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調査結果4
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「ワインの密輸はソック伯爵が自身の罪を紛れ込ませた冤罪だった」
「っな、まさか!」
「ロズウェル子爵、金でも貰ったのか?」
「父上っ!」
「……もっ、申し訳ございません。あの頃は、借金があったのです…それで」
「何てことを!」
「領地まで任されるのに、借金があってはと思ったのです」
子爵家は元々男爵家だったことから領地を持っておらず、バートロ伯爵家の領地を任されることになった。
「1度ではないだろう?」
「脅されたのです。もう1度だけワインの密輸の罪状を入れるようにと、誠に申し訳ございませんでした」
「それだけか?」
「はい、ラベルを張り替えるのだとは聞きましたが、どこに売ったのか、私は詳しいことは知りません」
「そうか…」
「先程、リンダースが言ったようにソック伯爵に指摘したのですが、ワインの密輸の証拠が出たと言われて、あまりに揃い過ぎていると思っていると、借金があるんだろうと言われまして…」
「他に罪状があったからいいと思ったのか!」
「申し訳ございません、重い罪ではないと思ってしまいました」
ロズウェル子爵は座ったまま、身体が下り曲がるほど頭を下げた。
「麻薬には関わっていないな?」
「麻薬!?そのようなものには関わっていません。2度だけです。本当です」
「ソック伯爵は麻薬を?」
「ああ、コイナー子爵家が手を貸していた。おそらく、ロズウェル子爵は麻薬などと分かれば、さすがに暴露すると思ったのだろうな」
ロズウェル子爵は大それたことが出来る者ではない、ソック伯爵は大胆な作戦で、ロズウェル子爵は堅実さを買っていた。
ソック伯爵も分かっていたからこそ、麻薬には借金のなくなったロズウェル子爵は難色を示すと思ったのだろう。
「勿論です、麻薬など。言い訳でしかありませんが、ワインなら誰も傷付かないと思い、申し訳ございません」
「証言して貰えるな?」
「はい、証言いたします」
これでワインの密輸は随分と前にはなるが、間違いなく裁かれることになるだろう。麻薬関連は証拠と証言はあるが、売った先はソック伯爵とコイナー子爵を、徹底的に尋問するしかないだろう。
監査責任者は調査の指示は出すが、取りまとめ、証拠や書類を集めるのが主な仕事であるため、後は担当に任せるしかない。
「リンダースも一緒に行って、事情聴取を受けなさい」
「はい、父が申し訳ございませんでした」
ロズウェル子爵とリンダースは残っていた騎士に連れられて、王宮に向かった。4人が出て行くと、フォリッチ公爵も立ち上がった。
「さて、後はご家族での話ですかな?」
「はい、フォリッチ公爵、この度は誠にありがとうございました」
「いや、当たり前のことをしたまでだ。きっかけは君のお嬢さんじゃないか」
「はい」
「何か褒美をあげるといい、そのくらい価値があることだ」
「はい、そうさせていただきます」
フォリッチ公爵は疲れを感じさせず、朗らかに帰って行った。
今朝まで今回の件を知っているのは、邸の中ではアイレットと妻だけであった。
今日はフィーストとアデリーナは妻の実家へ、アイレットは学園に行き、妻とハービスとリリンナは別邸で茶会をするようになっていた。どこから繋がっているか、漏れるか分からない状態であったため、妻の実家と執事とメイド長にはようやく事情を話して、足止めに協力して貰っている。
リリンナの態度からすると、父親に話すだろうことは分かる。知っていたとしても、知らないと言い張るかもしれないが、結婚してまだ1年も経っておらず、ドレスを強請っていることからも、実家とは無関係というわけにはいかない。
「っな、まさか!」
「ロズウェル子爵、金でも貰ったのか?」
「父上っ!」
「……もっ、申し訳ございません。あの頃は、借金があったのです…それで」
「何てことを!」
「領地まで任されるのに、借金があってはと思ったのです」
子爵家は元々男爵家だったことから領地を持っておらず、バートロ伯爵家の領地を任されることになった。
「1度ではないだろう?」
「脅されたのです。もう1度だけワインの密輸の罪状を入れるようにと、誠に申し訳ございませんでした」
「それだけか?」
「はい、ラベルを張り替えるのだとは聞きましたが、どこに売ったのか、私は詳しいことは知りません」
「そうか…」
「先程、リンダースが言ったようにソック伯爵に指摘したのですが、ワインの密輸の証拠が出たと言われて、あまりに揃い過ぎていると思っていると、借金があるんだろうと言われまして…」
「他に罪状があったからいいと思ったのか!」
「申し訳ございません、重い罪ではないと思ってしまいました」
ロズウェル子爵は座ったまま、身体が下り曲がるほど頭を下げた。
「麻薬には関わっていないな?」
「麻薬!?そのようなものには関わっていません。2度だけです。本当です」
「ソック伯爵は麻薬を?」
「ああ、コイナー子爵家が手を貸していた。おそらく、ロズウェル子爵は麻薬などと分かれば、さすがに暴露すると思ったのだろうな」
ロズウェル子爵は大それたことが出来る者ではない、ソック伯爵は大胆な作戦で、ロズウェル子爵は堅実さを買っていた。
ソック伯爵も分かっていたからこそ、麻薬には借金のなくなったロズウェル子爵は難色を示すと思ったのだろう。
「勿論です、麻薬など。言い訳でしかありませんが、ワインなら誰も傷付かないと思い、申し訳ございません」
「証言して貰えるな?」
「はい、証言いたします」
これでワインの密輸は随分と前にはなるが、間違いなく裁かれることになるだろう。麻薬関連は証拠と証言はあるが、売った先はソック伯爵とコイナー子爵を、徹底的に尋問するしかないだろう。
監査責任者は調査の指示は出すが、取りまとめ、証拠や書類を集めるのが主な仕事であるため、後は担当に任せるしかない。
「リンダースも一緒に行って、事情聴取を受けなさい」
「はい、父が申し訳ございませんでした」
ロズウェル子爵とリンダースは残っていた騎士に連れられて、王宮に向かった。4人が出て行くと、フォリッチ公爵も立ち上がった。
「さて、後はご家族での話ですかな?」
「はい、フォリッチ公爵、この度は誠にありがとうございました」
「いや、当たり前のことをしたまでだ。きっかけは君のお嬢さんじゃないか」
「はい」
「何か褒美をあげるといい、そのくらい価値があることだ」
「はい、そうさせていただきます」
フォリッチ公爵は疲れを感じさせず、朗らかに帰って行った。
今朝まで今回の件を知っているのは、邸の中ではアイレットと妻だけであった。
今日はフィーストとアデリーナは妻の実家へ、アイレットは学園に行き、妻とハービスとリリンナは別邸で茶会をするようになっていた。どこから繋がっているか、漏れるか分からない状態であったため、妻の実家と執事とメイド長にはようやく事情を話して、足止めに協力して貰っている。
リリンナの態度からすると、父親に話すだろうことは分かる。知っていたとしても、知らないと言い張るかもしれないが、結婚してまだ1年も経っておらず、ドレスを強請っていることからも、実家とは無関係というわけにはいかない。
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