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処罰

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「アイレットが元バートロ伯爵領を見たいと言っているのだ。可能ならば叶えたいのだが、どうだろうか」
「お嬢様がですか?」
「ああ、今回の件で気になったようでな」
「今は慌ただしいような状態ですので、先ではなりませんか」
「分かっている、だがあの子は卒業後は修道女になるから、もう叶わないかもしれないのだ」
「修道女になられるのですか」
「ああ、アイレットの希望なのだ。だからあまり時間がない」

 アイレットは最終学年となっており、卒業まであと半年と迫っている。

「分かりました、卒業までには御案内が出来るようにいたします」
「よろしく頼む」
「いえ、光栄でございます」

 年が明ける前にソック伯爵と夫人と前伯爵は関わっていたことが分かり、処刑されることが決まり、前伯爵夫人だけは詳しくは知らなかったが、認知はしていたということで終身刑。息子はリリンナと一緒で知っていたとは言い難いと修道院へ行くことになり、爵位は剥奪されることになった。

 コイナー子爵と夫人も同じく処刑、前子爵夫妻は既に亡くなっていたが、娘が2人いたが、密売や人身売買に関わっており処刑が決まった。こちらも爵位は剥奪されることになった。

 ロズウェル子爵はワインの密輸の件を証言をしたことから、当主を嫡男に譲り、受け取ったお金の返金と罰金刑となった。

 関与していた者も処刑とはいかないものの、関与によって、終身刑や懲役刑、禁固刑、労役、罰金などとなった。

 年が明け、ようやくアイレットは元バートロ伯爵領に行くことが決まり、同行者にはリンダースが付き、案内してくれることになった。

「お嬢様は、修道女になるのですか」
「ええ、そうです」
「なぜですか、結婚がお嫌なら勤め人にもなれるはずです」

 リンダースの耳にもずっと1位の成績であることは入っており、驚いた。それなのに修道女になるなどと、勿体ないとしか思えなかった。

「前に勧めてくれた人がいたからでしょうか」
「そうなのですか…」

 リンダースにとって修道院、あまりいい記憶のない場所であった。私の殺したお嬢様は修道院を嫌がり、死を選んだからだ。まさかその生まれ変わりがアイレットだとは思っていない、リンダースは歯痒く思っていた。

「勿体ないと思います。そのような賢い頭をしてらっしゃるのに」
「教会で活かせます。そのために学んで来たのですから」
「別の場所でもいいのではありませんか」
「いえ、私には教会があっております。あなたも正義の人ですか?」
「正義?」
「ええ、悪を憎み、自身が正しいと信じられる人。でもこれからは思っていても、口に出すのは難しいですよね?」
「難しい?」
「出せますか?」

 父のことを言っているのだろうか、父が罪を犯したから、正しい人にはなれないと言っているのだろうか。私はマスタール侯爵を信じている、今も信じている。自身の父が罪を犯したことよりも、マスタール侯爵が罪を犯していた方がショックだったはずだ。だが、お嬢様にとっては罪人の息子だと思っているのだろう。

「父のことですか?」
「ええ、そうです。家族が罪を犯したのでしょう?」
「許されないことと思います。私は罪人の息子だとお思いでしょうけど、父とは別だと思っていただきたいです」
「子に罪はないとお思いということですね?」
「いえ、罪がないとは言いませんが、罪を犯したのは親です。もし、あの時、私が気付けていたらとは思いますが」
「止められましたか?」
「自分の力で無理ならば、誰かの力を借りてでも止めました」

 誰かの力…あなたにはそのような人がいたから、そう思えるのだ。何かあるのかもしれないけど、何も出来ない者は悪だと…恵まれていることを羨む、きっとそんな風にしか思えなかっただろう。
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