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意見交換会2

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「はい、いじめや嫌がらせがなくなったとは言えませんが、変化はありました」
「どのように?」
「はい、まず学園のカウンセラーを増やし、該当者はその間、お休みしてカウンセリングを受けます。あまりに言動が酷い場合は、学園外で行うこともあります」

 自分は悪くない、爵位を盾に文句を言ったり、暴れたりする者もいる。

「勉強よりも心の方が大事だという考え、カウンセラーは信用できるという実績を浸透させました。変わらなかった方もいますが、親でも友人でもないカウンセラーに話すことで、止めた方もおります」
「ほう、我が国でもカウンセラーが付くことはありますが、嫌がらせを受けた方に重点を置きます」

 被害者の心のケアを優先するという目的のためである。

「はい、学園も以前はそうでした。ですが、ある生徒が進言したのです。被害者のケアも大事だが、教えを乞う学園であれば、加害者を取り返しのつかなくなる前に、止めさせることも大事だと」

 ローグレイン大公閣下は、職場でも同じことは言えるが、確かに学園は学ぶ場所である、心や善悪を学ぶことも大事なことだということか。一介の生徒にここまで言われて、影響力のある子だったのだろうかと考えていた。

「そして、そもそもがどちらが正しいのか、分かり易く正しければいいですが、先程にもあったように、そんなつもりではなかったと本当に思っていたら、傷付けたと受け止めてから始めなくてはなりません」
「ええ、その通りです」
「被害者と見せていた者が嘘を付いていたこともあります」
「ありますね」

 本当に怪我をしており、被害を訴えたが、実は自身のミスでケガをしたことを、陥れたい相手にやられたと申告することはままある。

「ですので、彼女は学生の立場で見える限りではありますが、嫌がらせを臆することなく報告し、カウンセラーを付けさせました。周りも影響されて、自ら声を上げたり、彼女と同じようなことをする者も現れました」
「強い方ですね」
「はい、明らかに加害者だった者が、彼女を逆恨みして、食って掛かったこともありました」

 残念な話だが、起こり得ることだ。自身が悪いのに、怒りを向ける相手がいなくなって、吹き込んだ相手を逆恨みする。

 関係がないからこそ、カウンセラーを付けたのだ。

「ですが、彼女は問題になるとは思うが、殴りたいなら殴ればいい、文句を言いたいなら言えばいい。ただあなたのすべきことは、理由があるなら、あなたの意見もきちんと話すべきだと。そして、あなたの言葉で、行ったことで、人を殺せるということを理解するべきだと。そのような説教を懇々とされたそうです」

 まさに私が言いたいのは人を殺せるということだ。ナイフを振り上げていないからと、人を殺していないとは言えない…だが、殺人とは認定されない。

 心が弱いからだと愚かなことを言う者もいるが、自身が同じ立場になったら、本当にそう言えるのか。

「…ほう、それで」
「その者は少し理不尽な理由を持っていました、ですので、謝れる内に謝った方がいい。爵位なんて結婚でひっくり返れば、その時に同じ目に遭うかもしれないと脅しのようなことを言ったようですが、謝りました。許されたとまでは言えませんでしたが、何十年か経って、お互いにあんなこともあったねと言えた時が、本当の和解じゃないかと諭したそうです」
「カウンセラー顔負けじゃないか、今日は出席されてはいないのだよな?」
「はい、しておりません」
「彼女は一目置かれていたのかな?」
「はい、成績を3年間1位を落とすことなく走り切った才女です」

 アデリーナは知らない者だろうと思っていたが、その言葉に嫌な予感で汗が吹き出しそうになっていた。1位だとは聞いたが、3年間とは聞いていない。だがアデリーナも馬鹿ではない、走り切ったということは、そもそも1位だった者である。
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