいるかもしれませんが、皆、理由があってすることが多いではないですか。自分の好きな人がその人を好きだとか、ただ異性に人気があるとか」
「言い方が気に入らないとか、自分より出来るのが苛立つとか?」
本当に些細なことから、嫌がらせは始まる。ありもしない噂や、誇張した噂を流して、口での暴力、手をあげる暴力を行う。
「はい。理屈上では、傷付けようとした者がいなければ、傷付けられた者は存在しなかった。痛みを知るべきではないか」
「その通りですね」
理論上だとしても、上手くいかなくとも、何もしないより余程いい。
「同じ体験をする魔法でもあればいいですが、そんなものはありませんから、専門家に任せただけです」
「心のケアは非常に難しい。我が国でも爵位の関係で黙る者もおります」
家のことで脅されれば、黙るしかない。そこまで裁判官は介入できない。
「ですので第三者、学園で言えば、カウンセラーの信用を確立することが必要でした。後は保険医の協力もありました」
「なるほど…第三者の機関を設置して、別の角度からも調査する…」
それはいい考えかもしれない。そして、姉の言ったことは虚言だと確信した。
特別チームを作って、調査をさせ、公表する。まずは信用のために結果を出さなくてはならない。
「繋がりがなく、専門家…きちんとした人を置かなくてはなりませんね、お金で動くようなことがないように」
「はい、冤罪を生んでは意味がありません。弱者でも強者の味方でもない、まして正義の味方でもない、事実を導ける人を選ぶべきです」
「…はい」
フォリッチ公爵も深く頷いており、マスタール侯爵家を切りつけるような言い方だが、だからこそ彼女は何かを動かすものを持っているのだろう。
「フォリッチ公爵から伺いましたが、冤罪が紛れていたことに気付かれたのも、あなただと」
「あれは偶然です。家でよくバートロ伯爵家のことは聞いていましたから、隅々まで読んでいて、運よく気が付いただけです。裁判でもありませんか、些細なことがきっかけで、事実が出て来るようなことが」
「ありますね」
ペン一本で、証言一つで、急に事態が動くこともある。
「閣下、そろそろ」
「もっと話していたいところですが、仕方ありませんね」
「視察ですから、最後に授業を見て行かれてはどうですか?」
フォリッチ公爵は急かしたくせに、にこやかな笑顔で、問うている。
「レオ・ライプ・ローグレインです」
「初めまして、アイレットと申します」
アイレットは修道服に身を包んでいたが、少し腰を落として挨拶をした。貴族令嬢ではないが、相手が誰か分かっていての礼儀である。
「どうして、大公閣下がと思っていることでしょう」
「はい…」
「学園でのことを聞きまして、お会いしてみたいと私が希望したのです」
頭巾をかぶっているため、顔しか見えないが、それだけでも平民とは言い難い、高貴さを残しながら、美しい顔立ちをしている。
「学園ですか?」
アイレットは不思議そうな顔をして、二人の顔を見詰めている。
「カウンセラーのことを、パルシエが話しまして」
「ああ…ですが、カウンセラーは元々おりました。増やしてはどうかとは言いましたが、実際に増やしたのは学園長です」
姉とは似ていなくもないが、姉の方は気の強さが表情や言動に現れて不快だったが、妹の方はどちらかというと淡々としている。
「双方に付けるように進言されたのですよね?なぜですか」
「はい、心が壊れているのは傷付けた者もだと思ったので、両方に付けて欲しいと言いました」
「傷付けた者がおかしいと?」
「何の感情もないのに嫌がらせをする人もいるかもしれませんが、皆、理由があってすることが多いではないですか。自分の好きな人がその人を好きだとか、ただ異性に人気があるとか」
「言い方が気に入らないとか、自分より出来るのが苛立つとか?」
本当に些細なことから、嫌がらせは始まる。ありもしない噂や、誇張した噂を流して、口での暴力、手をあげる暴力を行う。
「はい。理屈上では、傷付けようとした者がいなければ、傷付けられた者は存在しなかった。痛みを知るべきではないか」
「その通りですね」
理論上だとしても、上手くいかなくとも、何もしないより余程いい。
「同じ体験をする魔法でもあればいいですが、そんなものはありませんから、専門家に任せただけです」
「心のケアは非常に難しい。我が国でも爵位の関係で黙る者もおります」
家のことで脅されれば、黙るしかない。そこまで裁判官は介入できない。
「ですので第三者、学園で言えば、カウンセラーの信用を確立することが必要でした。後は保険医の協力もありました」
「なるほど…第三者の機関を設置して、別の角度からも調査する…」
それはいい考えかもしれない。そして、姉の言ったことは虚言だと確信した。
特別チームを作って、調査をさせ、公表する。まずは信用のために結果を出さなくてはならない。
「繋がりがなく、専門家…きちんとした人を置かなくてはなりませんね、お金で動くようなことがないように」
「はい、冤罪を生んでは意味がありません。弱者でも強者の味方でもない、まして正義の味方でもない、事実を導ける人を選ぶべきです」
「…はい」
フォリッチ公爵も深く頷いており、マスタール侯爵家を切りつけるような言い方だが、だからこそ彼女は何かを動かすものを持っているのだろう。
「フォリッチ公爵から伺いましたが、冤罪が紛れていたことに気付かれたのも、あなただと」
「あれは偶然です。家でよくバートロ伯爵家のことは聞いていましたから、隅々まで読んでいて、運よく気が付いただけです。裁判でもありませんか、些細なことがきっかけで、事実が出て来るようなことが」
「ありますね」
ペン一本で、証言一つで、急に事態が動くこともある。
「閣下、そろそろ」
「もっと話していたいところですが、仕方ありませんね」
「視察ですから、最後に授業を見て行かれてはどうですか?」
フォリッチ公爵は急かしたくせに、にこやかな笑顔で、問うている。
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