27 / 67
調査結果3
しおりを挟む
午後から呼ばれたのは、ロズウェル子爵。ソック伯爵と鉢合わせないように、迎えに行くからと邸で待機させていた。現在、元バートロ伯爵家の領地を引き継いでいる。長男のリンダースは、バートロ伯爵家の調査の際、娘から情報を聞きさすために、メイドとして潜入させていた。
護衛は2人に減ったが、フォリッチ公爵も見届けるとそのまま残っている。
ロズウェル子爵とリンダースもフォリッチ公爵に驚くが、子爵家では会うこともないため、どうしていいか分からなかったが、フォリッチ公爵は『私のことは気にしないで』と言い、離れた椅子に座っていた。
「ロズウェル子爵、リンダース、これを見たことはあるか?」
マスタール侯爵が出したのは、バートロ伯爵家の間取り図である。
「はい」
「はい、バートロ伯爵家の間取り図です。父から見せて貰ったことがあります」
「リンダース、なぜ見せられた?」
「私が潜入していましたから、間違いはないか確認をして欲しいと」
「これに間違いはないか?憶えている限りでいい」
「…あの、その時も父に話しましたが、ワイン貯蔵庫はありません。ここは物置だと伝えました。直っていなかったのでしょうか」
「だそうだ、ロズウェル子爵」
「そうでしたか?あまり憶えておりませんで」
ロズウェル子爵はヘラヘラと笑い、どうでしたかなと困った顔をしている。
「父上、あの時に言ったはずです。父上も、それは直さなければならぬなと言っていたはずです」
「そうだったか?だが物置でもワイン貯蔵庫でも、どちらでも問題はないのではありませんか?今さら、なぜこのようなことを?」
「これを書いたのはソック伯爵だ、知っていたか?」
この間取り図を書いたのはソック伯爵だった。縦長に右上がりに字を書く癖があり、アイレットもそれで心当たりがあったのだ。
「ええ、それは、存じております」
「リンダースが言ったように、バートロ伯爵家にはワイン貯蔵庫はなかった。それなのにソック伯爵はワイン貯蔵庫と書いている。なぜだか分かるか?」
「確か密輸したワインがあったことで、勘違いなさったのではないですか?」
「ワインの密輸?そんな罪状があったのですか」
声を上げたのは間違いが正されていないことに、怪訝な表情を浮かべていたリンダースだった。
「知らなかったか?」
「詳しい罪状までは教えて貰えませんでしたので、知りませんでした。ですが、ワインの密輸など、バートロ伯爵が行うとは思えませんが」
「リンダースもそう思うか?」
「はい、バートロ伯爵家ではワインはこのような物は見たくもないという扱いでした。ワインも絶対に目に入らない、食料貯蔵庫の端の方にそっと置いてあって、客人が帰ると使用人が貰って帰るか、廃棄されていました」
リンダースは客人を招く際に、バートロ伯爵にワインはいかがしますかと問う執事のビクビクした声も覚えている。
「自分が飲むのではなく、売るために置いてあったのでしょう。だから物置でも問題ないと思ったのではありませんか」
「金のために密輸した高級ワインをか?」
「管理が杜撰だったのでしょう」
「リンダースはどう思う?」
「私にはいくらお金になると言っても、バートロ伯爵がワインを密輸するとは思えません。ワインではない物ならば分かりますが」
「ソック伯爵はどうしてもワインでなければならなかった」
「どういうことですか」
「今のリンダースの話はロズウェル子爵は初めて聞いたのだろう?」
リンダースが父を見ると、青白い顔になっており、何も答えない。
「はい、そこまでは話していなかったと思います」
「バートロ伯爵家の使用人だった者も同じ意見だった。シガーやウィスキーならともかくと」
「はい、そう思います」
「ロズウェル子爵、ソック伯爵は拘束され、王宮で取り調べを受けているはずだ」
ロズウェル子爵は息を吸い、そのまま固まってしまった。
護衛は2人に減ったが、フォリッチ公爵も見届けるとそのまま残っている。
ロズウェル子爵とリンダースもフォリッチ公爵に驚くが、子爵家では会うこともないため、どうしていいか分からなかったが、フォリッチ公爵は『私のことは気にしないで』と言い、離れた椅子に座っていた。
「ロズウェル子爵、リンダース、これを見たことはあるか?」
マスタール侯爵が出したのは、バートロ伯爵家の間取り図である。
「はい」
「はい、バートロ伯爵家の間取り図です。父から見せて貰ったことがあります」
「リンダース、なぜ見せられた?」
「私が潜入していましたから、間違いはないか確認をして欲しいと」
「これに間違いはないか?憶えている限りでいい」
「…あの、その時も父に話しましたが、ワイン貯蔵庫はありません。ここは物置だと伝えました。直っていなかったのでしょうか」
「だそうだ、ロズウェル子爵」
「そうでしたか?あまり憶えておりませんで」
ロズウェル子爵はヘラヘラと笑い、どうでしたかなと困った顔をしている。
「父上、あの時に言ったはずです。父上も、それは直さなければならぬなと言っていたはずです」
「そうだったか?だが物置でもワイン貯蔵庫でも、どちらでも問題はないのではありませんか?今さら、なぜこのようなことを?」
「これを書いたのはソック伯爵だ、知っていたか?」
この間取り図を書いたのはソック伯爵だった。縦長に右上がりに字を書く癖があり、アイレットもそれで心当たりがあったのだ。
「ええ、それは、存じております」
「リンダースが言ったように、バートロ伯爵家にはワイン貯蔵庫はなかった。それなのにソック伯爵はワイン貯蔵庫と書いている。なぜだか分かるか?」
「確か密輸したワインがあったことで、勘違いなさったのではないですか?」
「ワインの密輸?そんな罪状があったのですか」
声を上げたのは間違いが正されていないことに、怪訝な表情を浮かべていたリンダースだった。
「知らなかったか?」
「詳しい罪状までは教えて貰えませんでしたので、知りませんでした。ですが、ワインの密輸など、バートロ伯爵が行うとは思えませんが」
「リンダースもそう思うか?」
「はい、バートロ伯爵家ではワインはこのような物は見たくもないという扱いでした。ワインも絶対に目に入らない、食料貯蔵庫の端の方にそっと置いてあって、客人が帰ると使用人が貰って帰るか、廃棄されていました」
リンダースは客人を招く際に、バートロ伯爵にワインはいかがしますかと問う執事のビクビクした声も覚えている。
「自分が飲むのではなく、売るために置いてあったのでしょう。だから物置でも問題ないと思ったのではありませんか」
「金のために密輸した高級ワインをか?」
「管理が杜撰だったのでしょう」
「リンダースはどう思う?」
「私にはいくらお金になると言っても、バートロ伯爵がワインを密輸するとは思えません。ワインではない物ならば分かりますが」
「ソック伯爵はどうしてもワインでなければならなかった」
「どういうことですか」
「今のリンダースの話はロズウェル子爵は初めて聞いたのだろう?」
リンダースが父を見ると、青白い顔になっており、何も答えない。
「はい、そこまでは話していなかったと思います」
「バートロ伯爵家の使用人だった者も同じ意見だった。シガーやウィスキーならともかくと」
「はい、そう思います」
「ロズウェル子爵、ソック伯爵は拘束され、王宮で取り調べを受けているはずだ」
ロズウェル子爵は息を吸い、そのまま固まってしまった。
447
お気に入りに追加
2,315
あなたにおすすめの小説
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?
わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。
分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。
真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。
【完結】私を裏切った最愛の婚約者の幸せを願って身を引く事にしました。
Rohdea
恋愛
和平の為に、長年争いを繰り返していた国の王子と愛のない政略結婚する事になった王女シャロン。
休戦中とはいえ、かつて敵国同士だった王子と王女。
てっきり酷い扱いを受けるとばかり思っていたのに婚約者となった王子、エミリオは予想とは違いシャロンを温かく迎えてくれた。
互いを大切に想いどんどん仲を深めていく二人。
仲睦まじい二人の様子に誰もがこのまま、平和が訪れると信じていた。
しかし、そんなシャロンに待っていたのは祖国の裏切りと、愛する婚約者、エミリオの裏切りだった───
※初投稿作『私を裏切った前世の婚約者と再会しました。』
の、主人公達の前世の物語となります。
こちらの話の中で語られていた二人の前世を掘り下げた話となります。
❋注意❋ 二人の迎える結末に変更はありません。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる