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意見交換会1
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意見交換会は、ヒルズ王国からレオ・ライプ・ローグレイン大公閣下や、補佐官が参加し、母国からも裁判を担当する貴族が意見を交わすものである。
アデリーナは新聞で顔は知っていたが、実際に見たレオ・ライプ・ローグレイン大公閣下は、凛々しく、裁判官なのに体格も非常にしっかりした男性だった。すっかり気に入ってしまい、傍聴席に発言権はないが、どこか声を掛けるチャンス、近付くチャンスがないかと、うずうずしていた。
「学校や職場のいじめ問題はどう判断してらっしゃいますか」
「いじめですか」
母国から参加している1番爵位が高いのはフォリッチ公爵であり、積極的に発言する立場となる。
「はい、我が国でもどうしても、どこかで起きていると聞いています。ナイフで刺せば殺人になりますが、言葉の暴力や、後遺症の残らない程度の暴力で、もしそのことを苦にして被害者が自殺した場合は、殺人ではないと思いますか」
「非常に難しいご意見ですね、我が国では現状では殺人には当たりません」
「やはり、そうですか」
爵位の関係もあるが、自ら命を絶ってしまうほど追い詰められた者もいる。遺族を思うと、やりきれないばかりだ。
「目には見えない心の殺人という場合などは、言っていない、そんなつもりではなかったと言えば、水掛け論になってしまいます。ですが咎がないというのも納得出来ませんでしょう」
「はい、特に学校や職場など閉鎖的で、毎日のように顔を合わす場所となれば…問題が起きてしまう」
「罰を与えても、逆恨みされると、逃げるしかない者も多いと聞きます」
「ええ、まさにその通りです。この件で傍聴席の方で意見があれば、手を挙げて、差された方は名前を言った上で、意見をして貰っても構いません」
ローグレイン大公閣下の言葉にアデリーナは思わず手を挙げた。進行の者がどうぞと言うと、アデリーナは、アデリーナ・マスタールだと自己紹介をした。
「正義のマスタール侯爵家ですか」
「はい、そのように呼ばれることもあります」
やっぱりヒルズ王国でもマスタール侯爵の名前は知られているのだと、アデリーナは誇らしく思った。
「意見をどうぞ」
「はい、いじめた者に重い罰を与えればいいと思います」
「いじめた者というのは、例えば、いつもAに嫌味を言われて、この前は突き飛ばされたというB。嫌味で言ったつもりはない、突き飛ばされたというのも躓いただけだというA。この場合はいかがでしょうか」
「はい、もちろん、Aに重い罰を与えるべきだと思います」
「なぜ双方の話を聞かないのでしょうか」
「それは聞いても無駄だからです、被害を訴えている者が弱者なのですから」
「なぜ決め付ける?」
「悪は裁かねばなりませんから」
「…そうですか、ありがとうございました。お座りください」
アデリーナは自信満々の表情で、いいアピールが出来て満足しているが、皆は何て自分本位な決め付けなのだと感じている。
「学校ではどのような対応をされているか分かりますか」
「学園長は来ておりませんので、傍聴席にいる今年卒業し、身を持って感じていた娘に答えさせてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いません。こちらへどうぞ」
呼んだのはフォリッチ公爵で、呼ばれたのは傍聴席にいたパルシエ・フォリッチであった。アデリーナの断られた苦い縁談相手の妹である。
「パルシエ・フォリッチと申します。質問に答えさせていただきます。三年前頃から学園では、いじめや嫌がらせには、被害者にも加害者にもカウンセラーが付くようになりました。先程の例えであれば、AにもBにもカウンセラーが付きます」
「変化はありましたか」
カウンセラー?私が在籍していた時もいたけど、誰も通っていなかったはずだ。アデリーナは大したことないなと高を括った。
アデリーナは新聞で顔は知っていたが、実際に見たレオ・ライプ・ローグレイン大公閣下は、凛々しく、裁判官なのに体格も非常にしっかりした男性だった。すっかり気に入ってしまい、傍聴席に発言権はないが、どこか声を掛けるチャンス、近付くチャンスがないかと、うずうずしていた。
「学校や職場のいじめ問題はどう判断してらっしゃいますか」
「いじめですか」
母国から参加している1番爵位が高いのはフォリッチ公爵であり、積極的に発言する立場となる。
「はい、我が国でもどうしても、どこかで起きていると聞いています。ナイフで刺せば殺人になりますが、言葉の暴力や、後遺症の残らない程度の暴力で、もしそのことを苦にして被害者が自殺した場合は、殺人ではないと思いますか」
「非常に難しいご意見ですね、我が国では現状では殺人には当たりません」
「やはり、そうですか」
爵位の関係もあるが、自ら命を絶ってしまうほど追い詰められた者もいる。遺族を思うと、やりきれないばかりだ。
「目には見えない心の殺人という場合などは、言っていない、そんなつもりではなかったと言えば、水掛け論になってしまいます。ですが咎がないというのも納得出来ませんでしょう」
「はい、特に学校や職場など閉鎖的で、毎日のように顔を合わす場所となれば…問題が起きてしまう」
「罰を与えても、逆恨みされると、逃げるしかない者も多いと聞きます」
「ええ、まさにその通りです。この件で傍聴席の方で意見があれば、手を挙げて、差された方は名前を言った上で、意見をして貰っても構いません」
ローグレイン大公閣下の言葉にアデリーナは思わず手を挙げた。進行の者がどうぞと言うと、アデリーナは、アデリーナ・マスタールだと自己紹介をした。
「正義のマスタール侯爵家ですか」
「はい、そのように呼ばれることもあります」
やっぱりヒルズ王国でもマスタール侯爵の名前は知られているのだと、アデリーナは誇らしく思った。
「意見をどうぞ」
「はい、いじめた者に重い罰を与えればいいと思います」
「いじめた者というのは、例えば、いつもAに嫌味を言われて、この前は突き飛ばされたというB。嫌味で言ったつもりはない、突き飛ばされたというのも躓いただけだというA。この場合はいかがでしょうか」
「はい、もちろん、Aに重い罰を与えるべきだと思います」
「なぜ双方の話を聞かないのでしょうか」
「それは聞いても無駄だからです、被害を訴えている者が弱者なのですから」
「なぜ決め付ける?」
「悪は裁かねばなりませんから」
「…そうですか、ありがとうございました。お座りください」
アデリーナは自信満々の表情で、いいアピールが出来て満足しているが、皆は何て自分本位な決め付けなのだと感じている。
「学校ではどのような対応をされているか分かりますか」
「学園長は来ておりませんので、傍聴席にいる今年卒業し、身を持って感じていた娘に答えさせてもよろしいでしょうか」
「ええ、構いません。こちらへどうぞ」
呼んだのはフォリッチ公爵で、呼ばれたのは傍聴席にいたパルシエ・フォリッチであった。アデリーナの断られた苦い縁談相手の妹である。
「パルシエ・フォリッチと申します。質問に答えさせていただきます。三年前頃から学園では、いじめや嫌がらせには、被害者にも加害者にもカウンセラーが付くようになりました。先程の例えであれば、AにもBにもカウンセラーが付きます」
「変化はありましたか」
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